疑心暗鬼
初めてのホラーです
人間って恐いな…って恐いなーっと感じてくれたなら光栄です。
「なぁ……アイツ驚かせようぜ…」
「いや…辞めよう…」
今二人の男が一つの部屋でムカつく野郎をビビらせようと暗策していた……
「だって、長池のやつまた女振ったんだぜ?」
「…あんな可愛い子を!?もったいねぇーー」
「だろ?大丈夫…びびった所写メにして学校にバラ撒こうぜ?」
まぁそれぐらいならいいか……
「分った…やろう、じゃあどういうのやるの?」
「俺にいい考えがある………お前、長池の帰り道知ってる?」
何考えてんだ?コイツ?
「ああ、知ってるが?」
「あの帰り道に川があるだろ?
あのドブ臭い……」
「……ああ!ハイハイ…日本で6番目に臭い奴だろ?しかも、ちっちゃい……」
「そうそう、あの臭い川。……でも最近変な噂あんの知ってる?」
聞いた事がないな……噂なんて……
「あそこ、去年、水死体が出ただろ?女の?」
「………………みたいだな…確か………8月だっけな?」
「そうそう……臭かっただろ?」
思い出すだけで吐き気がする…
橋の下にある柱のフジツボに引っかかり…発見が遅れた………
どれくらいそこにいた……いや、あったのかは分からない、ただ3日以上はあったみたいだ
「あれ…、腐ってたんだもんな…あそこで」
夏だったし、川だったし、小さくて船も通れない場所だった。
だから…発見されるに至った直接の理由は“腐乱臭”だった…
あまりに臭くて息もしたくないぐらいだった
その臭いは最低でも3日は漂ってた……
「それで、噂ってなんだよ?」
「その女……長池の元カノらしい…」
………………………………………………………………知っている、俺が好きだった人だ。
長池と付き合っているのも知っていたけど、それでも好きだった
アレはそんな彼女の臭いだった…………
だから、覚えた吐き気も、臭覚の異常反応何かじゃなくて……
「―――…オイ聞いてるか?」
「あ、ああ悪い…」
「だからな、用はさ、俺らが、その女の振りすんだよ。」
「は?」
「あの女はなんで死んだかはしらねぇが……長池にとっちゃあ影にはなってるだろ?」
「そりゃそうだな……」
「そこに漬け込め!」
いくらなんでも気が進まねぇ……
「大丈夫何も出はしねぇよ…」
「いや出るとか…出ないじゃなくて…」
「安心しな、アソコは下に足場があるんだ、そこに隠れて一気にガッって……」
「なんだ橋の下行った事あるんだ?」
「ああ、行った行った。」
スゲー根性だなコイツ……
「ま…変装グッズはハンズで良いだろ……じゃあ、決行日は明日ね」
「お前!?!…明日って発見された日じゃねぇかよ!!」
「スリルあんだろ…そっちの方が…?」
マジかよ…本当に出そうだ……
――――――――――――――翌日pm9:30――
「よくこんな時間にここ来るよなー」
「今の俺達が言えたセリフかよ?」
ここは橋の下、暗い暗い水の上。
「マジで不気味だな…」
蒸し暑さが嫌になる。
…………ドブというより、腐りかけの水の臭いが鼻を突く
そんな夜だ。
「オイ、来るぜ…ビデオカメラセットしとけよ……?写メだけじゃあ、足りないから…」
「分かったよ…」
ビデオをスタート
足音が近付いてくる…
長池だとさっき確認した。
ちょうど今、人はいない…
―――――カッ、カッ、カッ、………
来た来た来たー……!
――カッ、カ、カ、カ、ガ、ガッ、ガッ、―――――……
よし…真上に来た。
―――ガッ………………
え?止まった?
「なんで死んじまったんだよ…あんなに好きだったのによ……」
えっ……?
「後3日でお前の命日か………いや、発見された日か……早いもんだな……」
…長池なのか…?
「その時はお前が好きだった、サボテンを持ってくるからな……」
長池もマジだったのかよ…………
「じゃあな……」
長池が立ち去る
「オイ…良いのかよ?行っちまうぜ?」
「馬鹿!?あんな奴脅かせるかよ!!」
「何言ってんだよ、去年はちゃんとおどかしただろ?」
「…………は?」
去年って………
まさか……
「な、に言ってんだよ?去年はこんな所来てねぇよ!!!」
「お前こそ何言ってんだよ?
お前から言い出したんだろ?
話したいって……?」
「えっ?」
嫌な風が流れる……
俺はここを知っている??
「そうだよ、ここで待ち伏せておどかしただろ?あの子をさ?」
あっ……………
「ああ、そうか…お前は恐くなって逃げ出したな………俺一人でおどかしたんだ」
ヌルリと首が舐められる感覚……
身体が凍る
「お前……まさか」
「あれ、脅かしただけだったんだけどな……スッゲー悲鳴でさ……パニックって下に落ちてさ、………………………死んじゃったんだよ。」
あの時感じた、吐き気は、罪の意識から……なのか??
「まぁ、顔はキレイなままだからさ…ずーーっとキスしたんだ、だって前からしたかったし……」
殺人者っていうのはいつでも画面の外にいるもをだと信じてた……
それが…今…目の前に……いる。
「怖がんなよ……大丈夫、殺したんじゃない…俺の物にしたかったんだ、だから隠そうとして…アソコにひっかけたんだけど…………………腐っちゃってさ……バレちゃった」
「お前、嘘、だよな………俺の事ビビらせようとしてんだろ?」
「本当だよ……ただ俺は彼女を好きだっただけさ…」
その瞬間、身体の全力を振り絞ってこの糞野郎をぶん殴った。
そいつの顔に当たって
………歪…んだ?
――――え??
視界が歪む、これは水??
暗い…川か…!?
落ちたのか?いや、落とされたのか!!
アイツ…殺してやる!!!
「――――――――――――――ブハッ―!!」
水の上、あいつは……いねぇ……
クソックソオーーォ
アイツが犯人だったのかよ……
アイツがッ!!!!
「アイツが言った事全部あのカメラが撮ったよな……」
――――走って家に駆け込む…びしょ濡れのままビデオを再生する
いつもの部屋で…
「なんだ……コレ………」
そこには女装した俺が映ってた
ただ一人、喋ってる…………水面の自分に向かって…
右手には鉄パイプ?
「なんだ、コレ、オイ、なんなんだよーー!」
「よぅ、お帰り…」
「お、お前…」
「ようやく気付いた?俺はお前が作り出したんだよ、つまりお前なんだよ………」
「そ、んな、じゃあ…あの子を殺したのは…」
「そうお前だ……
だけどな……おまえはいい人なんだよ、あの子が欲しくて欲しくて求めて、求めて……俺まで作り出した………だけど、ドタンバで逃げ出したんだ…恐くなってさ…
だけど、俺はそんなの許さなかった…俺を消す事にもなりかねぇからよ……だから、のっとったんだよお前を…そして俺はあの子を求めた……」
アイツが黙った……
「ただな……ただ一つ俺も計算出来ない事が起きた……惚れちまったんだよ…俺もあの子に!!」
「えっ…?」
「だから、俺は考えた、ずっとコイツと一緒にいたい、ってな、だから……作り出したんだ………あの子を…お前の頭の中に…」
「ま…さか…」
いるのか俺の中に……
「そうさ、居るんだよ…お前の中によ!!だけど、ここからがいけねぇ……お前はあの子が死んだ時に長池と別れたから死んだ、って思いこんじまった………そうなるとせっかく作り上げたのにこの子はずーーっと長池の事を思いつづけてんだよ…わかるか!?この気持がよ!!?だから俺は長池を殺すつもりでいたんだ…だから…鉄パイプを持ってたんだよ…だけどな…ハハハありがたい事にお前は思い出した、長池の言葉を聞いた時に…この子にたいする独占欲をよ!!!
まぁ……顔とかは…お前が水死体の事ばっか考えるから、腐ってこんなになっちまったがな……」
―――ゆっくりと…アイツの顔が変わる…女から…物へ…物から…化物へ。――――
「あっ、いや…、だ、こんな、」
「オイオイ喜べよ、顔はこんなんだが、お前が求めてた彼女だぜ…ほら、ちゃんと俺とお前を愛してくれてる……」
彼女が出てきた………
化物だ………彼女なのか……?
「ぁ、あーぃイじてぇー…る」
喋るたびに顔の穴から水がこぼれる。
「ワァァァァァァァァァァァァァァーーー」
―ガンッ――――……………
鏡をおもっいっきり殴りつけた…。
「ハーハーハー…」
もう、あいつらはいない……消してやった……
頭が冷めて来て……ようやく…分かった…
あの時、橋の上で吐き気を感じた理由……
彼女は長池を愛してたんだ…
それで、悔しさや、切なさが混じって吐き気がしたんだ……
そうか………そういう事かよ
手から血が流れる…
ダメだよ…彼女は俺の中になんか住んじゃいけない……
場違いだよ………
自潮気味に笑えた
そして、気づいた…彼女の発見された日は今日じゃない…3日後だ…だけど俺は今日が発見された日だと思ってた
これは勘違いなんかじゃなくて
俺が最後に彼女に会った日なんだ…と
そして俺は真っ暗な鏡に呟く。
「俺、自首するな」
鏡が答える血を動かして……
文字を作る
「それでもわたしはあなたをあいしてる」
鏡の中に腐った女が笑っていた
――――時は流れて――……
一年後、日本で6番目に臭くて、小さな川で水死体があがった
ソイツは身体のアチコチに
《アナタが欲しい》
とエグッて彫ってあり、満足そうな顔をして死んでいた。
すみません、綺麗なホラーにしたかったんですが結構汚い物になってしまいました。