第49話『薬草の先生、フィーナの奮闘!』
◆◇ 1. 立ち寄った村と子供たちの声
「この村で休んでいくのも悪くないな。」
ルークが腕の包帯を抑えながら、ぽつりと呟いた。
「ルーク、大丈夫?」
「……あぁ。少しはマシになったが、まだ万全じゃないな。」
「だったら、無理しないで! 今日はゆっくりしようよ。」
「そうだな。」
ルークが微笑んだそのとき——
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
子供たちの元気な声がフィーナに飛びついた。
「えっ、わたし?」
「うん! お姉ちゃん、薬草が得意なんでしょ? おしえてほしいの!」
「薬草を……?」
「村の人が、フィーナって人が薬草の先生だって教えてくれたんだ!」
「薬草の先生って……」
思わずフィーナは吹き出したが、子供たちのまっすぐな瞳を見て、思わず頷いた。
「……うん、いいよ! じゃあ、みんなに薬草のこと、教えてあげるね!」
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◆◇ 2. フィーナの薬草講座
「この草はね、傷を治すのに使うの。」
フィーナは子供たちに薬草を見せながら、優しく説明した。
「へぇー! これ、ぼくんちの裏にも生えてた!」
「すごい、薬草って便利なんだね!」
「でもね、間違えて違う草を使うと毒になるものもあるから、ちゃんと見分けることが大切なんだよ。」
「うん! お姉ちゃん、もっと教えて!」
フィーナは子供たちに草の匂いや感触を教えながら、ひとつひとつ丁寧に説明した。
「フィーナ、案外しっかりしてるんだな。」
カゼハが、木の陰から様子を眺めながらポツリと呟いた。
「……そりゃな。あいつ、いつも“薬草だから”って自分を責めてるけど……」
ルークが笑いながら言葉を続けた。
「本当は、誰よりも頑張ってるよ。」
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◆◇ 3. 事件の予感
「お姉ちゃん!」
突然、子供の一人が血相を変えて走ってきた。
「どうしたの?」
「山のほうで、村の人がケガしたみたい! すごく痛がってるって!」
「ケガ!?」
「フィーナ、行こう!」
ルークとカゼハもすぐに立ち上がった。
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◆◇ 4. 山の中での緊急治療
「くそっ、傷が深い……」
山道に倒れていたのは、村の木こりだった。
「このままだと危ない……」
フィーナはすぐにポーチから薬草を取り出した。
「これを……傷口に当てるね!」
「フィーナ、手伝うぞ!」
ルークがフィーナに包帯を手渡し、カゼハがそばで見張る。
「お願い……治って!」
フィーナが手をかざし、魔法の力を込める。
——ふわりと、炎の羽飾りが温かな光を放った。
「……あったかい……」
木こりの顔が安堵に緩み、呼吸が落ち着いた。
「……助かったのか?」
「うん、きっと大丈夫!」
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◆◇ 5. フィーナの決意
「フィーナ……よくやったな。」
ルークがそっと肩に手を置いた。
「……わたし、やっと気づいたよ。」
フィーナが、ぎゅっと炎の羽飾りを握りしめる。
「これからは、みんなに守られるだけじゃなくて、わたしも誰かの役に立ちたい。そう思ったの。」
「……フィーナ、頼もしくなったな。」
「えへへ……でも、ルークやカゼハがいてくれるから、頑張れるんだよ。」
「……ふん、オレ様の実力に気づいたか。」
カゼハが鼻を鳴らして得意げに言った。
「まぁ、オレ様がいれば百人力だろ?」
「……はいはい、頼りにしてるよ。」
「おい、その言い方はどういう意味だ!?」
「ふふふ……」
村の子供たちの笑い声が響く中、フィーナはそっと空を見上げた。
(次は……氷の精霊王の試練。わたし、きっと乗り越えてみせる。)
フィーナの瞳に、力強い決意の光が宿っていた。
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◆◇ 次回『氷壁の伝説と謎の旅人』




