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第80話『光の精霊王ルミナスの試練! 闇の呪印を消せ!』

◆◇1. ルクスの森への道のり


「……あれが《ルクスの森》だ。」


 イグニスが指差した先には、遠くに輝く神秘的な森が広がっていた。日の光を受けて、木々が金色に輝いている。


「すごい……まるで森全体が光を放ってるみたい!」


 フィーナが目を見開いて感嘆の声を上げる。久しぶりに見る希望の光景に、心が躍る。


「相変わらず、感動しやすいな。」


 ルークが優しい目でフィーナを見つめた。彼の口調には、以前のような冷たさはない。


「だってすごいんだもん! ルークだって、感動してるくせに!」


 フィーナが頬を膨らませる。その仕草に、一行の緊張が少し和らいだ。


「オレ様は前に一度、この森の入り口まで来たことがあるぜ。」


 カゼハが自慢げに言う。彼の尻尾が嬉しそうに左右に揺れている。


「そうだったのか。それは頼もしいな。」


 イグニスが腕を組み、感心したように頷く。


「だが……油断するな。この森にも試練があるはずだ。」


 イグニスの言葉に、全員が表情を引き締める。


「シャドウモアの『闇の呪印』を消すには、光の精霊王ルミナスの力が必要……」


 フィーナが胸の《フローズン・ティア》を握りしめる。その青い結晶が、かすかに光を放つ。


「行こう。遅れれば遅れるほど、『闇の呪印』は広がってしまう。」


 ルークの言葉に、皆が頷いた。


◆◇2. 光の試練の始まり


 《ルクスの森》の入り口に立つと、まるで別世界に足を踏み入れたような感覚に襲われる。木々は想像以上に巨大で、その幹は白銀色に輝いていた。地面には小さな光の粒子が舞い、道を照らしている。


「すごい……前に来た時よりもっと明るくなってるぜ。」


 カゼハが驚いた様子で周囲を見回す。


「おそらく、フィーナの《フローズン・ティア》に反応しているのだろう。」


 イグニスが分析的な視線でフィーナの胸元を見る。


 その瞬間——


「きゃっ!」


 フィーナの足元から光の環が広がり、彼女を包み込む。


「フィーナ!」


 ルークが咄嗟に手を伸ばすが、光の壁に阻まれてしまった。


「大丈夫!痛くないから!」


 フィーナの声が聞こえる。彼女は光の中で浮き上がり、まるで別の存在になったように輝いていた。


「フィーナ・エルリーフ……」


 どこからともなく、優しい声が響く。


「その声は……ルミナス!?」


 イグニスが周囲を見回す。


「そう、私は光の精霊王ルミナス。あなたたちの来訪を待っていました。」


 声とともに、フィーナの目の前に光の粒子が集まり、輝く人影が形成されていく。それは白い長い髪を持ち、全身が光を纏った美しい女性の姿。


「私に会いに来たのは、『闇の呪印』を消すためですね?」


「はい!シャドウモアが遺した呪印を消せるのは、光の精霊王であるあなただけだと聞きました!」


 フィーナが真剣な表情で訴える。


「それは確かに私にできること。でも……それだけで良いのでしょうか?」


「どういう意味ですか?」


「『闇の呪印』は消せても、その根源である『闇の力』は消えません。いずれ新たな形で現れるでしょう。」


 ルミナスの言葉に、フィーナは顔を曇らせる。


「では、どうすれば……」


「本当に必要なのは、『闇』と『光』のバランスを取り戻すこと。そのためには、あなたの中にある特別な力が必要なのです。」


「私の……力?」


「そう、世界樹の果実から生まれたあなたには、『調和の力』が眠っています。それを目覚めさせるための試練を用意しました。」


◆◇3. 四つの光の試練


「試練は四つ。あなたの仲間たちにも、それぞれの試練があります。」


 ルミナスの言葉とともに、光の柱が四方に立ち上がる。


「これは!?」


 ルーク、イグニス、カゼハも、それぞれ光に包まれていく。


「ルーク、お前の試練は『忍耐の光』。過去の記憶と向き合い、受け入れなさい。」


 ルークの表情が一瞬、苦痛に歪む。彼が薬師として過ごした日々、そして隠された過去の記憶が蘇ってくる。


「イグニス、あなたの試練は『知恵の光』。真実を見極める洞察力を示しなさい。」


 イグニスは静かに頷き、炎の魔導士としての誇りを胸に、光の中に消えていった。


「カゼハ、君の試練は『勇気の光』。恐れを乗り越え、前に進む力を見せなさい。」


 カゼハは「へっ、朝飯前だぜ!」と豪語しながらも、緊張した面持ちで光に包まれる。


「そして、フィーナ。あなたの試練は『心の光』。本当の自分と向き合い、受け入れることです。」


 フィーナの周りの光が強くなり、彼女の意識は別の場所へと導かれていく。


「みんな……無事に試練をクリアして、また会おうね……!」


 フィーナの言葉が、風に乗って仲間たちに届いた。


◆◇4. フィーナの『心の光』の試練


 目を開けると、フィーナは懐かしい場所に立っていた。草だった頃の自分が生えていた、あの森。


「ここは……」


 懐かしさと共に、恐怖も甦る。草だった頃の無力さ、引き抜かれる恐怖。


「フィーナ・エルリーフ。」


 声の方を振り向くと、そこには自分自身が立っていた。しかし、それは人間の姿ではなく、黄金に輝く「エルリーフ」の姿をした存在。


「あなたは……私?」


「私はあなたの本質。世界樹の果実の核から生まれた存在。」


 黄金のエルリーフが語る言葉に、フィーナは戸惑う。


「これまでの旅で、あなたは多くのものを得ました。仲間、力、そして記憶。」


「うん……最初は生きるだけで精一杯だったけど、今は守りたいものがたくさんある。」


「でも、まだ恐れていますね。本当の自分を知ることを。」


 フィーナは黙り込む。確かに、自分が何者なのか、なぜ特別な存在と言われるのか。その真実に向き合うことを恐れていた部分がある。


「あなたは、伝説の薬草『エルリーフ』として転生しましたが、それ以上の存在。世界の調和を保つために選ばれた存在なのです。」


「それって……重すぎるよ。私はただ、みんなと平和に生きていきたいだけなのに。」


「その気持ちがあなたの強さ。だからこそ、あなたは『調和の力』を使えるのです。」


 黄金のエルリーフが近づいてくる。


「自分自身を受け入れなさい。あなたの全てを。」


 フィーナは迷いつつも、ゆっくりと手を伸ばす。自分自身の本質と向き合う時が来たのだ。


「私は……フィーナ・エルリーフ。伝説の薬草から生まれ変わった少女。だけど、それだけじゃない。世界樹の子供であり、調和をもたらす存在……」


 フィーナが自分自身を受け入れた瞬間、黄金のエルリーフの姿が光となり、彼女の体内に溶け込んでいった。


◆◇5. 四つの光の結晶


 光が収まると、フィーナは再び《ルクスの森》の中央に立っていた。周囲を見回すと、ルーク、イグニス、カゼハも戻ってきていた。


「みんな!無事だった?」


 フィーナが駆け寄る。


「ああ……いろいろあったが、何とかな。」


 ルークは疲れた表情ながらも、安堵の笑みを浮かべていた。


「なかなか手ごわい試練だったぜ。だが、オレ様に不可能はねぇ!」


 カゼハは相変わらず強がっているが、その目には新たな光が宿っていた。


「私も、自分の限界を超えることができた。」


 イグニスが静かに頷く。彼の周りには、以前よりも穏やかな炎のオーラが漂っていた。


「皆さん、よく試練を乗り越えました。」


 ルミナスの声が響き、彼女の姿が光の中から現れる。


「試練の結晶を受け取りなさい。」


 四人の前に、それぞれ色の異なる光の結晶が浮かび上がる。ルークの前には青い結晶、イグニスの前には赤い結晶、カゼハの前には緑の結晶、そしてフィーナの前には純白の結晶。


「これらの結晶に、あなたたちの試練の力が宿っています。」


 フィーナたちは、それぞれの結晶に手を伸ばす。触れた瞬間、結晶は体内に溶け込み、新たな力を与えた。


「フィーナ、あなたの『調和の力』が目覚めました。その力で、『闇の呪印』を消しなさい。そして、世界のバランスを取り戻すのです。」


 フィーナの体から、かつてないほどの光が溢れ出す。《フローズン・ティア》も共鳴するように輝いていた。


「光の精霊王ルミナス様……ありがとうございます。この力で、必ず『闇の呪印』を消します!」


 フィーナの決意の言葉に、ルミナスは優しく微笑んだ。


「行きなさい。あなたたちの力を信じています。」


 ルミナスの姿が光となって消えていく中、フィーナたちは新たな力を得て、《ルクスの森》を後にした。


 彼らの前には、まだ多くの試練が待ち受けているだろう。しかし今、彼らの心は光に満ちていた。


◆◇次回『調和の力! 闇の呪印に立ち向かえ!』


シャドウモアが遺した『闇の呪印』を前に、フィーナが新たに目覚めさせた『調和の力』を発揮する時!だが、闇の根源に潜む意外な真実とは?仲間たちと力を合わせて、新たな脅威に立ち向かう!

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