表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/115

世界大会編「零れ落ちた栄冠」

インターナショナル杯セミファイナル、日本対ブラジル。

圧倒的な力の差を感じながらも追いすがる俺たち日本だったが、残り5分の重要な局面でビックチャンスを迎えるが、ブラジルの守護神ジュリオを中心とした守りに阻まれ、決定機を逸する。

そしてその流れからのカウンターでフェメーノを倒してしまった俺に下された判定は厳しすぎるものだった。


足を攣った痛みは何故か感じなかった。

生きた心地がしない。目の前の赤は視界を埋めつくし、現実を理解する事に時間がかかる。

「丈留!早く出ろ!あとは任せろ、お前の頑張りは無駄にしない!」

勇士さんの声で俺はハッとした。

足を引きずりながら懸命にピッチを後にしようとすると、フェメーノは俺の耳元で囁いた。

「まだだ。お前は俺たちの領域に入ってきていない。だが、素質はある。」

ピッチを退くと秋山コーチがタオルを掛けてロッカールームまで寄り添ってくれた。

「お疲れ様。とにかく休め。」

俺は秋山コーチが去った瞬間に崩れ落ちた。

悔やんでも悔やみきれないワンプレー。

ディレイが正しい判断だったのか、それとも寄せのスピード、パワーが足りなかったのか。

俺はただ、ただ泣いた。

日本の夢を絶ってしまった、竜崎さんの花道を飾れなかった。

現実から目を背けたくてロッカールームから逃げ出して宿舎に直行した。

フェメーノの一言が消えなかった。

ーお前は俺たちの領域に入ってきていないー


試合は俺の退場後失点を重ね、1-4の敗戦。

日本の快進撃はここで終わった。

試合後の日本の様子は知らない、後に聞いた話によれば人目をはばからず、多くの選手が涙した中で、ただ1人竜崎さんだけは毅然とした態度で最後まで表情を崩さなかったらしい。

しかし、世界中のメディアは日本の戦いを賞賛した。

そんな中、俺の行動は問題視され代表からの追放が取り沙汰されているらしい。

俺は宿舎のソファから動く事が出来なかった。

ネットを見る事も、なり続けるスマートフォンの通知を見る事も、出来なかった。

同部屋の樫原も配慮からなのか、部屋を訪れる事はなかった。


どれほどの時間が経ったか、俺は重い体を引きずり、シャワーを浴びた。

アドレナリンが解けた身体のそこら中が痛む。

汚れを落とし、自分をリセットする。

まずは、チームメイト、そして関係各所への謝罪だ。


それから俺は少しサッカーから離れるべきなのかもしれない。

昨晩、人生で初めてサッカーをやめたいと思ってしまった。

自分の限界を感じてしまった、あのレベルに追いつけるイメージが湧かない。

いくら足掻いても井の中の蛙。

ヨーロッパコンペディションでもグループ敗退。

インターナショナル杯に出ていない国でもフェメーノクラスのプレイヤーは存在する。

その領域に俺は入っていない。

だからサッカーを楽しむことが出来るまでサッカーを離れるべきだと考えた。


「やぁ。散歩でも行かないかい?」

シャワーを浴びて、扉を開けると樫原がいた。

森保JAPANも好スタートを切って、次のウルグアイ戦も楽しみですね!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ