第81話 「旧整備トンネル」
薄暗いトンネルの中を、三体のロボットが進んでいた。
ガシャ……。
ガシャ……。
ルーカスたちは、一定の距離を保ちながら後を追う。
「……さっきの搬送ゲート、完全に閉じたな」
ジェイクが後ろを振り返る。
巨大なゲートは、すでに閉鎖されていた。
ミリアが端末を確認する。
「開閉装置は反応しない。向こう側から閉じられたみたい」
「ってことは、俺たちを閉じ込めた?」
「それは分からない」
ミリアは三体のロボットを見る。
「でも、あの三体はこの道を知ってる」
先頭の一体が突然停止した。
二体目、三体目も続けて止まる。
「止まったぞ」
ジェイクが武器を構える。
ルーカスも拳を握った。
「警戒しろ」
三体のロボットが、同時に壁へ向き直る。
壁には古い操作盤があった。
一体が腕を伸ばし、操作盤へ接続する。
カチッ。
古い照明が一つ点灯した。
さらに奥。
カチ、カチ、カチ。
トンネルの照明が順番に点いていく。
「……まだ電気が通ってる」
ミリアが呟く。
「このトンネル、かなり古そうなのに」
ルーカスは周囲を見回した。
壁には錆びた配管。
床には太いレール。
そのレールは、三体のロボットが進む方向へ続いている。
「ここもロボットを運ぶための道か」
「たぶんね」
ミリアが端末を操作する。
「待って」
「どうした?」
「この先に、別の区画がある」
ミリアの画面に古い施設図が表示された。
「旧整備区画……」
ジェイクが眉を寄せる。
「整備?」
「そう。搬送路の途中にあるみたい」
三体のロボットが再び動き出した。
ガシャ……。
「追おう」
ルーカスたちは走り出した。
しばらく進むと、前方に大きな扉が見えてきた。
扉には、かすれた文字が残っている。
『旧機体整備区画』
三体のロボットが扉の前で停止した。
「また認証か?」
ジェイクが構える。
しかし、今回は違った。
三体のうち一体が背中からケーブルを伸ばした。
扉の横にある装置へ接続する。
ウィーン……。
扉がゆっくり開いた。
その瞬間。
ガシャン!
中から何かが飛び出した。
「来る!」
ルーカスが前へ出る。
大型の作業ロボットが腕を振り下ろした。
ドンッ!
ルーカスは拳で受け止めた。
床が大きく揺れる。
「重い!」
ジェイクが横から飛び込む。
「ルーカス、離れろ!」
ルーカスが身を引く。
ジェイクの武器が作業ロボットの脚部を叩いた。
ガンッ!
装甲に傷が入る。
だが、ロボットは倒れない。
反対側の腕がジェイクへ迫る。
「くっ!」
ジェイクが武器を盾のように構えた。
ガキィン!
衝撃でジェイクの身体が後ろへ吹き飛ぶ。
「ジェイク!」
「大丈夫だ!」
ミリアが端末を操作する。
「そのロボット、右側のセンサーが壊れてる!」
「それがどうした?」
「右側からなら、こっちを認識しにくい!」
ルーカスが笑う。
「なら、そこを狙う!」
ルーカスが走る。
作業ロボットが腕を振る。
ルーカスは身体を低くしてかわし、そのまま懐へ潜り込んだ。
拳を握る。
「ブレイカー!」
ドンッ!
拳が装甲を打ち抜いた。
ロボットの右側面が大きくへこむ。
しかし、まだ動いている。
「まだか!」
ジェイクが踏み込む。
「なら、俺も!」
ジェイクの武器が、ルーカスの攻撃で露出した関節部分へ叩き込まれた。
ガンッ!
一撃。
ガンッ!
二撃。
三撃目で関節が砕ける。
作業ロボットの右腕が垂れ下がった。
「ミリア!」
「今!」
ミリアが電磁装置を作動させる。
ジジジッ!
ロボットの動きが一瞬止まる。
ルーカスが踏み込んだ。
「これで終わりだ!」
ブレイカーが胸部へ直撃する。
ドンッ!
作業ロボットが後ろへ倒れた。
ガシャァン!
しばらく動かない。
ジェイクが息を吐く。
「……こいつ、前より硬かったな」
「整備用なのに戦えるようになってた」
ミリアが倒れたロボットを調べる。
「待って」
「何かあるのか?」
「このロボット、普通の整備機じゃない」
ミリアが内部データを表示する。
そこには一つの記録があった。
『旧整備区画・機体搬送補助』
さらに、その下に別の項目が表示されている。
『搬送先:第2施設』
ルーカスとジェイクが顔を見合わせる。
「……やっぱりここも繋がってる」
ミリアは頷いた。
「しかも、この区画から第2施設へ直接機体を送っていたみたい」
先ほどの三体のロボットが動き出した。
そのうち一体が、整備区画の奥にある巨大な扉へ向かう。
ミリアが端末を確認する。
「奥に搬送設備がある」
「また搬送路か」
「ううん」
ミリアが画面を見つめる。
「この先……搬送先が第2施設じゃない」
ルーカスが扉を見る。
「じゃあ、どこだ?」
ミリアの画面に、古い施設名称が浮かび上がった。
『機体再配置区画』
その瞬間。
扉の向こうから、低い機械音が響いた。
ゴウン……。
ゴウン……。
三体のロボットが、ゆっくりと扉の前へ並ぶ。
「……何か起動したぞ」
ジェイクが武器を構える。
ルーカスも拳を構えた。
ミリアは端末を握り直した。
「気をつけて。ここには、まだ動いている機械がある」
巨大な扉が、ゆっくりと開き始めた。
第81話 完




