福島 決意の七夕賞 2011
まず東日本大地震に被災された方、心からお見舞い申し上げます。
この小説はあくまでも今回の震災からの復興を願ったものです。それ以外の何物でもありません。熱いドラマ仕立てのストーリーですので、暗い気持ちをふき飛ばしていきたいと思います。
よろしくお願いします。
第一話
2011年 7月10日 福島競馬場
福島競馬 夏の風物詩 「七夕賞」
名物ファンファーレが今年も会津の地に鳴り響く。
なんと今年は8年ぶりに伝説の「アカペラファンファーレ」が復活。
地元の男声合唱団、競馬ファン、そして特別のことでもなければ、まず来ることのない人たちのコーラスによる、福島競馬重賞レース用のファンファーレの合唱。
出来は・・・・・タイミングが各パートでバラバラ。それでもみな心を一つにして歌う。
「♪パーパッパッパッパッパッパァ~~ ・・・・・・」
急仕上げの修理で、まだ五階の天井はないまま。とてもじゃないがまともな状態とはいえないスタンド。その入り口に毎年飾られる七夕飾り。笹飾りの短冊に書かれていたのは、震災後の復興を願う人々の切実な願いであった・・・・
今年のレースの開催には当然反対意見が多数あった。
「県内だけでも多くの被災者がいるというのに、被災地で競馬をやるとは何事だ!」
「4月からずっとレース休止して、避難所等に使ってたじゃないか。何をいまさら・・・」
「スタンド修理は被災者のためであって、競馬を開催するためじゃないだろ!」
「娯楽はあってもいいが、ギャンブルである必要があるのか?」
「こんな金があったらおれたち被災者によこせ!」
また馬ファンや関係者からも
「わざわざ福島で開催する必要があるのか?」
「ほかのレースでチャリティレースやればいい」
「この後ずっと開催していけるのか? 七夕賞やるためだけに福島競馬再開させたのか?」
「美浦のトレセン、復旧して間もないだろ。関東馬調教できているのか?
外国馬や関西勢がでても大丈夫なのか? 安全確保できるのか?」
との声もちらほら・・・・・
それでも、「東日本大地震からの復興を願い、ギャンブルという要素だけでなく、スポーツ、純粋な娯楽としての競馬で盛り上がり、被災した人々を勇気付けたい! 」と思う人々の尽力、奮闘があってこその「七夕賞 2011」
娯楽要素を強くしようと、今年はシリーズ制。ハンデキャップ競争である、本来の七夕賞とも言うべき「七夕ハンデ」、定量制で国内外の芝中距離路線のオールスター競争と化している「七夕杯」など、全六競争で成り立つ。より実力のある馬、人気のある馬を招待し、よりレベルの高い、エキサイティングな競馬を地元の人に見せたいがために・・・
メインレースの七夕杯は、枠入りに多少時間がかかっている。今年度初めての福島開催で、開幕戦にいきなりの大舞台。係員も手間取っているように見える。
基本的には県外の競馬ファンは、県外の場外発売所等で観戦。いまかいまかと出走を見守っているのは、地元の人々や関係者。その人たちに混じって、このドリームレース開催の三人の立役者の姿も見える・・・・・
「まだかなあ・・・ アヴァネ、ゲート嫌っているけど・・・・」
「あの馬がゲート嫌うのはいつものこと」
「最後まで無事に走りきってくれれば、それでいいさ。」
何気ないこの会話、実は開催にこぎつけるまでの苦労がにじみでたもの。
出走を彼らと同じように待ちわびる周囲の観客には、知る由もない・・・・・・・・
------------第一話 ファンファーレ 完------
簡単な用語、文章解説
※1 重賞レース G1,G2、G3といった格付けがされている特別競争のこと
※2 美浦のトレセン ・・・茨城県の美浦村にあるJRA(日本中央競馬会)の施設
美浦トレーニングセンターのこと。主にサラブレッドの調教を行う
施設。美浦所属の馬を俗に関東馬、栗東(滋賀県)トレセン所属の
馬を関西馬という。
※3 ハンデキャップ競争である本来の七夕賞
本来の「七夕賞」は毎年7月に福島競馬場で開催される重賞レース。
芝2000mで争われる。もちろんシリーズの名前ではなく一レースの名前。
「七夕杯」や「七夕ハンデ」は架空のもの
実力のある馬からその馬が負担する重量をきめて、実力差を調整しようとする、
ハンデキャップ競争と言うのが特徴の一つ
ちなみに定量制とは年齢、性別のみで負担する重量を決めると言うもの。
この物語は東日本大地震からの復興を題材にしたフィクションです。実在の人物、地名、建物名、レース名等、現実世界のものとは関係ありません。
-----感想----------------
正直、細かい設定にこだわりすぎた感がありますね。
とくにファンではない人にも配慮したつもりですが・・・
競馬ファンであるが故の懲りすぎ・・・
用語解説抜きで書けるようなものにすべきなのですが・・・