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第1話 大きい娘の場合 その1

やっと見つけた。






案の定中庭で寝こけて居た。うわぁ...鼻提灯って、こんな時だけまた器用な...。


「こらぁ、起きなさい!」

「...んぅ? 」


…結構大声出したつもりだったんですけど。

寝ぼけ眼のままその娘はのろのろと起き上がった。

本当マイ ペースだなあ。今回は一発で起きてくれただけ良いか。

よく見ると片手に持っているのは本...なんと洋書。


「どうしたの、珍しいわね、加古が本を読んでいるなんて。」


しかも洋書。





「ふわぁ...へぇ?あ...あの...、ていうかそれはちょっと失礼なのかな...と思うんだけど、千恵ちゃん?」


寝ぼけている割にはよく突っ込めました。


「...ちょっと見ても良い?」

「あ...。」


カバーを取る。




「Alice in wonder land」




…不思議な国のアリス?




「...この前の期末試験の課題図書じゃない。何で今頃?」

「…ふぐ…。」


何故目を背ける。



「...あなた、今回は赤点大丈夫だったって言ったわよね?」

「ふ...うぅ...。」



...恐らく。


寝ぼけて居た所に不測の事態が起きて、混乱して言葉が出てこないのだろう。


赤点補習、でも って課題はどっかの章選んで丸々邦訳とかそんな所か...前回もそうだったし。


二週間前、私と加古は前期期末試験緊急対策本部を設置した。


もう二度と中間テの悲劇は繰り返すまい。


加古から全教科赤点回避の朗報を聞いた時には我が事のように我を忘れて喜んだけれど…。




加古はまだ固まっている。この様子だと、英語以外もか。



「...まぁ、それよりお腹空かない? 」



...今ここで色々言っても混乱させるだけだし...ほら、気持ちの切り替えって結構大事じゃない。

ランチョンマットを広げ、包んで来たお弁当箱を開ける。




「...おにぎり!」




目を輝かせながらお弁当箱の中を物色し始める加古。


「はっ...ご、ごめんなさい、つい。」

「...おかかは一番左端ね。」




美味しそうに貪る加古。私は右端にある具無しのやつを取る。



「加古は本当食べるの好きよね。」



…聞いてないし。私は少し偏食気味、というかそもそも食べる事自体そんなに好きではない。




…しかし、よく食べるなあ。


その栄養は何処に行ってるのかしら。」

「ふぐ...ごほっ、ごほごほ。...そ、それは...嫌み? 」




あーあ、むせた。ランチョンマットの先でほっぺの米粒を拭ってやる。




「 その...ほら、この前背伸びたし...。」

「私も伸びたから、これで7cm差。」

「お...おお、おっぱい...は私のが...!」

「残念でした、私も先月10cm程大きくなったのよね。」

「え...。」




…しばらく考える加古。早く気づけー...というか、あまり露骨に凝視するのはどうなの。




「 ...嘘だよ、流石にそれは無いよ。」




あ、気付いたか。



こんな感じのやり取りって、もう何回も繰り返している気がするんだけど、

加古の反応は何というか... 毎回新鮮。



まさか忘れてる?いやいや流石にそれはないでしょ...そう言えばもう10年の付き合いになるのか。



「お昼休みって何時までだっけ?」

「もうとっくに五限が始まってるわよ。」

「え...千恵ちゃんは大丈夫なの?」

「まぁ…学級委員の仕事の一つ?」

「あ...そうだよね。」


自分の分を食べ終わった私は、芝の上に四肢を投げ出した。



…試験も終わって、どうせ自習か雑談でしょ。



しばらくすると加古の寝息も聞こえて来た。食べながらうたた寝してるな、あの娘。




× × × × ×




ふと目が覚めた。




...不覚。でもそんなに長くは経って居ないはず。芝から起き上がり横をみる。




加古が居ない。お弁当箱 にはまだおにぎりが半分以上残っている。




...一瞬転がって行くおにぎりを追いかける加古を想像する。

なんてベタな、でも加古ならあり得る...いやいや普通にトイレでしょ。

しかし、そうだとすると今度はちゃんと間に合ったかどうかが心配になって来る。




...途中で漏らして、座り込んで泣いている加古を想像してみる。

...普通ならあり得ないが...実際加古 は、いつも私の想像のはるか斜め上を行く訳で...。



「…。」



ふと少し手前の芝を見ると、地面を蹴ったような足跡が点々と続いている。加古のだ。しかもかなり急 いで居たと見える。やっぱり漏らしてるんじゃ...。





強まる不安に居ても立っても居られなくなった私は、いつの間にか足跡を追って駆け出して居た。



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