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海外編「悪癖」

イタリアに来てから2週間が経った。

新シーズンに向け、俺たちネッズラーロFCはアルプスの美しい眺めが印象的なスイスでキャンプを行っていた。


「タケル!違うぞ!」

俺の新たなボスはイタリア人のリッソーニ。39歳の青年監督で、2シーズン前プリマヴェーラ(下部組織)の監督から内部昇格した経歴を持つ。

現役時代はマッテオーリの教え子でネッズラーロのレジェンドだ。

引き締まった体で、青と黒のオフィシャルウェアを身に纏う姿から現役選手と間違えられる事もしばしばだ。

「タケル、お前はもう少しバランス感覚を磨け。ギアを入れるタイミングを見計らうんだ。」


イタリアサッカーはとにかく規律第一でチーム戦術が緻密な事で知られる。

俺はそんな現状に苦労しながらも有意義な時間を過ごしていたが、一方で反りの合わないチームメイトもいた。

「おい!危ねぇだろ!!」

チームメイト目掛けてアフター気味のタックルを繰り返すギークの存在だ。

チリ代表のセントラルハーフで激しいプレーが特徴のギークだが、明らかなラフプレーが目立ち、俺は堪らず指摘する。

「やっぱり日本人は甘いなぁ。だから、ブラジルにも負けたんじゃねぇの?」

「なんだと!」

俺はカッとしてギークの胸ぐらを掴んだが、キャプテンのロマネスクに止められた。

「ギーク!」

「ハイハイ。ったくしゃねぇーな。」

不貞腐れた表情でギークはピッチを去り、ロマネスクは俺を気遣った。

「タケル、後で時間いいか?」


スイス、ルガーノ。スイス南部に位置し、イタリア語圏である事からファーストキャンプに選ばれたのだが、美しい湖畔は先程のストレスを洗い流してくれる。

チーム宿舎近くのカフェで俺はキャプテンであるロマネスクと昨年インターナショナル杯で激闘を繰り広げたコンティと共に練習後の余暇をすごしていた。


「まさか、お前とチームメイトになるとはな。」

「俺もだ。ジョゼ。」

ジョゼはインターナショナル杯の後、ネッズラーロに移籍したため、2年目。相変わらずの伊達男だ。

「実際。心強いよ。君たち中盤の安定感は僕達の優勝のキーポイントになる。」

ロマネスクはアルゼンチン代表の左サイドバック。クレバーなプレイヤーで精神的支柱。今年34際を迎えるベテランだ。キャプテンは7季目になる。

「ありがとう。」

謙遜しがちにいうとジョゼは話題と表情を変えた。

「しっかしさっきのは危なかったな。キャプテン、あれはありえないよな? 」

「ああ。あいつも新たなポジション争いで焦ってるんだろう。けどな、プレーメーカーのお前。ボックストゥボックスのタケル。それから、コンダクターのギーク。3人が揃えば俺はこのチームはもっと上に行けると思ってる。」

俺はロマネスクの真っ直ぐな眼差しを見た。

「キャプテン...」

「ったく、一役買ってやりますか。タケル。貸しは高くつくぜ?」


ファーストキャンプを終え、俺達はプレシーズントーナメントを戦っていた。

対戦相手は古巣のモナコSFC。

いきなりの再会に俺はやりづらさを感じていたが、67分までプレー。

しかし、相変わらずギークとの連携はイマイチで試合中も口論になりそうな場面があった。

開幕を3週間後に控え、不安要素を取り払う事ができるのか。

J1最終節。。

劇的な結末でしたね。

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