*#1*聖地奪うもの現る!*
私の居場所。
私の空間。
私の世界。
そう。ここは保健室である。
ここは、私の聖地だ。
オタクが秋葉原を家にしているのと一緒だ。
ということはイコール、私も保健室を家にしているということだ。
意味が分からない?
それは、この物語を見てからいいなさい!
*#1*聖地奪いし者現る!*
「ふぁぁ……良く寝たぁ!」
いつも通り、いつもと変わらぬ風景の中、私は目覚めた。
ここは私の住んで……通っている学校である。
その名も「薫高等学校」。
ちなみに、薫というのは校長の名前らしい。
「あれ?いつもより外が騒がしいな……。」
いつもは、野球部の野球バカが数名朝練に来ているだけなのだが。
少しカーテンを開けると、日の光が部屋を照らした。
だが、そんなのもお構いなしだ。
ただカーテンを開けただけなのに、「死」という恐怖と闘っているからだ。
こちらに向かってきている野球のボール。
このままだと保健室の窓をぶち破り、私は死ぬ。きっと。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
倒れるようにしゃがみこみ、両手で耳を押さえる。
どうしよう!宝物のメガネがぁぁぁぁぁぁぁぁ!
って心の中で叫ぶものの、一向に何も起こらない。
これは、きっと助かった……!
そう思い、外を見てみる。
「なぁんだ。皆いつも通り……うぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!!」
この世の女とは思えない低音で叫んだ。
なんと、保健室の窓の下の壁に横たわる一人の男がいた。
ダボッと着こなす野球用の服装に、思わず触りたくなる
ちょっと茶色がかった髪。
まるで生気がない。
「あのーすみませーん……生きてますかぁ?」
そう声をかけても返事は無くどう考えても死んでいる。
それでも私は一応もう少し大きな声で呼びかけてみる。
「すみませーーーん!!!生きてますかーーーー!!!」
「そんな大きく叫ばなくても聞えてるっつーの……。」
私の声を少し遮るように低い声で放つ。
「俺は生きてまーす……。」
そう言ってさっき飛んできたであろうボールを右手に、
手を挙げた。
「でも、そのボール当たっちゃったんじゃ……。」
弱気に言うが、返事は返ってこない。
また死んだのだろうか?
「骨……やられたかもな。」
そう言って右手で持っていたボールを置き、左の二の腕付近をさする。
そう言った彼の言葉は重苦しく、息苦しそうな声だった。
私は居てもたってもいられなくなった。
「ちょっと待って!!私医療用具もってそっち行くから!」
そう叫んで、私は医療用具を手に、足早に保健室を後にする。
男の所へはそう時間はかからない。
(でも……急がなきゃ!!!)
私は少し速度を上げる。
やっと着いたころには野球部専属の医療部隊がせっせと治療をしていた。
1人の部隊が携帯を片手にしている様子から、
じきに救急車もくるであろう。
(なぁんだ。帰ろっと。)
そう言いクルッと背を向けた時。
「おい!そこの女ぁ!」
さっきとは違うトーンで男が叫ぶ。
私は何事かと後ろを振り向く。
と、同時に彼がニコッとはにかむ。
「ありがとな」
その一言で、私は何かを動かされた気がした。