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年代別代表編「ユーティリティ」

 合宿の初日、日が沈み、施設の照明が灯る。

 3日間という短い日程、最終日には強豪大学との対戦が予定されている。

 そんな中初日の最後のメニューとして紅白戦が実施される。

 形式は30×三本。

 紅白戦の一本目、俺は 右センターハーフのポジションについた。


「よろしくな、懸上。

 俺は滝口悟だ。」

 センターハーフを組む滝口悟。

 所属チームは一部の京ファルファン。

「おう、丈留って呼んでくれ。」

「一応捌くのが得意だけどまぁそこは合わせていこうぜ。」

「そうだな、お互い良いアピールをしよう!」


 新顔も多く選ばれた今回の合宿、連携不足は当然ながら各選手の積極性の欠けたプレーにスタッフが発破をかける。

「お前たち本気で選ばれたいのか!」

 しかし、俺は頭の中で整理していた。

 各選手の特徴を短い時間で理解する事が自分を表現する上で大事だと考えた。


 ヘッドコーチの足立さんと監督が言葉を交える。

「懸上、いいじゃないですか。

 よく頭が冴えてる。」

「やはり気付いてたか。

 あいつは積極性がないんじゃなくて一歩引いた位置から状況を噛み砕いてる。」

「監督のサッカーには必要なんじゃないですか?」

「ああ、だが時間は短い。

 飲み込むだけじゃなくて、そこから形にしなければ意味が無い。

 この限られた状況下でここから何が出来るか見てみよう。」


「滝口、下げろ。」

 囲まれた滝口の後方でボールを呼び込み逆サイドまで展開、これが先制点に繋がる。

 一本目俺たちのチームはその後も得点を重ね圧勝した。


「懸上! 2本目シャドーにに入れ!」

 コーチの指示により、普段のクラブより一列前の配置についた。

「懸上、二列目でも使えそうですね、前線からの守備が良い。」

「ああ、一つのポジションだけでなく様々な役割を果たすことが出来る選手こそ、国際大会において重宝できる。」

「決まり、ですか?」

「まぁ実戦を見てからだな、国際経験が無い分、まだリスキーだ。」

 笑みを浮かべながら監督は腕組みした。


 結局、合宿中では様々なポジションをこなした。

 クラブの先輩達のプレーを見様見真似でこなす。

 慌てず落ち着いて。

 3日間という短い期間でそれぞれが懸命にアピールした。

 最終日の大学戦ではゴールを挙げ、結果を残す事にも成功した。

 それから各チームに戻りキャンプに参加、まさにオフ返上のシーズンオフになった。

 そして年代別世界大会開幕二週間前、代表選考前最後のテストマッチが行われることになり、俺は招集メンバーに名前を連ねた。


 アフリカの強豪、コートジボワールをヴィルモッツのホームスタジアムに迎えた最後のアピールが始まる。


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