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第2部:『還界の彼方』 第一章:失われた力と始まりの大地




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第2部:『還界の彼方』


第一章:失われた力と始まりの大地


空間の裂け目に呑まれたカイとリクは、見知らぬ世界の荒野に投げ出されていた。


風は重く、空は色を失ったように灰色がかっている。草木は生気を欠き、地面はひび割れ、空に浮かぶ巨大な破片のような岩が重力に逆らって漂っている。


カイは立ち上がり、力を集中させようと試みる。


「……火よ、応えろ……プロミネンス──!」


しかし、手のひらに集まるはずの熱は現れず、代わりに何かが“吸い取られる”感覚があった。反応はゼロではないが、明らかに仙人の力は遮断されていた。


「……この世界じゃ、仙人の加護は通じないのか……?」


リクも同様だった。彼の創造スキルも不安定に揺らぎ、具現化しようとした剣が途中で形を崩す。


「ここは“繋がり”が希薄なんだ。世界そのものが、俺たちの次元の理を拒絶してる」


そして、2人の目の前に現れた異形の生物──**“空咆くうほう”**と呼ばれるこの世界の原生種は、魔力ではなく“存在圧そんざいあつ”というエネルギーを感じ取って反応していた。


新世界の特性と制約:


仙人の加護は完全に無効化:次元の断絶により、異世界の加護は力を及ぼせない。


**魔力ではなく存在圧そんざいあつ**が力の源:精神の強度・存在の意志が新たな力となる。


スキルは再構築が必要:かつての技は一部しか機能せず、周囲の法則に合わせた新たな応用が求められる。





「―やるしかねぇな、俺たち」


カイは拳を握りしめ、荒野に立つ。


「世界に拒まれたって……あいつらのところへ帰る。絶対に」






灰色の空の下、崩れた岩の影に2人は腰を下ろしていた。沈黙が続く。リクが先に口を開いた。


「……こんなことになるなんて、思ってもなかったよ」


カイは、手のひらを見つめながら答える。


「俺は……お前が、あのまま終わるとは思えなかった」


「俺もだ。俺はずっと……何かを成さなきゃって思ってた。人の愚かさとか、世界の限界とか。オーダに見せられたものは、確かに真実だった。でも……」


リクは拳を握った。


「でも、それだけじゃなかった。お前と決着がつかなかったとき、心が軋んだ。正しいって言い切れなかった。カイ、お前がいてくれて良かったよ」


カイは静かに笑う。


「言ったろ。俺は、お前を取り戻すって。仲間だからな」


リクはうつむいて、静かに言った。


「お前に救われる資格が、俺にあるのかはわからない。でも……一緒に帰りたいとは思ってる。皆のところへ」


カイは立ち上がる。


「じゃあ、行こうぜ。あいつらがいる世界に、もう一度」


リクも立ち上がり、ふっと笑った。


「力もない、道も見えない。でも、なんか……この“わからなさ”が、ちょっと懐かしい」


二人の背に、風が吹いた。存在圧が少しだけ揺らぎ、その共鳴が小さな希望の灯をともしたようだった。





荒れ果てた大地に立つ二人。カイは足元の砂を見つめながら言った。


「この世界……地図もない、仙人の気配もない。まるで全部、ゼロから始まるみたいだ」


リクは深く息を吸い、手を前に出す。かすかに手のひらが淡く光る。


「魔力の流れが……微かにだけど、感じる。ここでは仙人の力は使えない。でも俺の“創造”なら……まだ、応える気配がある」


そう言うと、リクは目を閉じて静かに呟いた。


「スキル創造──《地識探眼ちしきたんがん》」


地面に青い紋様が広がり、魔法陣が砂を吹き飛ばしていく。リクの額には薄く光る印が浮かび、眼前に半透明の地形図が描かれた。


「……見えた。この西の方角、山を越えた先に人口の集中した領域がある。都市か、王国か……」


「よし、そこを目指そう」とカイはうなずく。


「けどな、リク。お前の魔力、無理してないか?」


リクはわずかに肩で息をしながら、薄く笑った。


「少しな。でも今は……このスキルで、ようやく“前に進める”って気がしてる。ここに来た意味を、見つけたいんだ」


風が吹き、砂を巻き上げた。二人はそれに背を向けるように、進み始めた。まだ見ぬ王国へ、帰還の第一歩を刻むために。



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