世界大会編「セミファイナル2日前」
インターナショナル杯もついにベスト4
各大陸の厳しい予選をくぐり抜けてきた猛者たちの戦いも残す所4戦に絞られた。
ベスト4に名を連ねたのはまず、グループリーグでも対戦したドイツ。盤石の試合運びで堂々の四強入り。
その対戦相手となるのはオランダ。近年低迷が続いていたトータルフットボールの国も完全復活、ウインガーのペレスは大会6ゴールで得点ランクトップをひた走る。
次に俺たち日本。
大会最大の衝撃と評され、1回戦では開催国イタリアを倒し、ジャイアントキリングを成功させた。
そして、俺たちの対戦相手のなるチームは。
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「いやー。勝てるのかこれ...」
いつも強気な右松さんが弱気な声で呟く。
「右松らしくねぇな!」
「お前!だから歳下だろ!」
ベスト8の試合を休養した舞川さんは右松さんを茶化して、強めに頭を叩かれる。
右松さんが弱気になるのは仕方ない。
何せ次なる対戦相手はサッカー王国ブラジル。
試合を2日後に控えた宿舎には張り詰めた空気が流れていた。
ブラジルは今大会圧倒的な力で勝ち進んできた。
監督のマルセリーノは良くも悪くも「個」に頼りがちだったチームに戦術的バリエーションを持たせた。
スリートップのデニウソン、アントン、ジュニーニョは「レインボートリオ」と呼ばれ、彩色豊かな攻撃を繰り出してくる。
優勝から3大会連続で遠ざかっているだけに、今大会のブラジルは本気度が違う、良い意味で遊びのないサッカーを展開してきた。
皆は息を呑みながらスカウティングの映像をチェックした。
「スカウティングは以上!明日はオフだ。各自自由に過ごしてくれ!」
秋山コーチの号令の下、ミーティングは終了し、選手達はそれぞれ自室へ行ったり、レクリエーションルームに行ったり、メディカルケアを行ったりと、自らがリラックスできる環境へと身を置く。
俺が向かったのはレクリエーションルーム、今回の日本代表では卓球がちょっとしたブームでミニトーナメントを実施していた。
コツン、コツンと卓球のボールが弾かれる度に歓声が上がる。
俺はトーナメントで早々に負けてしまったので、ほとんどを観戦に費やしていた。
青い卓上を小さなボールが往復していく。
決勝戦は唐澤さんとヤンコ。
唐澤さんによって両サイドにうち分けられたボールを大きなストライドを活かしたレシーブでヤンコが食らいつく。
賑やかな場を楽しんでいると、スマートフォンの通知音が鳴る。
親友である裕樹からのメッセージだった。
「✉高校の先生っても大変だな...ンなことより丈留、頑張ってくれよ!お前は俺ら山の麓高校の誇りだから!日本帰ってきたら盛大にもてなしてやるよ!」
ただ、がむしゃらにボールを追いかけてきたあの頃から何も変わらない。走る事、諦めない事。学生時代で培った俺のサッカーの原点だ。
相手が誰であろうとこれは変わらない。俺は俺のサッカーをするんだ。