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第5話『選べない!? 追い詰められる薬草少女の決断!』

◆◇1. 迫られる選択、答えを出せないまま……


「……その男には、ついていかない方がいい。」


 薬師の青年の低い声が、わたしの耳に響く。その声には、単なる警告を超えた切実さがある。


(えっ!? なんで!?)


 さっきまでナイフを持って追いかけてきた「こっちがヤバい側」の人が、今度は白衣の男を警戒してる? え、どういうこと!? 敵の敵は味方ではないのか?


 ちらっと白衣の男を見ると、彼はまったく動じることなく、ふふっと笑った。その余裕の表情は、何かを知っているからこその自信に満ちている。


「やれやれ、ずいぶんと警戒されてるなぁ。」


 軽やかに言いながらも、その声には何か冷たいものが混じっている。


「当然だ。」


 薬師の青年は一歩前へ出る。彼の姿勢からは、戦いの構えのようなものが感じられる。

 そのナイフをわたしに向けることなく、ただ白衣の男を鋭い目で睨みつけた。彼の目には、何か過去の因縁を思わせるような色が宿っている。


「……お前、本当にただの薬師か?」


 青年の声に、疑惑と警戒が混じる。


「どういう意味だい?」


 白衣の男は首を傾げ、無邪気な表情を浮かべる。しかし、その目は笑っていない。


「普通の薬師が、こんな森の奥で、妙に落ち着いて人を観察しているものか?」


 青年の指摘は鋭い。確かに、一般的な薬師がこんな深い森にいること自体が不自然だ。


「ああ、それか。」白衣の男は軽く肩をすくめた。まるで取るに足らない質問だというように。


「単に興味があっただけさ。ちょうど面白いものが目の前で起こってたからね。」


 その「面白いもの」とは、草から人間への変身のことか?それとも、わたしの存在そのものなのか?


「ふざけるな。」


 薬師の青年の声が、低く鋭くなる。そこには明らかな敵意が含まれている。


(え、ええ、何この空気!? わたしに関係なくない!?)


 二人の間には、明らかに過去の因縁か、あるいは何か知識の共有があるようだ。わたし自身は重要な存在なのに、今やその存在が脇に追いやられている感覚。


 でも——


 わたしが水の中で変身した瞬間……

 もしかして、この白衣の男、見てた!?


 その考えが頭をよぎると、全身に冷たい恐怖が走る。もし彼が全てを見ていたとしたら、わたしの正体は完全に知られている。そして、その知識が何を意味するのか、想像するだけで恐ろしい。


◆◇2. 逃げ道、完全封鎖!?


「……まぁまぁ、そんな怯えないでよ。」


 白衣の男が、のんびりと手を上げる。その仕草は優雅で、どこか貴族のような雰囲気がある。


「僕は別に、君を捕まえようってわけじゃない。ただ——」


 その言葉が終わる前——


 ヒュン!!!


 鋭い音が空気を切り裂く。


「……えっ!? 何か飛んできたぁぁぁぁ!!??」


 わたしの横を、シュッと何かが通り過ぎた。その速さに目が追いつかない。

 その瞬間、薬師の青年のローブが「スパァッ!!」と鋭く切れる。布地が裂け、その端がふわりと宙に舞う。


(えぇぇぇ!? 今の、何!?)


 白衣の男が、微笑みながら「何か細い針のようなもの」を指で弄ぶ。その針は金属製で、先端に何か液体が光っている。完全な武器だ。


(えぇぇ!? なにそれ!? 絶対ヤバいやつじゃん!!)


 穏やかな雰囲気から一転、白衣の男の危険性が明らかになった瞬間。その技術と精度は、ただの研究者のものではない。


「君が今、どちらにもついていきたくない気持ちは分かるけどね?」


 彼の声は相変わらず優しいが、今やその裏に潜む危険が明白になっている。


「……ふぅん。」


 薬師の青年が、さらに険しい表情になる。彼のローブの切れ目から、わずかに血が滲んでいるのが見える。針は彼の肌も傷つけていたようだ。


「まだそんなものを持っているのか。」


 「まだ」という言葉に含まれる過去の関係性。二人は明らかに初対面ではない。


「ん? いいじゃないか、これくらい。」


 白衣の男はまったく気にした様子もなく、クルクルと針を回し続ける。その手つきは慣れたもので、明らかにこれが初めての使用ではないことを示している。


「いいわけがあるか。」


 冷たい視線を向ける薬師の青年。彼の姿勢からは戦闘の準備ができていることが伺える。両者の間に流れる緊張感は、まさに爆発寸前だ。


「そんなに怯えなくてもいいのに。ただ——君がどっちを選ぶかは興味あるけどね。」

「しかし、どちらも選ばないというのは、本当に君にとって一番危険な選択肢だよ?」


 白衣の男の言葉には、明らかな脅しが含まれている。


(な……!?)


 薬師の青年が、さらに表情を険しくする。彼の目は白衣の男から離れず、わたしを守るような位置に立っている。


「……お前の言う『選ばない』の意味は、なんだ?」


 彼の声には、警戒と共に明らかな敵意が含まれている。


 白衣の男が、クイッと口端を上げた。その笑みには、どこか不気味なものがある。


「さぁ、どうする?」


 二人の間で板挟みになったわたしに、選択の時間が迫っている。


◆◇3. 追い詰められた薬草少女の選択!


(どうする、どうする、どうする……!?)


 確かに、どちらにもついていかないなら、次に何が起こるか分からない。わたしの存在を知った人が、どんどん増えていけば、危険も増えるってこと。しかも、二人の間には明らかに過去の因縁があり、その渦中に巻き込まれるのは危険すぎる。


(でも、どっちも信用できないし……)


 薬師は最初こそ怖かったけど、少なくとも白衣の男のような露骨な武器は使っていない。でも、彼もナイフを持っているし、わたしを「調べる」と言っている。一方、白衣の男は助けると言ってはいるけれど、その裏には明らかな別の思惑がある。


「……」


 唇を噛みしめ、考える。頭の中は混乱し、まだ人間の体に慣れていない感覚も相まって、判断力が鈍っている。


 その時——


 バキバキッ!!!


 遠くの林の奥から、何かが踏み荒らすような音が響いた。木々が揺れ、鳥たちが驚いて飛び立つ。


(な……なに!? また何か出てくるの!?)


 状況がさらに複雑化する予感に、胸が締め付けられる。


 ——ガサッ。


 遠くの木々の影から、何かがゆっくりと現れる。茂みが揺れ、足音が近づいてくる。


 それは——


 黒いフードを深く被った「第三の人物」だった。その姿は森の影に溶け込むように暗く、顔は完全に隠されている。しかし、その存在感は薬師にも白衣の男にも負けないほどの重みがある。


(え、え……!? 新キャラ、来た!?)


 状況はますます混沌としていく。わたしの運命は、自分の選択にかかっている——


◆◇次回「謎の第三の人物!? さらなる追跡者の登場!」


森の奥深くで繰り広げられる三つ巴の対決。謎の黒いフードの人物は、エルリーフにとって新たな味方なのか、それとも敵なのか?薬草少女の選択と、明かされていく各人物の思惑。迫りくる危機の中、彼女の運命は——!

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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次回もお楽しみに!

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