プロ編「目先を変えて」
開幕から一部の洗礼に会った俺とチーム。
開幕5連敗を喫し、俺自身もスタメンから外されてしまう。
そんな渦中、レギュラーサイドバックが離脱し、佐武監督は俺に白羽の矢を立てた。
「丈留、サイドバックやってみないか?」
「俺が…ですか?」
「ボランチにこだわりがあるなら断ってくれても構わないぞ。」
正直悩んだ。
俺はサッカー人生で中盤以外のポジションの経験は無い。
「少しだけ時間をください、明日までに回答します。」
「わかった。
ただこれだけはわかってくれ。
ボランチとしてもお前はウチの大事な選手だ。」
監督はじっと俺の目を見て、訴える様に言った。
俺はその晩、ある先輩に相談した。
チームメイトの韮崎さん、"ニラ"さんだ。
入団六年目の中堅選手で勇士さんとセンターバックを組む。
「ニラさん、コンバートって難しかったですか?」
俺の突然の質問にニラさんは少し驚いた顔を見せて、少ししてから考え込んだ。
「そうだなぁ、俺なんかFWからセンターバックだからな。
まぁあのままFWやってたらクビになってたかもしれないし。」
ニラさんはもともとFWだったが、センターバックにコンバートされ、レギュラーを掴んだらしい。
「正直、サイドバックの経験が無いし、悩んでいるんですよね。」
こくりと頷きニラさんが口を開く。
「俺たちはこれでメシ食ってるからな、人事異動って考えれば納得も行くんじゃないか?
最も、必要とされてるならオレは何処のポジションでもやるよ。」
ニラさんの言葉は妙な意地を張っていた俺に新鮮な考えをくれた、たしかに俺たちプロサッカー選手は給料を得ている。
日が明け、俺は佐武監督に告げる。
「監督、サイドバックやらせてください!」
「おお! 明後日の試合、左で行くから準備しとけ!」
さらに練習前、ニラさんと勇士さんの元に報告し、ディフェンスの決まり事などを叩き込んでもらった。
「最悪、オレ達が尻拭いてやるから思いっきりやれ!」
週末になり、一部リーグ第5節がホームヴィルモッツアレーナで開かれる。
俺は左サイドバックで先発。
俺にとって、初めての中盤のポジション以外での試合。
対戦相手は兼六ガジェット。
残留争いの常連で「残留ラインコントロール」という不名誉な蔑称があるが今シーズンは開幕から3勝2分と絶好調である。
チームには代表選手はいないが俺と対峙する右サイドのハーフのナイジェリア人アタッカー、ババコグは強烈な個性をもった選手でここまでリーグ2位の3ゴールを挙げている。
試合開始直後からガジェットは攻め込んでくる。
いきなり右サイドのババコグに展開し俺と一対一を迎える。
レフティーのババコグはスピードを上げようとした瞬間俺は身体を入れババコグのプッシングを誘発する。
「Damn it!」
「簡単にはやらせないぜ!」
ヴィルモッツにとって負けられない戦いが幕を開けた。
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