第61話『聖域への道と“薬草”の覚醒』
◆◇ 1. 聖域への道
「……見えてきた。」
ルークが指さした先には、青白い光が淡く揺らめく《ルミナの聖域》の入口が広がっていた。
「ここが……」
フィーナはごくりと息を飲み、胸の《フローズン・ティア》を握りしめた。
「気をつけろよ。何か嫌な感じがする。」
カゼハが尻尾をピンと立て、辺りを睨みつける。
「“影の手”が追ってきてるかもしれないな。」
ルークは剣に手を添え、慎重に歩を進めた。
「フィーナ、お前は後ろから来い。」
「うん……」
フィーナは緊張しながらも、確かな決意を胸に刻んだ。
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◆◇ 2. 闇の精霊の声
「……待って。」
フィーナが急に立ち止まった。
「どうした?」
ルークが振り返る。
「……今、誰かの声が聞こえた気がするの。」
「声?」
ルークが耳をすますが、何も聞こえない。
「気のせいじゃねぇか?」
カゼハが言うが、フィーナは首を振った。
「……フィーナ……」
「また、聞こえた!」
その瞬間、黒い霧が地面を覆い、ひときわ冷たい気配が広がった。
「この感じ……ヤバいぞ!」
カゼハが鋭く唸る。
「くっ、“影の手”の連中か!?」
ルークが剣を構え、霧の中に目を凝らした。
「……違う。」
フィーナは、微かに震える声で言った。
「これは……“闇の精霊”の気配……」
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◆◇ 3. “薬草”の覚醒
「フィーナ……お前が持つその力……」
霧の中から、冷たく響く声がした。
「その力は、我らの封印を解く“鍵”となる。」
「何だと……?」
ルークが剣を握りしめる。
「“薬草”の力は、生命の源……穢れを浄化し、封印を解く力だ。」
「封印って……!」
フィーナが驚きに声を上げた。
「お前たちがどれだけ足掻こうと……その力は、我がものになる。」
「させない!!」
フィーナは思わず声を張り上げた。
「私の力は、みんなを守るためのもの……絶対に渡さない!!」
その瞬間、フィーナの胸の《フローズン・ティア》が淡い光を放ち始めた。
「これは……?」
「……フィーナの魔力が……」
ルークが目を見開く。
「……お願い、力を貸して!」
フィーナは強く祈った。
《ヒール・ブレス》!!
眩い緑の光が広がり、黒い霧が一瞬で消え去った。
「すごい……」
フィーナは、自分の手のひらを見つめた。
「これが……私の“薬草”の力……?」
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◆◇ 4. 光の精霊の導き
「……よくやったな。」
フィーナの背後から、優しく響く声が聞こえた。
「誰……?」
「私は“光の精霊”……長きに渡り、闇の精霊と対立してきた者だ。」
「光の精霊……」
「“薬草”の力は、ただの癒しではない。
お前は、光の精霊王に選ばれた“癒しの器”なのだ。」
「……癒しの器……?」
「お前の力は、癒しを超え、穢れを浄化する“精霊の聖域”そのもの。
その力は、闇を討つ唯一の希望となるだろう。」
「……そんな、私にそんな大それたことが……」
「……大丈夫だ。」
ルークが優しく声をかけた。
「お前には、オレがついてる。」
「ルーク……」
「それに、お前はこれまでだって、誰かを守るためにずっと頑張ってきたじゃねぇか。」
カゼハも笑顔で言った。
「……うん。」
フィーナは深くうなずいた。
「私、もっと強くなる。」
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◆◇ 5. 新たな試練の始まり
「……さぁ、行こう。」
ルークがフィーナに微笑みかける。
「きっと“影の手”は、次の精霊王の秘宝を狙ってくるはずだ。」
「……負けないよ。」
フィーナは胸元の《フローズン・ティア》をそっと握りしめた。
(私の力が、みんなを守れるなら……)
(どんな困難だって、絶対に乗り越えてみせる!)
フィーナの決意は、青白い聖域の光の中で、強く、確かに輝いていた。
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◆◇ 次回『闇の精霊の目覚めと“薬草”の宿命』




