第52話『氷の精霊王の怒りとフィーナの記憶』
◆◇ 1. 氷の槍の猛攻と絶望の中の希望
「ルーク、カゼハ、お願い……時間を稼いで!」
フィーナの声が震えながら響いた。
「おうよ! オレ様に任せとけ!」
「行くぞ、カゼハ!」
ルークとカゼハが氷の槍の嵐に飛び込んだ。無数の氷の刃が空間を切り裂き、次々と降り注ぐ。ルークの剣が赤く燃え上がり、氷の槍を次々に砕いた。
「くそっ……こんな数、無理だ!」
ルークが苦しげに叫ぶ。
「《ウィンド・スラッシュ》!!」
カゼハが鋭い風の刃を放ち、氷の槍を吹き飛ばす。しかし、氷の精霊王が指を振ると、次々と氷の槍が再生し、さらに数を増して迫ってきた。
「オレ様の風でも追いつかねぇ!」
「フィーナ、早くしろ!」
「……頼んだよ、二人とも!」
フィーナは震える足を踏みしめ、氷の精霊王と向き合った。
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◆◇ 2. 氷の精霊王の怒りと、フィーナの訴え
「何を企んでいる……?」
氷の精霊王が冷たい瞳でフィーナを睨みつけた。
「私は、あなたと話がしたいの!」
「……話だと?」
「あなたは怒っている。でも、その怒りは“影の手”に向けるべきじゃないの?」
「……黙れ!」
氷の精霊王が冷たく叫び、凍てついた波がフィーナに迫る。
「《エメラルドの加護》!」
フィーナが腕輪に手を当てると、緑の光が広がり、氷の波を弾いた。
「その力……シルヴィスの腕輪か……?」
氷の精霊王の目がわずかに揺らぐ。
「そう! 森の精霊王シルヴィスが、あなたを信じて腕輪を託してくれたの!」
「……シルヴィスが?」
「あなたはきっと、みんなを守るために怒ってるんだよね? “影の手”に剣を奪われて、それが悔しくて……!」
「……もう、信じるものなど……ない。」
「そんなことないよ!」
フィーナは声を張り上げた。
「シルヴィスやエアリエル、イグニス……みんな、あなたを待ってるの! そして、私だって、あなたを信じたいの!」
「……貴様に、何がわかる……!」
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◆◇ 3. フィーナの記憶と決意
「わからないよ……でも、私は知ってるの。信じることが怖くなる気持ち……!」
その瞬間、フィーナの脳裏に鮮やかな映像がよみがえった。
──燃え盛る炎の中、目の前に倒れる誰かの姿。
──「助けられなかった」無力感。
──「もう、誰も傷つけたくない」——。
「……そうだった……」
フィーナの目に涙が浮かぶ。
「私も……昔、誰かを守れなかった……」
「……何?」
「でも、だからこそ……! 今度こそ、みんなを守りたい!」
フィーナは震えながら手を伸ばした。
「だから……お願い……あなたも、信じてみて……もう一度!」
「……シルヴィスが……お前に腕輪を……?」
氷の精霊王の目に、かすかに涙が滲んだ。
「……私の……怒りを……静められるか?」
「きっと……できます!」
「……ならば、試してみろ。」
氷の精霊王が右手を掲げると、空中に氷の剣が出現した。
「この剣を……清めてみろ。」
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◆◇ 4. 氷の剣の浄化と旅立ち
「この剣に……私の魔力を……」
フィーナは両手を広げ、氷の剣にエメラルドの力と炎の羽飾りの力を込めた。
「《フレイム・リストア》!!」
剣が輝き、青白い氷の光が消え、穏やかな蒼い光に包まれた。
「……お前に……氷の守護を託そう。」
氷の精霊王が、フィーナの額に指を当てた。
「“氷の秘宝”……お前が持つにふさわしい者であれば、真の加護が目覚めるだろう。」
「ありがとうございます……!」
「……終わったか。」
ルークが安堵の息をついた。
「フィーナ……よくやったな。」
カゼハもいつもの調子で軽く笑っていたが、その声は少し震えていた。
「これからどうする?」
「“影の手”がこの剣を狙うなら、まだ戦いは続くはず……」
フィーナは新たに手に入れた氷の剣を握りしめた。
「うん、でも今度は……もう逃げない。」
「おう、オレ様もついてるぜ!」
「俺もな。」
三人は互いに顔を見合わせ、次の旅へと足を踏み出した。
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◆◇ 次回『“影の手”の野望! 迫る黒き嵐』




