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プロローグ

皆は、才能を持っているか?


俺はいつも思う。なぜ俺には皆が憧れるヒーローのような力が無いのか。

なぜ俺には隣のあいつのように人を引き付ける魅力がないのだろうか。

母の優しいところや父の努力家な所を引き継いでいないのだろうか…と。



これと言って誇れるものはない。ごく普通の一般人だ。

このまま高校を卒業して、偏差値50程度の大学に進学して大きくはない会社に入社して

ありきたりな人生を歩んで死んでいくのだろう。



そういう道に産み落とされてしまったのだ。



この普通だが面白みのない道。いつ脇道にそれてやろうかと何度思ったことか…

でもそんなものなかった。

俺の前に続く終わりのある道は一つのほころびもない壁で閉ざされている。

薄明るいトンネルのようだ。

壊そうとしてもびくともせず、強制的に進まさせる。俺はこの道が嫌いだ。

なんだか俺の人生を他人に強制されている気がして。



俺以外のやつは、この道を受け入れているのだろうか。

それとも、そんなものは無く、どこまでも続く草原を自由に歩めるのだろうか。

もしそうだとしたら憎いな…才能だけじゃなく自由まであるなんて。



いつか、この壁を壊して自分の意思で歩んでみたい。でも、壊した先も同じような道だったら、壊す時間が無駄だったら、と考えてしまう。もしそうだったら俺はもうただ歩き続ける人形になるだろう。



でも、いつか。

いつか俺が草原に立てるなら俺は何を目指しどんな道を行くのだろうか。

そんなことを思いながら今日も敷かれたレールを進むように学校に来て才能の有無を嫌というほど思い知らされる。






俺の意識を現実に戻すかのように、校舎にチャイムが響く。

五限目の終わりを知らせる合図だ。

チャイムが鳴り終わると、俺の近くにクラスメイトが集まってきた。

皆授業中はあんなにつまらなそうにしていたのに休み時間になると目が生き生きとしている。



集まってきたクラスメイトが俺に話かける...わけもなく。

隣の高身長男子を囲みワイワイと騒いでいる。

囲まれている男子はバスケ部のエースで、高1からスタメンで出ている注目選手らしい。

しかも誰とでも分け隔てなく接する好青年。さぞモテるだろう。

人生も、女も選び放題なのだろう。



それと比べて俺は...いや、やめておこう。

わかりきっていることだ、入学して1年半何度も思ってきた。

今更比べたところで自分が何も持っていない事実は変わらない。



横が騒がしくなってきたので、イヤホンを付け最近はまっているアニメのキャラソンを聞き始める。

最近のイヤホンはノイズキャンセリングが有能だ。音楽に集中できる。

最近はよくこうして音楽を聴きながら気を紛らわしていることが多い。

嫌なことを一時的に忘れられる。

昔からアニメはたまに見ていたが、最近このアニメに出会ってからは頻繁に見るようになった。

物語を見ているときだけは自分の人生から解放された気分になるからだ。





6時限目が始まり、皆が席に戻っていく。

横のバスケ部男子と目が合った。

「ごめんね、うるさくしちゃって。」

「いや、イヤホンしてたから…」

「そう言えばさっき…」

ガラガラと教室の前のドアが開き先生が入ってきた。

「あ、じゃあ…先生来たから。」

才能があるからって誰だってお前になびくと思うな。という思いは胸に秘めて俺は前を向いた。

これが無才の俺ができる数少ない抵抗だ。

「うん、そうだね。」




授業は特に何もなく進み放課後となった。

部活には所属していないので、そのまま帰ることにする。

下駄箱で靴を履き替え歩き始めた時、右ポケットに入れたスマホが震えた。

確認しようとポケットに手を突っ込むが、外に先生の姿が見えた。

この学校は構内でのスマホ使用は校則違反なのだ。見つかれば没収かつ生徒指導行き。

危なかった。

ちなみに生徒の間では、スマホを使っているところを見ても見て見ぬふりをするのが暗黙の了解となっている。

俺が休み時間に曲を聴いているのもこれまでに数人にバレているだろうが誰にもチクられている様子はない。




正門を出て学校の外に出たところでスマホを開く。

通知は母からだった。

内容は、帰りにスーパーに寄ってきてほしいというものだった。

「分かった」と返事し、家とは違う方向に歩いていく。

この方向は商業地域に向かっているので、放課後にグループで遊びに行くやつらが多い。

そういうやつらを見ると、俺もこういう性格じゃなかったら輪に入れたのかななどと考えてしまう。

「人と仲良くなる才能ね...」

どれだけ俺が欲しいと思ったか。友達ができていればと何度思ったことか。

友達がいなくて嫌な経験も何度もした。孤独が俺の性格をより悪化させている要因でもある。



俺は歩く速度を上げ逃げるように歩みを進めた。



少し進んだところで裏路地から真っ黒な塊が俺の目の前に飛び出してきた。黒猫だった。

急だったためよろけてしまったが、踏むこともなく立ち止まれた。

黒猫か…不吉だな、なんて思っていたら、裏路地から声が聞こえてきた。


「ねこちゃ~ん、まって~」

女性の声が聞こえ、その方向を見る。

上下黒ジャージに深々と被った帽子、マスクにサングラス。とても怪しい。

こんなに早く不審者と遭遇するなんて本当に黒猫って不吉なんだなと思っていたら、不審者に声をかけられた。


走ってきたのであろう、息がとぎれとぎれだったがしっかりと聞き取れた。

「あの、このくらいの黒い猫ちゃんみませんでしたか?」

不審者は手で大きさを表しながら問いかけてきた。

さっきの黒猫の事だろうか?

怪しいが、人を追っている様子ではなかったので指をさして「あっちに」とだけ答える。

不審者は指のさした方を見るやいなや走り出した。

顔だけ振り向いて「ありがとう」と言うと反対側の細い通路をカニ歩きで進んでいった。

「何だったんだ今の…」

本の数舜、突然の出来事だったが何もない人生に少しだけ刺激をもらえた。

怪しい人だったが少しだけ感謝しよう。



結局、黒猫は不吉を呼んだのだろうか。それとも、俺の人生を変えるための使いだったのか…



母からのお使いを終え、今度こそ家へ向かう。

今日の夕飯はハンバーグだろうか。

買い物の内容からそんな気がする。



俺はイヤホンを付けさっき聞いていた曲を流す。

昼間はかなり暑かったが、この時間になると秋らしい風が吹いている。

さっきの唐突な出来事を思い返しながら、歩みを進める。



この出来事が今後の俺の人生に与える影響はほとんどないだろうが、なぜか何かが変わりそうな気がして、希望がこの先に生まれそうな気がして帰りの足取りはとても軽く感じた。








読んでいただきありがとうございます。

始めて作品を書かせていただきました。

つたないところも多々あると思いますが、そこはご了承いただけると幸いです。

この作品やこれから書く作品はほぼ自己満です!気楽に読んでください!


この『俺の”(ゆめ)”を歩むまで』は不定期に更新していこうと思っています。


感想・アドバイス等あればぜひ書いてください!僕が喜びます!笑

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