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プロ編「混乱」

新登場人物

柊木 修・・・ヴィルモッツのエース。数々のチームを渡り歩いてきたベテランストライカー。

 ここ、有明ヴィルモッツの本拠地ヴィルモッツアリーナは観客収容数4万人のサッカー専用スタジアム。

 駅からのアクセスも良く、築5年目の比較的新しいスタジアムで世代別代表戦のホストスタジアムにもなることが多い。

 そんなスタジアムで行われているのは国内プロリーグ2部の開幕戦、有明ヴィルモッツ対京都サイモンズだ。


 試合はヴィルモッツが積極的に攻め上がる展開。

「デビュー戦から主役は貰うで!」

 関西出身の快速FW光宗が高卒スタメンを勝ち取った。

 ロングボールに抜け出し、ダイレクトで狙うが枠を外れる。

「ああっ!惜しい!」

 俺は思わず声が漏れる。

「惜しくねぇよ、ぎらつき過ぎてまるで周りが見えてねぇ。

 今のなんか折り返したら1点だ。」

呆れ口調で語るのはヴィルモッツのエース柊木(ひいらぎ) (しゅう)さん。

 キャンプで故障して離脱中、俺と共にスタンド観戦をしている。

「いいか? 丈留。

 俺たちは結果を出す事が仕事だ。

 だけどそれは個人としてじゃなくてチームとしてだ。

 お前ら若手は練習から焦りすぎだ、お前の本来の良さはなんだ? そこから見直せ。」

 そう言いながら悔しそうに膝を摩り、眉間には皺を寄せて戦況を見つめる。

 多くのチームを渡り歩いてきたベテランの言葉は重みがある。


 試合は前半ヴィルモッツがサイモンズのパスワークを潰して押し込む展開だったが得点には及ばず0-0。

 後半試合が動く。

 サイモンズのフリーキックをデイフェスがクリアミス、これがゴールに吸い込まれ、自殺点(オウンゴール)

「切り替えろ! まだ時間はある!」

キャプテンの勇士さんの指示も虚しくヴィルモッツは失点を重ね、開幕戦をまさかの0-3というスコアで落とすことになってしまう。



 開幕して一ヶ月ヴィルモッツはなんと2分3敗。

 佐武監督の解任がまことしやかに囁かれチーム身辺はざわつく。

 チームの雰囲気も最悪。

 そんな中、事件が起こってしまう。

「おい! 光宗いい加減にしろ! 練習からそれだから試合でも周り見れてねぇんだろ!」

 練習中強引にシュートを狙う光宗に復帰した修さんが指摘する。

「うっさいわ! おっさん! こないだまで怪我しててんからごたごたぬかすなや!」

 血の気が上った光宗思わず大ベテランに対して暴言を吐いてしまい、応戦する形で二人は掴み合いになってしまう。

「おい! お前修さんになんて口聞いてんだ! 今日は練習から出ろ!」

 見かねた勇士さんが光宗を練習からつまみ出した。

 監督はと言うと、首脳陣に呼び出され不在のだった事もり、指揮するものがいなかった。

 コーチ陣が一旦集合をかけ、その日は練習が切り上げられることになった。


「すいません修さん勇士さん! ちょっと見てきます。

 みなさんもすいません!」

「おう、頼んだ。

 悪いな。」

 冷静になった修さんは「後でメシ奢るから」と告げて、シャワー室へと向かった。

「すまない、キャプテンの俺が情けないばかりに。

 それから丈留、佐武さんが帰ってきたら話あるそうだ。」

 そして勇士さんは俺の方を叩き、居残り練習へと向かった。

 俺は急いで部屋に帰った光宗を諭しに寮へ戻る。

「おい、光宗、今日のはないぜ。」

 ドアが乱暴に叩かれる。

「やかましいわ! ずっと温い環境でやって来たお前になにわかんねや!」

 グッと唇を噛み締めて俺は言葉を紡ぐ。

 光宗の言う通りだ、俺は弱くて情けない。

 温室育ちだ。

 競争というものに身を置いたことが無い。

「焦る気持ちはわかるよ。

 俺もいろんな人の期待背負ってやってるけど何にも出来てねぇ、まともに練習でもやれてねぇ。」

 そう告げ、黙っている内にドア越しの光宗は口を開く。

「俺はFWやぞ、ストライカーやねん。

 点にこだわって何が悪いねん。

 まだ1点も取れてない、やったら余計に練習から打たんと決まらんわ」

「俺は選手権お前らに負けた。

 あの時のお前のプレーはどうだった?」

「あ?」

思い出されるのは延長戦で俺達が失点したゴールで、光宗が貴瀬のシュート性のボールを肩でフリックしたシーンだ。

「佐武監督はお前のプレーをちゃんと把握してる、修さんや勇士さんもだ。

 もっと周りを信頼しろよ、って試合に絡めてない俺が言っても説得力ねぇな、ハハ。」

「へっ、ほんまやで。

 まぁありがとうな。

 明日みんなには謝るわ。」


 それから佐武監督がクラブハウスに戻った連絡を受け、俺は監督の元へ向かった。

「丈瑠、次試合先発で行くぞ。

 心と体の準備しとけ。」

「え?でもまだベンチにすら…」

「ここ最近の練習での判断だ。

 まぁ気負わず思いっきりやれよ!」

「わ、わかりました!」


 俺がその場を退いた後、コーチ陣が佐武監督に語りかける。

「いいんですか? 次の試合負けたら解任なんじゃ…」

「そうだな、俺も監督一年目だし、だからこそ開き直って冒険したくなった。

 あいつに賭けてみるよ。」


 迎えた決戦当日。

 アウェー戦バリアー二岡山。

 俺は初出場初スタメンを飾る事になった。

 佐武監督の進退を懸けた運命の一戦が開かれる。

今回はポルノグラフィティの「THE DAY」を聴きながら制作しました。

主題歌になってるアニメも大好きです!

プロ編次回もよろしくお願いします!

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