ヘイントの試験②
---
鏡の間が消え、次の舞台は――終わりのない円形闘技場。
無数の武器を手にした人形兵たちが、列をなしながらカイとリクを包囲していた。
空は赤く染まり、どこからともなく鐘の音が鳴り響く。
「リク、あれ……全員、違う属性の魔力を持ってる」
カイが周囲を見渡しながら言った。
「しかも連携型……これ、たぶん個々に倒してたら間に合わない」
リクは眉をひそめ、何かを思案する。
まず飛び込んできたのは“重力槍兵”。
槍の一撃は地面を裂き、カイたちの足を重くする。
「重力領域……こっちの魔法も鈍るな」
カイが身を低くして避けつつ言う。
「だったら、作るよ。“軽量化空間”。」
リクが即興で創り出したスキルは、周囲の重さを打ち消す空間フィールドだった。
「ナイス!」
カイはすぐさま懐に入り込み、素手で“重力槍兵”を打ち倒す。
だが次に現れたのは“反射盾兵”。
カイの打撃がはじき返され、リクがすかさず横から声をかけた。
「攻撃じゃなくて、『概念』で削るんだ!」
リクは指先から光をねじり出す。
「因果転送:自壊因子。」
盾兵の“反射”という特性に、自壊の因子を付与。反射した瞬間、自らの盾で自分を切り裂いた。
連携が冴える中、次に現れたのは“写身弓兵”──カイの動きを真似する敵。
「こいつ、俺の行動をコピーしてくる!」
カイが打ち込めば、そいつも同じタイミングで打ち返す。
「じゃあ……ズラす!」
リクが作った新スキル「時間錯位:ミスリードシフト」が発動。
カイの動きを一瞬だけ未来にズラし、敵の模倣を空振りさせた。
「今だ!」
カイの一撃が敵の心臓部を砕き、爆ぜる。
---
最終局面、すべての兵が融合して巨大な“戦王機”と化す。
機械と魔術の複合巨人は、腕に巨大な魔方陣を装備し、空から爆撃を開始した。
「……これ、やばいやつだな」
カイが歯を食いしばる。
「でも、手はある」
リクが笑う。
「カイ、お前の攻撃、俺が“十倍に圧縮”してやる。タイミング合わせろ」
「任せろ!」
リクの創造スキル《魔力再定義:超濃縮爆芯》がカイの拳に宿る。
「行けぇぇぇぇぇッ!」
カイの拳が、放たれる。衝撃波が戦王機を貫き、爆裂する。
一瞬の静寂ののち、砕けた残骸の中から、拍手が響く。
「素晴らしいよ。これほどまでに、新世界で応用を利かせてくるとはね」
ヘイントが、残骸の上に座っていた。
「ご褒美に教えてあげよう。異界の扉があるのは──王都、オルヴィスだよ」
そして、彼は笑った。
「でもその前に、“連れて行くべき仲間”がいるんじゃない?君たちだけじゃ、こっちの世界では不便だろう。」