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第6話『信じるべき相手は……薬師の青年!? 逃げ道なしの決断!』


◆◇1. もう選ぶしかない……!


(もう……決めるしかない!!)


 白衣の男の「鋭い針」と、薬師の青年の「冷たい視線」。どっちも信用できない。それは明らかだった。


 しかし、このまま迷っていても何も始まらない。しかも、黒いフードの謎の人物まで現れ、状況はますます複雑化している。逃げ道は閉ざされ、わたしはもう選ぶしかない。


(白衣の男は絶対ヤバい!!!)


 今までのやり取り、あの怪しい笑み、そして何より「どちらも選ばないのが一番危険」という言葉。彼の言動には明らかな威圧と操作が含まれている。あの鋭い針も、ただの脅しではなかった。薬師の青年の衣服を切り裂いた真実の威力を見せつけられたのだ。


(こっちが選ぶ前から、「選ばせる前提」で動いてた……!)


 白衣の男の計算高さが、わたしの本能に警告を鳴らす。彼は初めから「わたしに選択をさせる」という状況を演出していた。それはまるで、どちらを選んでも彼の思惑通りになるような、巧妙な罠のようにも感じる。


「……」


 じっと、薬師の青年を見る。彼の表情は冷静で、感情が読み取れない。でも、彼は「白衣の男に警戒していた」。それはそれで興味深い点だった。二人の間には明らかに過去の因縁があるようだが、その詳細はわからない。


 わたしが知っているのは、薬師の青年はナイフを持っていても、まだそれをわたしに向けてはいないということ。ただ「調べたい」と言っているだけで、白衣の男のような露骨な脅しはしていない。


(どっちも怪しいけど……少なくとも、「敵じゃない相手」を選ばないと……!)


 大きく息を吸い込んで——


「……わたし、彼と行く!!」


 わたしは決断した。震える指をさしたのは薬師の青年だった。その瞬間、わたしの心臓が激しく鼓動し、全身に緊張が走る。この選択は正しいのか?後悔することになるのか?


 しかし、今はもう戻れない。わたしは自分の選択に賭けるしかなかった。


◆◇2. 驚く二人、反応の違いは?


「おっ?」


 白衣の男が、意外そうに目を丸くする。その表情には、演技めいたものと、わずかな本物の驚きが混じっているようだ。


「君、なかなか面白い選択をするねぇ。てっきり、どちらも選ばないと思ったのに。」


 その声には軽さがあるが、どこか計算高い冷たさも感じられる。まるで実験の経過を観察する科学者のような客観性がある。


(いや、それが一番危険って言ったのあんたでしょ!!)


 その矛盾に気づかないフリをする白衣の男に、内心でツッコミを入れる。彼は初めから「選ばせる」つもりだったのに、まるで予想外の展開だったかのように振る舞っている。その二面性がますます彼の怪しさを際立たせる。


 一方、薬師の青年は——


「……そうか。」


 ほんの少しだけ、目を細める。彼の表情には大きな変化はないが、わずかに肩の力が抜けるのがわかった。安堵したのか、それとも自分の意図通りになったのか、わたしには読み取れない。


「理由は?」


 意外な質問だった。断られると思っていたからか、それとも自分を選んだ理由が気になったのか。


(えっ!? ここで理由聞くの!?)


 慌てる気持ちを抑え込み、わたしは冷静に考える。この瞬間、素直な気持ちを伝えることが大切だと直感的に感じた。


 だから、深呼吸してから、ゆっくり言葉を選ぶ。


「……あの人は、絶対に信用しちゃいけない気がする。」


 シンプルだが、わたしの正直な感覚だった。直感だけれど、生存本能から来る大切なメッセージだ。


「なるほど。」


 薬師の青年が小さく頷いた。その反応は冷静で、感情を表に出さない彼らしいものだった。


(なんか、めちゃくちゃ冷静に受け止められたんだけど……もっとこう、「よく選んだな!」とか言ってくれないの!?)


 拍子抜けするような平静さだが、それも彼の性格なのかもしれない。感情をあまり表に出さないタイプなのだろう。それでも、わたしの選択を否定せず受け入れてくれたことに、小さな安心感を覚えた。


◆◇3. その時、第三の影が……!


「まぁ、いいさ。」


 白衣の男は、肩をすくめた。その仕草には、驚くほどの余裕と諦めが混じっている。


「無理に連れていくつもりはないしね。」


 ……余裕すぎる。まるでこの結果も計算内だったかのような態度に、わたしは不安を覚える。彼は負けを認めたようで、実はまだ何か企んでいるのではないか?


「君たちの目的は何だか知らないけど——」


 ふっと、眼鏡をクイッと上げる。レンズに反射した光が、一瞬彼の目を隠す。


「君がどこに逃げたとしても、どうせ "また誰かに追われる" ことになる。」


 その言葉には、単なる予測を超えた確信が込められていた。まるで彼が何かを知っているかのように。


「……」


 言葉に詰まるわたしに、彼は続ける。


「その時、僕の言ったことを思い出すといいよ。」


 これは警告なのか、それとも予言なのか。


(えっ……なんか、すごい意味深……!?)


 ニヤッと笑い、白衣の男はあっさりと引き下がった。あまりに簡単に諦めるその姿に、かえって不安が募る。彼は森の奥へと姿を消していく。木々の間に溶け込むように、その白い姿が徐々に見えなくなっていった。


(……こ、怖すぎるんですけど!?!?)


 彼の最後の言葉が、不吉な予感として心に残る。


「……。」


 薬師の青年も、白衣の男の去り際を警戒するように見つめていた。彼の緊張した姿勢が、ようやく少し緩む。


 そして、その沈黙を破るように——


 ザッ……ザッ……!!


「っ!?」


 フードの男が、一歩踏み出した。その存在をほとんど忘れていたわたしは、ハッとして振り返る。黒いフードの下から、冷たい視線を感じた。


◆◇4. フードの男、1人ではなかった!?


「……そっちの男は行ってしまったか。」


 フードの男が低く呟く。その声は静かだが、重厚で、明らかな威厳を感じさせる。ローブの下から見える唇の端が、わずかに不満そうに歪む。


「ならば、こちらを回収するしかないな。」


 「回収」という無機質な言葉が、わたしの血を凍らせる。


「回収……!?」


 まるでわたしがモノのような言い方に、恐怖と屈辱が混じった感情が湧き上がる。


(ちょ、ちょっと待って!? それってつまり……わたしのこと!?)


 もし彼らがわたしの正体を知っているなら、その「回収」という言葉の意味は明らかだ。エルリーフとしての価値があるわたしを、自分たちのものにするということ。


「っ……!」


 横で薬師の青年がスッとナイフを構える。彼の姿勢が一変し、戦闘態勢に入る。その変化に、わたしは彼の本気を感じた。


「お前は……誰だ?」


 青年の声には警戒と緊張が含まれている。彼もまた、このフードの男たちの危険性を察知しているようだ。


「答える必要はない。」


 フードの男は冷たく返し、ゆっくりと手を上げる。その動きには何か意味があるようだ。合図か、それとも何かの準備か。


「ただ、この薬草の少女は——こちらのものだ。」


 彼の言葉に、わたしは震える。「薬草の少女」と呼ばれたことで、彼らが確実にわたしの正体を知っていることが明らかになった。


(えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?)


 その瞬間——


 ガサッ……!!


「……!!」


 わたしの背筋がゾクリとする。何かが動いた。それは一つではない。


(今、何かが動いた……!?)


 そっと視線を向けると、周囲の茂みの影から、別のフードの男が2人現れる。彼らも同じ黒いローブを着て、顔を隠している。息を殺すような静かな動きで現れた彼らは、まるで影そのものが実体化したかのようだ。


(えっ!? 1人じゃないの!? 3人もいたの!?)


 足元に生い茂る葉の間から、黒いフードの影がスルリと姿を現す。それは、まるで暗闇から這い出してくるような、静かで不気味な動きだった。彼らは完全に包囲網を作り、わたしと薬師の青年を中心に三角形を形成していた。


「君を回収するために、こちらもそれなりの手を打っている。」


 最初のフードの男が、静かに言った。その声には自信と、成功への確信が含まれている。


「……大人しく、こちらへ来い。」


 まるで命令するように、彼は手を差し伸べる。交渉の余地はなさそうだ。


(えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?)


 追い詰められた感覚に、わたしの心臓が激しく鼓動する。今までの危機とは比べものにならない、本物の恐怖がわたしを襲った。


◆◇5. 逃げるしかない!!


「——行くぞ!!」


 突然、薬師の青年の声が緊迫した調子で響く。


「えっ!?」


 気づけば、薬師の青年がわたしの手を引いていた。その手の力強さと温かさに、わたしは驚く。彼の手は思ったより大きく、しっかりとわたしを掴んでいる。


「ま、待って!! どうするの!?」


 混乱する間もなく、わたしは引きずられるように動き始める。青年の決断の速さに、ついていくのがやっとだ。


「戦うか逃げるかだが……お前を守りながら戦うのは不可能だ。」


 彼の冷静な分析が、状況の深刻さを物語っている。青年——いつの間にか名前がわかっていた——ルークは、キッと鋭い視線でフードの男たちを睨む。その眼差しには、諦めではなく、強い決意が宿っていた。


「なら、逃げる!」


 躊躇なく、彼は決断を下した。


 ダッ!!!!


 わたしはルークに引っ張られるまま、森の中へと駆け出した。足がもつれそうになりながらも、わたしは必死に彼についていく。人間の体になってまだ間もないわたしにとって、この急激な動きはかなりの負担だが、恐怖のおかげで思ったより体が動く。


(えぇぇぇ!? 3人もいたの!? しかも、めちゃくちゃヤバそうな雰囲気!!)


 背後で、フードの男の低い声が響く。


「……逃がすな。」


 その言葉は静かだが、明らかな命令だった。その命令とともに——


 3人の追跡者が、一斉にこちらへ向かってきた。彼らの動きは驚くほど素早く、まるで風のように森を駆け抜けていく。人間離れした身のこなしに、わたしは恐怖を感じた。


(ぎゃあぁぁぁぁぁ!?!?!?)


 わたしとルークは森の奥へと逃げ込む。木々の間を縫うように走り、時には低い枝の下をくぐり、時には倒木を飛び越えながら必死に逃げる。


 しかし、黒いフードの男たちは着実に迫ってくる。彼らの足音は静かだが、その存在感は確実に近づいてくる。逃げ切れるのか、それとも……。


◆◇次回『3人の追跡者!? 逃げる薬草少女、捕まるのか!?』



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面白いけど一話一話が短くて読みづらい 物理的に文字が少ないから内容が薄くなってしまう
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