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聖女は神託によって選ばれる

作者: 鷹羽飛鳥

 二重投稿になっていたので、片方を削除しました。

 削除した側にもいいねとかしてくださった方には、もうしわけございません。

 「エラ・セージョ! 私はお前との婚約を破棄し、このエセル・ニーセルと婚約を結び直す!」


 エラの(一応)婚約者であるローカス・オワースト王子は、王家主催の晩餐会でこともあろうに婚約破棄劇場をぶち上げた。

 エラは平民の出だが、神託によって選ばれた聖女である。

 この国に害なす存在を拒む結界を維持しているのはエラだった。

 聖女人気を取り込みたい王家と、世俗への影響力を増したい神殿との融和策として、ローカス王子とエラの婚約は結ばれた。

 だがローカスは、王子である自分が平民上がりのエラと結婚することに不満だった。たとえエラが聖女であっても。

 だから、エラとの初顔合わせの際に「平民など見たくない」と言い放ち、以後、公式行事以外でエラに会うことはなかった。

 一方のエラも、結界張りや魔獣討伐に駆り出されることが多く、王都にいることの方が少ないほどだったので、会おうと思っても会えなかっただろうが。




 エラは、神の力を現出するための媒介だった。

 エラの体を介して神の力が放出され結界となる。

 エラから放出される結界は、必ずしもエラを中心とする円ではなく、エラが訪れたことのある街に点々と結界が張られる。さすが神の力である。

 なので、エラは聖女になって以来、10名ほどの騎士と共に、国の主立った街を巡って旅をしてきた。

 魔獣討伐は、街の結界の外に魔獣が現れた時に行われる。

 街そのものは安全でも、街の外にも人はいる。

 街と街との移動ができなければ、街は滅ぶことになるから、魔獣を倒す必要があるのだ。

 エラは、数名の騎士と共に街を出て魔獣と対峙する。

 エラが近付くだけで、エラ自身を覆う結界により、魔獣は光の粒となって消滅するのだ。

 結界は、人に害なす存在を許さない。

 二代前の聖女は子爵令嬢だったので、騎士や傍仕えなどで常に60人ほどの大所帯で旅をしたため、経費もそれなりに掛かったそうだ。

 なので、聖女護衛の騎士を派遣する王城では、平民のエラを歓迎していた。


 聖女の護衛任務に就く騎士は、毎回変わるが、概ね貴族出身2人、平民出身3人、見習い5人という構成になる。

 護衛とは名ばかりで、実際の任務は、馬車に繋がれた馬の世話や聖女一行の食事の世話、領主との連絡などであり、戦闘能力が求められることはないからだ。

 なにせ、盗賊も獣も落石も、“聖女に害なす存在”は、存在を許されない。

 盗賊が放った矢も、落石も、聖女に届くことなく光の粒となって消えるのだ。

 護衛の騎士達が最も活躍するのは、ぬかるんだ道で馬車を押す時だ。

 貴族出身の騎士であれば、領主とのやりとりの際にも活躍の場があるが。

 たとえ力仕事要員であったとしても、聖女護衛の任務は騎士にとっては名誉なことなので、志願者が多い。

 エラは、魔獣退治の旅を終え、王都に帰還した。

 各地の領主に恩を売り、今代の聖女の名と顔を売ってきた後で王子との婚姻についての発表がある予定だったのだが…。




 旅を終えて戻った聖女エラ(とその随行者)を労う報恩会の冒頭で、ローカスは婚約破棄を盛大にぶちかました。

 「そもそも平民ごときが聖女など、あるわけがないだろう!

 侯爵家令嬢であるエセルこそ聖女にふさわしい!」

 過去にも平民の聖女は何人もいたのだが、ローカスは都合の悪いことは聞こえない耳をしているようだ。

 そもそも聖女とは、神託によって神殿が見付けてくるものである。

 結界を張るというこの国にとって生命線とも言える部分を担う存在だけに、能力のない者を家柄で選ぶようなことはできない。なにせ自分の命も懸かっている。

 そんな子供でも知っているようなことを、ローカスは無視していた。


 「お前は聖女であるエセルに嫌がらせをして聖女の座に居座っている!

  平民らしい薄汚い所業だ!

  お前の聖女の称号を剥奪し、王都から追放する!」


 エラは、「この人、何言ってるんでしょ?」と戸惑い顔だ。

 嫌がらせして聖女になれるなんて思ってる人がいるなら、顔を見てみたい、と。


 「王子、自分が何を言ってるかわかってます?

  第一、私はそこの人なんか見たことないですよ」


 「無礼者めが!

  貴様などもはや聖女ではない! とっとと失せろ!」


 エラは、ため息を吐いた。どうやらこの王子は天然物のバカらしい。

 バカの相手は疲れるのよねえ。


 「王子、今すぐ取り消して膝をついて謝るなら、許してもらえるかもしれませんよ。

  聖女を決めるのは神です。王子ごときに許されることではありません」


 エラが言うと、ローカスは更に激昂した。


 「ふざけるな! 貴様のような平民風情が、俺を許すだと!? 聖女などとおだてられて増長しやがって!」


 エセルが

 「私こそが神に選ばれた聖女なのよ」

と言った瞬間、エセルの体が光の粒となって舞い上がり、着ていたものが床に落ちた。

 エラは、冷めた目で残された服を見下ろした。


 「せっかく忠告してあげたのに」


 偽りの神託をもって、神託によって選ばれた聖女であるエラを排除しようとしたエセルは、聖女を害する者と判断されたのだ。


 「貴様、エセルに何をした!? 殺して…」


 エラにつかみかかろうとしたローカスもまた、光の粒となって消えた。

 王都一帯は結界によって守られている。

 つまり、聖女に徒なす者は存在を許されないのだ。


 「騎士の方々、神の怒りを買いたくなければ、ありのままを王様にお伝えしてくださいね」


 王子が消えるという衝撃的な情景に呆然としていた騎士達に声を掛け、エラは立ち去った。

 もちろん、行く手を阻む愚か者はいなかった。

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― 新着の感想 ―
盗賊=人間 すらも存在を許されないって時点でまぁこれは想像つく範疇よなぁ…… ここまでのバカが居なかったのか、ここまでバカをやらかす場合一族郎党消えたのかどっちだろう
果たして、聖女の守りを王はどこまで認識していたのか…… しっかり認識してた→ならなんでこんな王子と婚約させてそのままにしたんだ……まさか、どうしようもない王子を手を汚さずに処分しようと……!?王家の…
これほどの力を示されては聖女は畏敬の対象でもあるだろう その力によって消し飛んだ逸話も大量に残って然るべき中で、王族でありながらこれではいずれ赤信号を平気で渡り車に轢かれて死ぬような末路しかなかったで…
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