第56話『狙われた“薬草”の娘! 闇に狙われたフィーナの秘密』
◆◇ 1. 忍び寄る影
「……風が、変だ。」
カゼハが立ち止まり、ピンと立てた耳をすばやく動かした。
「どうしたの?」
フィーナが不安そうに問いかける。
「わかんねぇ……でも、何かがこっちに近づいてる。」
カゼハは目を細め、森の奥を睨みつけた。
「フィーナ、近くに隠れろ。」
ルークが鋭い声で指示する。
「えっ? でも——」
「いいから!」
その瞬間——
「そこまでだ。」
冷たい声が響き、木々の間から黒いフードの集団が現れた。
その中央に立つ男は、細身の剣を手にし、フィーナを真っ直ぐに指さした。
「……見つけたぞ、“薬草”の娘。」
「なっ……!?」
フィーナの顔が青ざめる。
「お前ら、何者だ!」
ルークが剣を抜き、男の前に立ちはだかった。
「名乗る必要はない。」
男の瞳が冷たく光る。
「その女を差し出せ。そうすれば、お前たちの命は見逃してやろう。」
「……フィーナを狙ってるのか?」
「当然だ。“薬草の力”は、すべてを癒す奇跡の力……
だが、それは同時に、“あらゆる結界を壊し、精霊の加護さえ無力化する力”でもある。」
「……そんな……」
フィーナが震えた声を漏らした。
「だから、お前の命をいただく。」
男は冷たく笑い、剣を構えた。
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◆◇ 2. 襲い来る刺客
「お前の狙いが何であれ……フィーナには指一本触れさせねぇ!」
ルークが剣を構え、カゼハがその隣に立つ。
「フィーナ、後ろに下がってろ!」
「でも……!」
「頼む!」
ルークの真剣な声に、フィーナはしぶしぶ後退した。
「行くぞ、カゼハ!」
「おうよ!」
「《ウィンド・スラッシュ》!」
カゼハの風の刃が飛び、刺客たちに襲いかかった。
「無駄だ。」
男は冷静に剣を振り、風の刃を霧散させる。
「くそっ……!」
ルークが男に剣を振り下ろすが、男は身を沈めるようにかわし、逆にルークの脇腹へ鋭い突きを繰り出した。
「ルーク!」
フィーナの悲鳴が響く。
「ぐっ……!」
ルークは寸前で剣を防いだが、肩に浅い切り傷を負ってしまう。
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◆◇ 3. フィーナの覚悟
「ルーク! 無理しないで!」
フィーナが駆け寄ろうとするが——
「貴様が動くな。」
突如、別の刺客がフィーナの背後に現れ、短剣を突きつけた。
「フィーナ!!」
ルークが叫ぶが、傷の痛みで動けない。
「……フィーナ、逃げろ……!」
「おとなしくしろ。」
刺客の男がフィーナの腕を乱暴に掴み、引きずろうとする。
「……いや……いやだ!」
フィーナは震える手で**《フローズン・ティア》**を強く握った。
「お願い……力を貸して!!」
《グレイシャル・エンド》!!
青白い光が爆発し、フィーナの体を中心に冷気が渦を巻いた。
刺客は氷に閉ざされ、そのまま動きを止める。
「すごい……」
フィーナは、震える手を見つめた。
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◆◇ 4. ルークの誓い
「フィーナ!」
ルークがふらつきながら駆け寄り、フィーナを抱き寄せた。
「大丈夫か!? ケガは……」
「……うん、大丈夫。ルークは?」
「……こんなの、大したことねぇよ。」
ルークは無理に笑いながら、傷ついた肩を隠すように立ち上がった。
「でも……ルークがこんなに傷ついたの、私のせいだ……」
「……違う。」
「え?」
「フィーナがいてくれたから、助かったんだ。」
ルークはフィーナの手をそっと握りしめた。
「お前が無事なら……それでいい。」
「……でも……」
「もう、無茶すんなよ。」
ルークは優しく微笑み、再びフィーナの髪を撫でた。
「……ルーク……」
フィーナの胸に、じんわりと温かい気持ちが広がった。
(……私、もっと強くならなきゃ。)
(ルークを守れるくらいに……)
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◆◇ 5. 動き出す新たな敵
「……逃がしたか。」
森の奥から、黒いローブをまとった別の男が現れた。
「“薬草”の力……。その力さえ手に入れば、“精霊の加護”など恐れるに足らぬ。」
「次こそ、必ず手に入れてやる……」
男は闇に紛れ、静かにその場を後にした。
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◆◇ 次回『薬草の秘密と、奪われた秘宝』




