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第71話『束の間の休息と新たな旅立ち』

◆◇ 1. 静かな朝


「……ん……」


 フィーナがゆっくりと目を開けると、見慣れた空の色が広がっていた。

 木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりが響いている。


「おはよう、フィーナ。」

 優しい声が耳に届き、フィーナは少し驚いた顔で横を向いた。


「……ルーク?」


「よく眠ってたな。」

 ルークが安心したように微笑む。


「昨日の戦い、すごく頑張ってたから……」


「……うん。私、あんなに力を使ったの初めてで……」

 フィーナはまだ体が重いのを感じながら、ルークの顔を見上げた。


「大丈夫。オレもカゼハも、ちゃんとそばにいたからな。」


「……ありがとう。」

 フィーナはほっとした笑顔を浮かべた。



---


◆◇ 2. 焚き火を囲む団らん


「フィーナ、起きたか! 飯ができてるぜ!」

 カゼハが尻尾を揺らしながら、湯気の立つ鍋をかき回していた。


「えっ? カゼハが料理を?」

 フィーナは目を丸くする。


「いや、オレ様の“味見”専門だ。ルークが作ったのを食ってやっただけにゃ。」

 カゼハは得意げに胸を張った。


「味見だけなら、料理したとは言わないでしょ……」

 フィーナが笑いながら椅子に腰掛けると、ルークが器を差し出した。


「とりあえず、食べろ。まだ体が本調子じゃないだろ?」


「うん、ありがとう。」

 フィーナは優しく微笑み、スープを口に運ぶ。


 温かいスープが体に染みわたり、心までほぐれていくようだった。


「……美味しい。」


「へへっ、そりゃよかったぜ。」

 ルークが照れくさそうに鼻をかいた。



---


◆◇ 3. フィーナの迷い


「……フィーナ、これからどうする?」

 食事が落ち着いた後、ルークが静かに尋ねた。


「え……?」


「“影の手”の動きはまだ止まってない。それに、シャドウモアの言ってた“最強の刺客”……そいつがまだいるかもしれない。」


「……うん、わかってる。でも……」

 フィーナは胸元の《フローズン・ティア》をぎゅっと握りしめた。


「私、また……誰かを危険な目に遭わせちゃうかもしれない。」


「そんなの、オレが守るから心配すんな。」

 ルークはきっぱりと断言した。


「でも……」


「フィーナ。」


 ルークは優しく、けれどしっかりとフィーナの両肩に手を置いた。


「お前が“薬草”の力を持ってるからこそ、救える命がある。昨日の戦いでもそうだったろ?」


「……うん……」


「だから、もう“自分が原因で”とか思わなくていい。」

 ルークはフィーナの手をそっと握った。


「お前は、ちゃんと前を向いて歩いてる。その力がある限り、オレたちが一緒に戦える。」


「……ルーク……」


「オレは、お前がいてくれなきゃ困るんだからさ。」


 フィーナの目から、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。


「……ありがとう。」



---


◆◇ 4. イグニスとグラキエスからの言葉


 その日の夕方、フィーナは《フローズン・ティア》を手に静かに瞑想していた。


「……イグニス……グラキエス……」


 炎の精霊王イグニスと、氷の精霊王グラキエスの姿が淡く現れた。


「……フィーナよ。お前は、よくぞ“薬草”の力を目覚めさせた。」

 イグニスが誇らしげに言った。


「だが、これで終わりではない。」

 グラキエスの声は冷静だった。


「“影の手”は、未だ闇の力を取り戻そうとしている。」


「……わかってる。だから、私は……」


「その力は、心の迷いによって弱まる。」

 グラキエスが厳しい声で告げる。


「恐れるな、フィーナ。お前は、もう一人ではないのだから。」

 イグニスが優しく微笑む。


「……うん。ルークと、カゼハと、みんなと一緒に……」


「その心を持ち続けるなら、きっと光は闇に打ち勝つ。」

 グラキエスが静かに頷いた。


「頑張れよ、フィーナ。」

 イグニスの声が消え、二人の精霊王はゆっくりと姿を消した。



---


◆◇ 5. 新たな旅立ち


「さて、行こうか。」

 翌朝、ルークが荷物を整え、剣を背に担いだ。


「もう、行くの?」


「まだ“影の手”の連中が何を企んでるのかわからない。のんびりしてる暇はないさ。」


「でも、その前に……」

 ルークは意を決したようにフィーナを見つめた。


「……お前が元気じゃないと、オレは不安で仕方ない。」


「……え?」


「だから、無理するなよ。お前が無理して、オレが守れなかったら……オレは後悔する。」


「……ルーク……」


「……だから、約束してくれ。」

 ルークがフィーナの手をぎゅっと握った。


「必ず、オレの隣で生き抜くって。」


「……うん。」

 フィーナは微笑み、力強く頷いた。


「約束する。」


「へへっ、オレ様のことも忘れるなよ!」

 カゼハがしっぽを大きく振りながら、にやりと笑った。


「もちろんだよ、カゼハ!」

 フィーナは笑顔で答えた。


 新たな旅立ちに、フィーナの心は晴れやかだった。


(私は、もう迷わない。きっと、どんな困難でも——)


(みんなと一緒なら、絶対に乗り越えられるから。)


「……行こう!」

 三人は光射す森の道を進み始めた。



---


◆◇ 次回『“影の手”の新たな動き! 奪われた秘宝と導かれし者たち』


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