第48話『氷の精霊王の怒りと消えた伝説の剣』
◆◇ 1. 新たな目的地と伝説の噂
「氷の精霊王がいるのは……この北の山脈の向こうらしいな。」
地図を広げたルークが、険しい山々のイラストを指さした。
「山脈の向こうって、かなり寒そうだね……」
フィーナは自分のマントをぎゅっと握りしめた。
「それだけじゃない。」
ルークは真剣な表情で言葉を続ける。
「この山脈には“氷の精霊王”が遺した《氷壁の剣》が眠っているって噂があるんだ。」
「《氷壁の剣》?」
「精霊王がかつて手にしていたとされる伝説の剣だ。けど、その剣は何者かに奪われて行方不明になってるらしい。」
「それって……誰かが持ってるってこと?」
「たぶん、そういうことだな。」
「……ひょっとして“影の手”が?」
フィーナが不安そうに言うと、ルークは険しい顔でうなずいた。
「可能性は高い。ヤツらは、ただの暗殺者じゃない……精霊の遺産や古代の秘宝を狙う危険な集団だ。」
「……それならなおさら、急がなきゃ!」
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◆◇ 2. 謎の村と氷の歌
山脈へ向かう途中、フィーナたちは小さな村に立ち寄った。
「こんにちはー!」
フィーナが声をかけると、村の子供たちが駆け寄ってきた。
「ねぇ、お姉ちゃん、薬草のお姉ちゃん?」
「薬草? うん、得意だよ!」
「ぼく、昨日ケガしちゃったんだ! お姉ちゃん、見てくれる?」
「もちろん!」
フィーナは子供たちのケガを手当てしながら、村の人たちと話して回った。
「氷の精霊王? それなら、うちのばあちゃんが詳しいぞ。」
村の青年が、フィーナたちを古い家へ案内してくれた。
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◆◇ 3. 老婆が語る氷の精霊王の伝説
「氷の精霊王かい……」
しわがれた声で老婆が話し始めた。
「氷の精霊王は、かつてとても優しい心を持った精霊だったそうじゃ。だがな……ある日、信じていた者に裏切られ、心を閉ざしてしまったそうじゃ。」
「裏切られた……?」
「そうじゃ。そのとき、精霊王の剣が奪われたのじゃ。」
「……誰が奪ったんですか?」
「それは……わからん。だがの、その剣には“精霊王の怒り”が宿り、触れた者は次々と凍りついてしまったらしい。」
「それって……とても危険じゃない?」
「ああ……だからこそ、あの剣は封印されておるはずじゃったが……」
「……“影の手”に奪われてたら、まずいな。」
ルークが険しい表情でつぶやいた。
「でも、どうして“影の手”がそんなものを?」
「さぁな。けど、あの者たちは“氷の精霊王”の怒りを利用し、力を手に入れようとしておるのかもしれん。」
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◆◇ 4. 新たな手がかりと奇妙な出会い
村を出発しようとしたそのとき——
「お前たち……氷の精霊王を探しているのか?」
フィーナたちの前に、フードをかぶった謎の男が立っていた。
「……あんた、誰だ?」
ルークが警戒しながら剣に手をかける。
「名乗るほどの者じゃない。ただの旅人さ……」
その男は、ポケットから小さな青い水晶を取り出した。
「氷の精霊王を探すなら、この水晶を持っていけ。道しるべになるはずだ。」
「なんで、あんたがそれを……?」
「……詳しく話すつもりはない。」
謎の男は背を向け、静かに去って行った。
「ルーク、どうするの?」
「……とりあえず、これを持って進もう。」
「でも、あの人、何者だったのかな……」
「わからねぇけど、ただの旅人って雰囲気じゃなかったな。」
カゼハが不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「……うん、でもきっと……これが次のヒントだよ。」
フィーナは青く光る水晶を見つめ、ぎゅっと握りしめた。
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◆◇ 5. 再び迫る“影の手”の気配
「おい、ルーク。」
カゼハが鋭く目を光らせ、耳をピクリと動かした。
「どうした?」
「さっきから……誰かがつけてきてる。」
「……“影の手”か?」
「たぶん、そうだな。」
「面倒だけど……行こう。」
ルークは剣を構え、険しい表情で歩き出した。
「大丈夫だよ。私がルークとカゼハを守るから!」
フィーナが力強く笑った。
「へへっ、その意気だぜ。」
カゼハがにやりと笑い、仲間たちは氷の精霊王が待つ山脈へと向かって歩き始めた。
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◆◇ 次回『薬草の先生、フィーナの奮闘!』




