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プロ編「トンネルの先」

 11月、シーズンも最終盤に差し掛かる頃。

 俺は懸命なリハビリもあって、ようやくランニングを開始できるようになっていた。

 チームは自動昇格をギリギリで争う2位に位置し、今節の試合に勝てば昇格が決まる。

 ホームゲーム、ヴィルモッツアレーナには満員のサポーターが詰めかけ、スタンドはチームカラーの赤と緑に染められた。

 選手冥利に尽きる

 相手チームは横須賀ビーズ。

 同じく昇格を争うライバルで関東ダービー。

 アウェースタンドにも多くのサポーターの姿が見えた。


 俺は佐武監督の粋な計らいでベンチ入りが叶った、勿論試合には出場しない前提だ。

「丈瑠、しっかり見とけよ。」

「はい!」

 試合は前半から打ち合う展開。

 修さんが2ゴールを決めると、ビーズも負けずと前半の内に追いつく展開。

 後半に入ってもハイペースで試合が進む。

 ビーズが逆転ゴールを奪うが、途中から入った光宗のゴールで同点。

 そして後半アディショナルタイム。

 コーナーキックから勇士さんがヘディングで叩き込む。

 試合終了のホイッスルが響くと、スタジアムは轟音に包まれた。


「やったぞー!! 俺たち1部だ!!」

 喜びを爆発させる勇士さんの姿、佐武監督から引き継がれたチームスピリットを見事に体現させた。

俺は身震いが止まらなかった。

 試合に出れなかった悔しさ、昇格を決めた嬉しさ、チームの底力。

「丈瑠、準備はできてるか? もう来シーズンに向けて戦いは始まってるぞ。」

「ええ、もちろん。

 やりますよ、俺。」

 決意に満ちた俺の表情を見て監督は頷いた。



 3ヶ月後。

 怪我の癒えた俺にとっては待ち焦がれた時。

 短いオフを終え、キャンプイン。

 1部を迎えるに当たって戦力補強を敢行。

 俺のポジションには外国人選手が加入、大きなライバルだ。

「ブラジル人のジョナサンだ。

 みんなよろしく頼むな。」

 俺にとっては久しぶりの全体練習。

 だが身体は軽く宙を舞うような心地良さが体を巡る。

 忘れていた感覚、まさにトンネルを抜け出したようだ。

「身体キレてるじゃねぇか。」

「勇士さん、有難うございます!」


 キャンプ地は光希の高校の近くという事もあり、俺はチームに久しぶりに会う機会を許可された。

「久しぶり! お兄ちゃん! もう怪我大丈夫?」

 久しぶりに会う光希は小麦色に焼けた肌で、いつものようににこやかだ。

 すっかりたくましくなったようにも見える。

「ああ、ありがとう。

 学校楽しいか?」

「毎日大変だけど、友だちも優しいから大丈夫!」

「そうか、お互いがんばろうな!」

「うん! パパとママのお墓参りの日はそっち行くから。」

 大きく手を振りながらすぐに学校から課されたレポートを書くといい、光希は帰っていった


 また、権田川さんもキャンプ視察に訪れた。

「お久しぶりです!」

「おお! 丈留! 去年は大変だったな。」

「いえ、貴重な経験になりました。」

「だが、今年は怪我は言い訳にできない、期待してるからな!」

 充実のキャンプを終えた有明ヴィルモッツ。

 俺にとってはプロキャリア二年目が始まる。



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