表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/92

第53話『闇の追跡者と“影の手”の罠』

◆◇ 1. 不穏な影


「……おい、フィーナ、早く行くぞ。」

「う、うん!」


 氷の精霊王グラキエスの試練を乗り越えた3人は、氷壁の迷宮を抜け、ようやく冷たい吹雪の地を後にした。


「ふぅ……寒かった……」

 フィーナはルークから借りた上着をギュッと抱きしめる。


「……平気か?」

 ルークが気遣わしげに覗き込む。


「……うん。ルークの上着、あったかいし。」


「そうか。ならいい。」

 ルークは少しホッとした様子で、微かに笑った。


(……さっきの戦いで、ルーク……私のこと、守ろうとしてくれた……)


 フィーナは無意識にルークの背中を見つめた。

 それに気づいたカゼハが、ニヤリと笑って尻尾を揺らした。


「お前ら、いい雰囲気じゃねぇか?」

「ち、違うってば!」

「別に? オレ様は応援してやるぜ?」


「も、もう、カゼハ!」

 フィーナの顔が一気に赤くなった。



---


◆◇ 2. “影の手”の罠


「……おい、誰か来る。」

 ルークが突然立ち止まった。


「え?」


 次の瞬間——


バシュッ!


 何かが音を立てて空を裂き、ルークの足元に突き刺さった。


「なっ……!? 矢……?」


「隠れろ!」

 ルークがフィーナの手を引いて、近くの岩陰へと駆け込む。


「ルーク、あれ!」

 フィーナが指さした先には、黒いローブに身を包んだ不審な影が3人、ゆっくりとこちらへ向かっていた。


「……“影の手”の奴らか。」

「きっと……氷の精霊王の秘宝を狙ってるんだ!」


「どうする? 戦う?」

 カゼハが尾をピクリと立てる。


「いや、まずは様子を——」


「見つけたぞ。」

 低く響く声と共に、黒いローブの男が鋭く手を上げた。


「《シャドウ・スピア》!」


 黒い槍の影が無数に現れ、フィーナたちに襲いかかる。


「くっ……! 《ウィンド・スラッシュ》!」

 カゼハが風の刃を放ち、影の槍を吹き飛ばした。


「ルーク、フィーナ、行くぞ!」

「うん!」

「了解!」



---


◆◇ 3. フィーナの決意


 3人は必死に駆け抜け、木々の中へと飛び込んだ。


「はぁ……はぁ……」

 フィーナは息を切らしながら、胸元のペンダント《フローズン・ティア》に手を添えた。


(……氷の精霊王がくれたこの力なら……)


「……やるしかない。」

 フィーナは震える声で呟いた。


「フィーナ?」

「ルーク、カゼハ……少しの間、私が時間を稼ぐから……その間に、向こうの崖の道を探して!」


「何言ってんだ、危ねぇだろ!」

「無茶するなよ!」


「でも……私にだってできる!」


 フィーナは、ぎゅっとペンダントを握りしめた。


「私だって……ルークやカゼハを守りたいの!」


「……わかった。」

 ルークは迷いながらも、フィーナの覚悟を感じ取り、カゼハを引っ張って道を探しに向かった。



---


◆◇ 4. 《フローズン・ティア》の力、再び


「……お願い、力を貸して。」


 フィーナがペンダントに祈ると、再び青白い光が輝き、背後に《グラキエス》の幻影が現れた。


「……あなたの力を、貸して。」


《アイシクル・カタストロフ》!


 天から降り注ぐ無数の氷の槍が、“影の手”の一団に降り注いだ。


「ぐあっ……!」

「くそっ、引け!引けぇ!!」


 ローブの男たちは慌てて撤退していった。


「……やった……」


 力を使い果たしたフィーナがその場に崩れ落ちる。



---


◆◇ 5. ルークとフィーナ、深まる絆


「フィーナ!」

 ルークが駆け寄り、倒れ込んだフィーナをそっと抱き起こした。


「お前……無茶すんなって言ったろ。」

「……ごめん。でも、守りたかったの。」


「……ありがとな。」


 ルークはそう言いながら、フィーナの頭を優しく撫でた。


「俺……お前がいなくなったら、もう……どうすればいいか……」

 ルークの声は震えていた。


「……ルーク?」

 フィーナは驚いてルークの顔を見上げた。


「バカ、変な顔すんな。」

 ルークは慌てて顔を背けたが、その耳はほんのり赤く染まっていた。


「ふふ……ルークって、意外と可愛いところあるんだね。」


「うるせぇ!」

 それでも、ルークの手はフィーナの頭から離れず、そのまま彼女の髪を優しく撫で続けていた。



---


◆◇ 次回『闇の刺客と“影の手”の猛襲』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ