第63話『涙が力に変わる時! “薬草”の真の力、覚醒!?』
◆◇ 1. 闇の精霊王の宣告
「……待ってるぞ。」
シャドウモアの声が響き、砕け散ったはずの水晶の破片が、再び漆黒の霧に包まれて舞い上がった。
「何……?」
「お前が持つ“薬草”の力が、真に覚醒するならば、我が試練を越えてみせるがいい……」
「試練……?」
フィーナが戸惑いの声を漏らす。
「“薬草”とは、ただの癒しではない。絶望の淵に立つ者を導き、希望の光を与える……だが、その光は容易には手にできぬ。」
シャドウモアの声は、重く響いた。
「真の“薬草”の覚醒には、絶望に打ち勝つ覚悟が必要だ。」
「覚悟……」
フィーナはごくりと息をのんだ。
「ルーク、カゼハ……私、行くよ。」
「本気か?」
ルークの声が不安に揺れる。
「フィーナ、オレ様も一緒に行くぜ!」
「……ありがとう。」
フィーナの目に宿ったのは、確かな決意だった。
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◆◇ 2. 闇の迷宮
「この霧……普通じゃねぇな。」
カゼハが目を細め、周囲を警戒する。
「……“幻影”の気配がする。」
ルークが剣を抜き、霧の中に目を凝らした。
「……フィーナ……」
「えっ?」
フィーナが振り向くと、霧の中にぼんやりと人影が浮かび上がった。
「まさか……」
そこに立っていたのは、亡くなったはずの母の姿だった。
「……嘘……お母さん……?」
「……こっちにおいで……フィーナ……」
「お母さん……?」
フィーナの瞳に涙が滲んだ。
「フィーナ、ダメだ! それは……」
ルークが止める間もなく、フィーナはその幻影に駆け寄った。
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◆◇ 3. 絶望の記憶
「フィーナ……あなたは、また失うのよ……」
「え……?」
幻影の母が、静かに言った。
「また……大切な人を……」
「そんなの……!」
「あなたの“薬草”の力がある限り、みんなが狙われる……」
「……そんなの、やだ……!」
「“影の手”は、きっとルークやカゼハも……あなたのせいで……」
「やめて!!」
「フィーナ!!」
ルークの声が響き、フィーナの腕を強く引いた。
「目を覚ませ!! それは“幻影”だ!!」
「でも……お母さんが……」
「お前が頑張ってきたのは、みんなを守るためだろ!」
「……ルーク……」
フィーナの目に涙があふれた。
「私は……私は……!」
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◆◇ 4. 光の力の覚醒
「フィーナ……その悲しみを、怒りに変えろ。」
フィーナの胸の《フローズン・ティア》が、柔らかい光を放ち始めた。
「その涙は……守りたいものがある証だろ?」
「……うん。」
フィーナは、涙を拭い、静かに立ち上がった。
「私は……大切な人を守るために、“薬草”の力を手に入れたい!」
《フローズン・ティア》が鮮やかに輝き、フィーナの手に氷の杖が現れた。
「……シャドウモア、私はあなたの試練を乗り越えてみせる!」
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◆◇ 5. 闇の精霊王の試練
「ならば、見せてみるがいい!」
シャドウモアの声が轟き、霧が渦を巻いて魔物の姿を形作った。
「……フィーナ、行くぞ!」
ルークが剣を構える。
「オレ様が風の道を切り開く! フィーナ、あとは任せたぜ!」
カゼハが勢いよく駆け出した。
「うん……任せて!」
「《ウィンド・スラッシュ》!!」
カゼハの風の刃が魔物の足元をえぐり、その隙を突いてルークが剣を振るう。
「《フレイム・ブレイド》!!」
炎の刃が魔物の体を斬り裂いた。
「……今だ、フィーナ!」
「《セイクリッド・ブレス》!!」
フィーナの放った光が魔物を包み、やがてその姿は霧散した。
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◆◇ 6. 使命の言葉
「見事だ……」
霧の中にシャドウモアの姿が現れた。
「その強さ……確かに見せてもらった。」
「フィーナ、お前はこれからも狙われるだろう。」
「でも、その光があれば、必ず希望は繋がれる。」
「……はい。」
「その“薬草”の力を、正しき道に導くのだ。」
「……きっと。」
「行け……」
シャドウモアの声が消え、霧が晴れ渡った。
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◆◇ 7. 次の旅立ち
「……よくやったな。」
ルークがフィーナの肩にそっと手を置いた。
「オレ様もカッコよかったろ?」
カゼハが尻尾を誇らしげに振る。
「……ありがとう。」
フィーナは優しく微笑み、再び胸の《フローズン・ティア》を握りしめた。
(もう、迷わない。私の力は、きっとみんなを守る力になるから……)
「さぁ、次の旅に出よう。」
フィーナはまっすぐに前を向き、力強く一歩を踏み出した。
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◆◇ 次回『“影の手”の陰謀と狙われた薬草』




