年代別代表編「融合」
南川· · ·海外組。ポジションは両サイドをどこでもこなすユーティリティプレーヤー。口調が荒い。
7月、リーグ戦中断前の試合に勝利した俺と光宗は気持ち良く代表に合流することが出来た。
そしてフランスで開催される世界大会の直前合宿は開催地近郊で行われ、いよいよ海外組が合流することになった。
「やぁ、丈留君、選手権予選の決勝ぶりかな。」
2年ぶりだろうか、相変わらずキザな印象を受ける、俺は少し苦手意識を持っていた。
声を掛けてきたのは、樫原だ。
高校時代、王者・鳳条の十番を背負った男、現在はイングランドの名門からフランス一部リーグのチームにレンタルで所属している。
「久しぶりだな。よろしく。」
「そうだね。あの頃から比べてかなり逞しくなったみたいだ、光宗が迷惑をかけていないかい?」
「ああ、かけられっぱなしだよ。」
俺達が話しているのを発見して話題の男は快速を飛ばしてくる。
「お前ら何喋ってんねん!カタギ全然連絡寄越さんやんけ!」
「相変わらず喧しいな。」
関西弁のストライカーがしゃしゃり出てくるのは高校時代からだったそうだ。
「それより、開幕までに合わせていかないとね。実際、僕は先崎さんのところか光宗の隣だと思う。君のプレーは把握してるつもりだけど一緒にプレーするの初めてだからね。」
俺自身もパーソナリティは苦手としても、樫原とプレーするのはとても楽しみだった。
高校時代は苦杯を舐めたが、樫原の美しいプレーには憧れすら覚えたほどだ。
グランドに選手各々が姿を現すと、秋山監督が集合をかけた。
「みんな聞いてくれ、本大会まであと1週間。今回海外組の樫原
、そして南川を招集した、1週間彼らとの融合をテーマにしたい。」
樫原が紹介を済ましたあと、海外組もうひとりの男、南川さんが口を開く。
「南川だ、よろしく。俺はここに仲良しごっこをしに来たわけじゃねぇ、国内の緩いスピードに慣れてるお前らには厳しい要求をするぜ。」
なんだよ。と声を荒らげてる選手がいる中で俺が介入する。
「ああ、もちろん。俺はキャプテンの懸上丈留です、丈留って呼んでください。世界を経験してる南川さんや樫原の存在は俺達のプラスになる。だけど俺達も日本でただ時間を浪費してる訳では無いってことサッカーで証明しますよ。」
南川は顔を息が吹きかかりそうな距離まで近づけて俺の目を見る。
「おもしれぇ面構えだ。正直勇士以外のキャプテンと聞いて心配したけど楽しめそうだ。」
直前合宿は順調に進み、俺達は非公式の練習試合でも快勝を収める。
システムも本番仕様の4-3-3に変更し俺はアンカーのポジションを務めることになった。
そしていよいよ決戦前日の夜になった。
俺はスマホを点けると、勇士さんからのメッセージがあった。
「from勇士さん:大会参加出来なくて申し訳ない、それからリーグ戦も途中離脱する事になるのもすまない。丈瑠、必要以上に背負い込むなよ、仲間を信頼して頼れ、まぁこんなこと言わなくてもお前なら大丈夫だよな。頑張ってくれ!」
「ありがとうございます、頑張ります」と短めの返信をして俺は日本にいる美由に連絡した。
「もしもし、どしたの?」
「いや、何となく声聴きたくなって。」
「何よそれ、明日頑張りなよ!決勝トーナメントから現地行くから!明日光希ちゃんと一緒に見るからね!」
「ああ、親父と母さんとも一緒に応援してくれ。」
5分にも満たない通話時間であったが、たしかに俺はリラックス出来た。
世が明け、決戦当日。
開幕戦の相手は南米の雄、ウルグアイだ。
世界を相手にした戦いがいよいよ幕を開ける。
今回短めです。




