第47話『ルークの傷とフィーナの決意』
◆◇ 1. 静かな森の休息
「ここなら……ひとまず安全かな。」
ルークが洞窟を出てしばらく進んだところに、小さな森の空き地があった。フィーナは周囲に危険がないか確認し、ルークを木の根元に座らせた。
「ルーク、ちょっと見せて。」
フィーナが優しく声をかけると、ルークは苦笑しながら右腕の包帯を緩めた。
「ひどい腫れだね……まだ熱もあるし。」
「まぁな。でも……大丈夫だ。」
ルークは無理に笑ってみせるが、その額には汗がにじんでいる。
「……無理しないでってば。」
フィーナはルークの腕に魔法を込めながら、ゆっくりと薬草を当てた。
「……ごめんな、フィーナ。」
「なんで謝るの?」
「……お前を守るって言ったのに、結局こうなっちまって。」
「バカじゃないの?」
思わずフィーナの声が強くなった。
「ルークが助けてくれたから、わたしは無事だったんだよ。……それに、ルークがいなくなったら、わたし……」
言葉が震えて、最後まで声が出なかった。
「……大丈夫だ。オレは、どんなことがあってもお前を守るから。」
ルークがフィーナの手をぎゅっと握る。
「……ルーク……」
「だから、泣くなよ。ほら、オレ様のカッコいい顔でも見て元気出せ!」
突然、カゼハが割り込んできた。
「カゼハ……!」
「なんだよ、ルークがしんみりし過ぎだから、空気変えてやったんだよ。」
カゼハはそっぽを向きながら、自分の尻尾でフィーナの顔をくすぐった。
「ちょ、くすぐったいよ!」
「へへっ、元気出たか?」
フィーナは、涙が笑顔に変わるのを感じた。
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◆◇ 2. フィーナの奮闘とカゼハの気遣い
その夜、ルークが眠りにつくと、フィーナは小さな鍋を取り出した。
「……何してんだ?」
カゼハが眠そうな目をこすりながら、フィーナに声をかけた。
「薬を作ってるの。ルークの傷、できるだけ早く治してあげたいから。」
フィーナは森で集めた薬草を丁寧に刻み、煮詰め始めた。
「ったく……フィーナ、お前も寝とけよ。」
「大丈夫。これくらい平気だから。」
カゼハは少し悩んだ様子だったが、やがてフィーナの隣に座った。
「……なら、オレ様が火をおこしてやるよ。」
「カゼハ……ありがとう。」
「ふん、礼ならルークが起きたら言えよ。」
カゼハはぶっきらぼうに言いながらも、ふんわりとした風の魔法で焚き火の火加減を調整してくれた。
「……ほんとに優しいんだから。」
「はぁ!? 誰が優しいって?」
「ううん、なんでもない。」
フィーナはクスリと笑い、再び薬草作りに集中した。
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◆◇ 3. 朝の目覚めと新たな決意
翌朝——
「……うぅん……」
ルークが目を覚まし、痛む腕をそっと押さえた。
「ルーク、大丈夫!?」
「……あぁ、なんか……すごく楽になった。」
ルークが腕を動かすと、腫れはだいぶ引いていた。
「これ……フィーナが夜通し作った薬のおかげだぜ。」
カゼハが得意げに言う。
「……フィーナ、ありがとう。」
ルークはフィーナの手を取り、真剣な目で見つめた。
「……これからは、無理せず俺に頼れ。お前は……大事な仲間なんだから。」
「うん……!」
フィーナは目を輝かせながら、力強く頷いた。
(今度こそ……わたしがルークを守るんだから!)
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◆◇ 4. 新たな旅立ち 「さぁ、次はどこへ行く?」
「氷の精霊王がいる場所を目指そう。」
ルークはしっかりと立ち上がり、フィーナの肩を軽く叩いた。
「フィーナ、ありがとな。」
「……うん!」
フィーナはルークの背中を見つめながら、胸の奥で誓った。
(絶対に……みんなで無事に帰るんだ!)
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◆◇ 次回『雪に響く氷の声! 精霊王が眠る氷壁の迷宮』




