第54話『闇の刺客と“影の手”の猛襲』
◆◇ 1. 忍び寄る不穏な気配
「……よし、この辺りなら安全だろう。」
ルークがフィーナを支えながら、静かな林の中で足を止めた。
「カゼハ、あたりの様子は?」
「何とか撒いたみたいだが……妙に気になる奴がいたぜ。」
「気になる奴?」
フィーナが顔を上げる。
「……一人だけ、全然動揺してなかった。あいつ、まだ追ってくるぞ。」
カゼハの声は低く、鋭い警戒心が滲んでいた。
「フィーナ、今は休んでろ。もしまた襲われたら……」
「ううん、大丈夫。」
フィーナはきっぱりと首を振った。
「私も戦えるから。」
「……無理すんな。」
ルークは心配そうにフィーナを見つめた。
「でも、もう……守られてばかりじゃいたくないんだ。」
フィーナの目は、迷いのない強さに満ちていた。
「……分かった。」
ルークはため息をつき、苦笑を浮かべた。
「でもな、もし俺が危なくなったら、迷わず逃げろよ。」
「……約束する。」
フィーナは小さく頷いた。
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◆◇ 2. 闇の刺客
「——あいつらだ。」
カゼハが低く唸った。
暗闇の中、ひときわ異質な気配が近づいてくる。
「《シャドウ・スピア》!」
黒い槍が再び飛来し、木々を貫いた。
「くそっ……!」
ルークが剣で弾きながら、相手の姿を探る。
木陰から現れたのは、黒いローブを身にまとった1人の男。
他の“影の手”とは違い、その動きは研ぎ澄まされており、手にした短剣が妖しく輝いていた。
「……あいつ、只者じゃねぇな。」
カゼハが警戒の声を漏らした。
「お前たちに、秘宝を渡してもらおうか。」
刺客の冷たい声が響く。
「……やるしかなさそうだな。」
ルークは剣を構えた。
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◆◇ 3. 激闘! ルークと刺客
「ルーク、気をつけて!」
フィーナが叫んだ瞬間、刺客は闇に溶け込むように消えた。
「どこに……!?」
「右だ、ルーク!!」
カゼハの声に反応し、ルークは剣を振るう。
キィィィンッ!!
金属の音が響き、ルークの剣は刺客の短剣をかろうじて弾いた。
「……ほう、よく見えたな。」
刺客はニヤリと笑うと、再び闇の中に消えた。
「くそっ、何だよあいつ……!」
「気をつけろ、ルーク!」
カゼハが警告する。
「……《フローズン・ティア》なら……!」
フィーナがペンダントに触れようとしたそのとき——
「甘いな。」
刺客がフィーナの背後に現れ、短剣を突きつけた。
「フィーナ!!」
「う、うぅ……」
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◆◇ 4. フィーナの反撃
「お前にその秘宝は渡してもらう。」
刺客がニヤリと笑った瞬間——
「させるかよ!!」
ルークが叫び、剣を振り下ろした。
「っ!」
刺客は素早く飛び退るが、その腕には浅い切り傷が刻まれていた。
「フィーナ、下がれ!」
「……うん!」
フィーナはペンダントを胸に掲げ、強く願った。
「《グレイシャル・エンド》!!」
青白い光がフィーナの体を包み込み、彼女の背後に氷の精霊王の幻影が浮かび上がった。
「なっ……!?」
フィーナの手に氷の剣が現れ、彼女はまっすぐに刺客を見据えた。
「これ以上、私たちに手を出さないで!」
「……ほう……」
刺客は不気味な笑みを浮かべ、短剣を逆手に構えた。
「ならば、その力……試させてもらうとしよう。」
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◆◇ 5. 決着と気持ちの変化
「うおおおぉぉ!!」
ルークが渾身の力で剣を振るい、刺客の短剣を弾き飛ばした。
「フィーナ、今だ!!」
「……うん!」
「《グレイシャル・エンド》!!」
フィーナが氷の剣を振りかざすと、凍てつく冷気が一気に辺りを覆い尽くした。
「ぐあぁぁぁぁっ!!」
刺客は寒さに膝をつき、崩れ落ちる。
「……やったの?」
「……いや、まだだ。」
ルークが警戒を解かずに剣を構えたまま、刺客を睨みつける。
「……お前たちは、いずれ後悔することになる……」
刺客は冷たい笑みを残し、闇に溶けるように消えていった。
「……フィーナ、無事か?」
「う、うん……」
フィーナは震える指でルークの手を握りしめた。
「さっき……助けてくれて、ありがとう。」
「……お前が無事で良かったよ。」
ルークは優しくフィーナの手を握り返した。
「……さっきの言葉、覚えてる?」
「え?」
「ルークが、私がいなくなったら困るって……」
フィーナの言葉に、ルークは目をそらしたまま小さく呟いた。
「……本気にすんなよ。」
「ふふ……でも、嬉しかった。」
「……ったく。」
ルークは小さくため息をつきながら、フィーナの頭をポンポンと撫でた。
「もう、無茶すんなよ。」
「……うん。」
その言葉は、まるで恋人のように優しく響いていた。
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◆◇ 次回『深まる想いと、消えた村の謎』




