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世界大会編「さらなる追い打ち」

インターナショナルカップセミファイナル、ミラノスタジアムにてサッカー王国ブラジルと対戦する俺たち日本。

前半を0-1で折り返し、いよいよあとが無くなった後半戦。

国内組の一声でチームの空気は一変、失う物のない俺たちはピッチに向かった。


自陣真ん中で円陣を組む。

一人一人、肩を掴む手に力が入る。

今日が記念すべき代表150キャップ目のキャプテン竜崎さんは静かに語りかける。

「俺はこの大会で代表を引退するよ。」

「キャプテン!?」

皆が大きな声を張り上げた。突然の引退宣言に皆は驚きを隠せない。

「元々決めていた事だ。だから最後笑って終わりたい。大会が終わったら抗議は受け付ける。」

竜崎さんの目には並々ならない決意が現れていた。

「みんな、倒すぞ!ブラジル!」

後半が始まり、俺たちに迷いは無かった。

前線に無かった連動性でブラジルに激しい圧力をかける。

プレスの強度が上がった事でブラジルも悠々自適とは行かず、フェメーノへシンプルにボールを当てる場面も増えて来た。

ここまでチームに貢献できていた俺だが、やはり原点は走る事。

ピッチ全域を駆け回り、ボールアプローチを絶やさない。

そしてブラジルのパスワークが乱れた所を賀茂さんがスティール。

攻守が入れ代わる瞬間でブラジルディフェンスラインに僅かな歪みが生じた。

賀茂さんがルックアップと同時に左サイドの米田さんが呼び込み、ダイアゴナルラン。

米田さんが絶妙なタッチで裏へ抜け出したと思われたが、ブラジルにも反応していたプレイヤーが1人居た。


立ちはだかったのは守護神のジュリオ。

ペナルティエリアを大きく飛び出して米田さんより先に触り、そのままクエカまでロングフィードを通して見せた。

そして、こちらも攻守が入れ代わる瞬間。

前に重心がかかった俺達は慌てて帰陣するがクエカのスピードに乗ったドリブルを唐澤さんも止められない。

俺は必死のダッシュで唐澤さんのカバーリングに入った竜崎さんの穴を埋める。

絶大な存在感を放つフェメーノが1歩下がり、ペナルティエリア手前でボールを要求する。

勇士さんがマークについた瞬間、俺は違和感に気付いた。

「勇士さん!駄目です!」

中盤センターのロベルトとドュラスがフェメーノの開けたスペースに飛び込んでくる。

賀茂さんの帰陣も間に合わず、俺は近いドュラスにしかしマークにつけなかった。

フリーになったロベルトがクエカのセンタリングを頭で押し込み追加点。


これこそが最も警戒しないといけなかったブラジルのサプライズ要素。

「エレメント・スルプレーザ」

ブラジル国内でこう表現される奇襲攻撃だ。最前線の3人がディフェンスの気を引き付けた所でするりとインサイドハーフが抜け出すパターン。

事前のスカウティングでも研究していたが、前がかりになった隙を突かれてしまった。

スタンドではイタリアのコンティとフランスのジェルマンが苦笑いで戦況を見つめている。

「いやー、あれは反則だろ。」

「日本のセンターバックの判断は間違っていなかった、あそこで怪物をフリーにしてもやられてたさ。」

「ああ。ジュリオがボールを奪った時点で勝負ありだった。」

絶望的な試合展開に思えるが、2人の意見は意外にも日本の逆襲を予想していた。

「まぁこのままでは試合は終わらないよ。」

「もちろんさ。」

前半の失点時のように俺たちは落胆する事は無かった。

ブラジルのセレブレーションの傍らで、もう一度心をひとつにするために円になった。

「いやー!あれは無理だ!笑っちゃうぜ!超楽しい!」

右松さんは負けているにも関わらず、相変わらずの少年の眼差しだ。

普段は表情が固い竜崎さんも笑顔だ。

このチームの一員でいる事が堪らなく嬉しくて俺は思わず口走る。

「皆さん!勝ちましょう!」

「うるせぇ!」

兄貴分の勇士に頭を叩かれた後、先輩達は俺と樫原の肩を叩いた。

「こいつらに上を見せてやろう!」

時計の針は残り25分を指していた。

Jリーグも今シーズンはいよいよ佳境に入ってきますね!

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