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数学と国語、どっちが世界を救うのか

作者: 緋西 皐

 私が高校一年生の時の担任は数学の教師でした。彼は高学歴らしく、少し鼻のつく性格をしていました。自分は賢いぞと、だから自分の授業をちゃんと受けろと。されどわからないと言えば、馬鹿にはわからないと鼻で笑う。なかなかにひどい先生でした。

 その頃、ちょうどクラスで浮いている子がいて、その陰鬱な雰囲気を煙たがった男子がその子をいじめることがありました。担任は面倒くさい、面倒くさいと男子とその子の両方をしゃがれながら怒鳴り、男子が笑い、その子が苦笑いすると、キレました。特にその子にキレました。さすがの畜生具合に男子も同情したのでしょう、その子へのいじめはなくなりました。その代わり、クラスの皆で担任と敵対しました。いくつ眼鏡を割ったかはもう古いことなので覚えていません。

 このようなことがあって、私は文系を選びました。担任は「理系のほうがいろいろ役に立つ。文系はそれっぽいこと言って金を巻き上げるだけ。それに理系から文系には行けるが、逆は難しい」といいましたが、正直、その意見はおおよそ正しいように思えました。しかし私は文系を選びました。これ以上、このような人と会いたくないからです。

 さて私は文系となって大して価値の無い古典を欠伸に翻訳したわけですが、数学は結局あるわけでくだらない授業に悩まされるに変わりはありませんでした。

 

 大学生になると大方の授業はさらに薄弱に思えて、適当にサボって過ごしました。頭より身体とお金を動かすことばかりしていました。夜も眠れないほど大変でしたが、充実していました。特に貧相な白肌の男子に比べればそれはとてもとても。

 そこにやや差別的な感情があったのは否定しません。でもそれがどうしたというのか。差別であろうがなかろうが私は私であるのならば問題ではないのです。さらに言えば人生の絶頂、つまり私には彼女がいたのです。友達に自慢してぶん殴られるくらいの美女です。調子に乗らずにいられましょうか。優越感に浸れずにいられましょうか。授業はサボっていましたが、心理学的に無理だと豪語できる自信がありました。

 彼女はとても可愛らしく、優しかった。私が教授に怒られ凹めば、頭を撫でて花が咲くような言葉をかけてくれました。あまりの嬉しさにわざと教授を怒鳴らせるほどです。彼女の幻想的な雰囲気、恋の言葉。私は虜になりました。それでいて無敵の大将ように思えました。

 だから差別したくらいでなんだなんだと、どっかの団体も怖くありません――と、調子に乗っていた罰が回ってきたのでしょうか。回る回るチャイムの音、チラシを持って映ったのは私の彼女でした。そうです、私の彼女はカルトになっていました。

 青春の汚点は彼女の胸の黒子ほど綺麗ではありませんでした。私は吐血せんばかりに酒に溺れました。それを好機と見たのか、ウォーターサーバーの主がやってきましたが、そこに私はいません。普通にぶん殴って捕まりました。後で聞きましたが、その男は私の彼女の彼氏でした。浮気されてました。

 殺してやろうかという気持ちは警官のおじさんの覇気に留まりましたが、私は人間不信になりました。もう恋なんてしません。


 最近、私は上司に悩まされています。彼らは数字数字と訴えます。数字しか見ない人間は心が見えていないなと私はよく蔑みます。されど私は結婚に悩まされています。年齢という数字、年収という数字、もありますが、やはりトラウマ、優しい女性ほど恐ろしく、かといって理知的な女性ほど合わない。

 日本の少子高齢化の原因はこれなのだろうかと、私は出生率減少のグラフを見て現実逃避を繰り返すばかりです。

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