第62話『闇の精霊王の目覚めと“薬草”の宿命』
◆◇ 1. 闇の精霊王の目覚め
「……これは……?」
フィーナが呟いた。
《ルミナの聖域》の最奥。
そこには、不気味に脈動する黒い水晶が浮かんでいた。
「……気味が悪いな。」
ルークが剣を抜き、警戒しながら進む。
「何だか、オレ様の毛が逆立ってる気がするにゃ……」
カゼハが尻尾を膨らませ、警戒の声を上げる。
その時——
「……来たか、選ばれし“薬草”の娘よ。」
黒い水晶の中から、冷たく響く声が聞こえた。
「誰……?」
「我が名はシャドウモア……闇の精霊王。」
「闇の精霊王……!?」
フィーナの顔が強張った。
「お前の持つ“薬草”の光……それこそが、我の封印を破る“鍵”なのだ。」
「そんなの……絶対にさせない!」
フィーナは胸元の《フローズン・ティア》を強く握った。
「……力を貸して……!」
「その力では……我の封印は破れぬ……」
シャドウモアの声が低く響き、次の瞬間——
黒い影の魔物が水晶から這い出し、フィーナたちに襲いかかった。
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◆◇ 2. 闇の魔物との戦い
「来るぞ!」
ルークが剣を抜き、炎の魔法を纏わせた。
「《フレイム・ブレイド》!!」
燃え上がる刃が魔物を切り裂くが、闇の霧が再びその体を修復する。
「こいつ……倒しても回復するのか!?」
「なら、フィーナの力で浄化できるんじゃねぇか?」
カゼハが叫ぶ。
「フィーナ、オレ様が道を作るから、その隙にいけ!」
「うん!」
「《ウィンド・スラッシュ》!!」
カゼハの風の刃が魔物の体を切り裂き、一瞬だけ霧が薄くなる。
「今のうちだ、フィーナ!」
「お願い……力を貸して!」
「《ヒール・ブレス》!!」
フィーナの両手から放たれた柔らかな光が、魔物に降り注ぐ。
闇の霧は一瞬で消え、魔物の体が崩れ落ちた。
「やった……?」
「……まだだ。」
シャドウモアの声が響き、水晶の中からさらに巨大な魔物が姿を現した。
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◆◇ 3. “薬草”の覚醒と光の力
「このままじゃ……!」
フィーナは焦りながら、再び《フローズン・ティア》に手を当てた。
「お願い……もっと強い力が欲しいの……!」
その瞬間、フィーナの体が柔らかな緑の光に包まれた。
その光は、まるで森のように穏やかで、けれど確かな力を感じさせるものだった。
「……フィーナ?」
ルークが驚きの声を漏らす。
「《セイクリッド・ブレス》!!」
フィーナの光が巨大な魔物を包み込み、次第にその体が霧のように消えていく。
「……すごい……」
「やったな、フィーナ!」
カゼハが嬉しそうに尻尾を振った。
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◆◇ 4. 闇の精霊王の狙い
「……見事だ、選ばれし“薬草”の娘よ。」
シャドウモアの声が再び響いた。
「だが、その力は未だ完全ではない。」
「え……?」
「お前が持つその“薬草”の力は、さらに“進化”する。
だが、その力を完全に覚醒させるためには、“ある儀式”が必要だ。」
「……儀式?」
「その儀式さえ手に入れば、お前の力は完全に解放される。
そして——その力は、封印を破る“鍵”にもなる。」
「……そんなの、あなたの思い通りにはならない!」
「ふふ……楽しみにしているぞ……」
シャドウモアの声は徐々に消え、黒い水晶は砕け散った。
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◆◇ 5. ルークの決意とフィーナの覚悟
「……フィーナ、大丈夫か?」
ルークが優しく声をかけた。
「うん……」
「お前の力は、きっとこれからも狙われる。」
ルークは不安そうにフィーナの手を握った。
「オレがついてるから……無理だけはするな。」
「……うん。」
フィーナはルークの瞳を見つめ、小さく微笑んだ。
「でも……私はもう、守られてばっかりじゃいられないから。」
「フィーナ……」
「私、強くなる。ルークやカゼハと一緒に、絶対にみんなを守ってみせる!」
「……そっか。」
ルークはその言葉に、小さく笑った。
「じゃあ、オレももっと強くならなきゃな。」
「へへっ、オレ様が一番強いけどな!」
カゼハが得意げに胸を張った。
「……うん。」
フィーナは再び《フローズン・ティア》を握りしめ、決意を胸に刻んだ。
(私の力は、守るための力……)
(絶対に、負けない……)
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◆◇ 次回『闇の精霊王の試練! “薬草”に課された使命』




