67話『“影の手”の切り札! 闇の精霊王が放つ最強の刺客』
◆◇ 1. 迫る闇の気配
「……なんか、空気が重いな。」
カゼハが立ち止まり、ピンと立てた耳を動かした。
「私も感じる……なんだか、息が苦しいくらい……」
フィーナが《フローズン・ティア》を胸元にぎゅっと握りしめる。
「嫌な感じがする。まるで何かが……」
「……目覚めかけてるのかもな。」
ルークが険しい顔で呟いた。
「目覚め?」
「……“闇の精霊王”が、本格的に動き出してるのかもしれない。」
「でも、まだ封印は解けてないはずでしょ?」
フィーナの声に、ルークは渋い顔で首を振った。
「それが……完全な封印じゃなくても、少しでも力が漏れ出せば、十分脅威になる。」
「……なら、急がなきゃ!」
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◆◇ 2. “影の手”の新たな計画
薄暗い遺跡の奥、黒いローブを纏った“影の手”の幹部たちが密かに集まっていた。
「……ギルダスは敗れ、最強の刺客ヴァルゲインも撤退を余儀なくされた。」
「……だが、奴らの戦いで封印の一部は揺らいだ。我らの目的は果たされつつある。」
「問題は“薬草の娘”……フィーナ・エルリーフの存在です。彼女が持つ力が、封印を再び強化してしまう可能性がある。」
「ならば、彼女の排除は最優先事項……」
ローブの中央に立つ男が、闇の霧に包まれた水晶を掲げる。
「“闇の精霊王”の復活が近づいている。奴を完全に覚醒させるためにも、“薬草”の力は邪魔だ。」
「……次こそ、確実に仕留める。」
幹部たちは不気味に笑い、闇の霧に紛れて消えていった。
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◆◇ 3. 闇の精霊王、シャドウモアの目覚め
遺跡の最奥——そこには、巨大な石の棺があった。
棺の表面には黒い紋様が浮かび上がり、低く不気味な声が響き始める。
「……解かれし封印……」
闇の霧が渦を巻き、棺の隙間から黒い手が伸びる。
「シャドウモア様……!」
“影の手”の幹部が恭しく跪いた。
「……我が名は……シャドウモア……」
その声は、遺跡の奥を不吉に震わせ、冷たい風が吹き抜けた。
闇の精霊王が、今まさに目覚めようとしていた——。
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◆◇ 4. フィーナの記憶と覚悟
「……ルーク、やっぱり怖いよ……」
焚き火の前で、フィーナがぽつりと漏らした。
「そりゃ、怖くて当然だ。」
ルークは苦笑しながら肩をすくめる。
「でも、フィーナがここまで戦えたのは、怖さに負けなかったからだろ?」
「……うん、でも……」
「……あの時のこと、まだ気にしてるのか?」
ルークは優しい声で尋ねた。
フィーナは少し戸惑い、目を伏せた。
「……前の村で、薬草の力が暴走して、みんなを危険に巻き込んじゃった……。あの時のことが、忘れられないの。」
「でもさ……その時、お前が治した人の方が、ずっと多かっただろ?」
「……それでも、私はまた間違えるかもしれない……」
「その時は、俺が止める。」
ルークはきっぱりと言い切った。
「お前が間違えそうになったら、俺がそばにいて、正しい道に戻してやる。」
「ルーク……」
「だから、お前も信じろよ。自分の力が“みんなを救える力”だって。」
「……うん。」
フィーナは、胸元の《フローズン・ティア》を強く握った。
(私は、もう迷わない。ルークやカゼハを守るために、最後まで戦うんだ。)
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◆◇ 5. 次なる試練の幕開け
「そろそろ、行こうぜ。」
カゼハが立ち上がり、尻尾をふわりと揺らした。
「“影の手”は次に何を仕掛けてくるかわからねぇ……気を抜くなよ。」
「……うん。」
フィーナは強く頷き、ルークとカゼハと共に再び歩き出した。
「この先に、きっと“闇の精霊王”が……」
「今度こそ、奴らの計画は阻止する。」
ルークが剣を握りしめる。
「行こう!」
フィーナは、決意と共に《フローズン・ティア》をぎゅっと握りしめた。
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◆◇ 次回『闇の精霊王シャドウモアの復活! 絶望に立ち向かう者たち』




