第43話『灼熱の洞窟! 火炎の番人フレイムホーン登場!』
◆◇ 1. 炎の洞窟の奥へ
「……ここが灼熱の洞窟の中……」
ルークが静かに剣の柄を握りしめる。
洞窟の内部は、まるで巨大な溶鉱炉の中にいるように熱気が渦巻いていた。壁は溶けた溶岩が冷えて黒く固まっており、その隙間から時折、赤く光るマグマが顔を覗かせていた。
地面には岩の割れ目から立ち上る蒸気が漂い、空気は重く、灼熱の熱気が肌を突き刺すようだった。
「うぅぅ……暑い……」
フィーナは額の汗をぬぐい、息を整えようとしたが、熱気が喉にまとわりつき、まともに呼吸さえままならなかった。
「大丈夫か?」
「う、うん……でも、立ってるだけで汗が……」
「これでも、まだ洞窟の入り口付近だ。先に行くほど、もっと暑くなるだろう。」
「……わたし、枯れちゃうかも……」
フィーナは思わず腕を見下ろす。自分が“薬草”として生まれた存在であることが、こんな時に改めて思い知らされる。
「弱音を吐くな。」
ルークはフィーナの頭を軽く叩き、前に進み出した。
「俺たちは“火の羽飾り”を手に入れなきゃならないんだ。お前が無事に帰るためにもな。」
「……うん。」
ルークの言葉が、胸の奥にじんわりと響いた。
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◆◇ 2. 灼熱の魔法陣
しばらく進むと、洞窟の奥に不自然に整った空間が広がっていた。
「……なんか、他の場所と雰囲気が違うね。」
「気をつけろ……」
ルークが警戒しながら周囲を見渡す。
壁は溶岩が冷えて固まった黒い岩でできていたが、その中央には円形の床が広がり、そこには燃え立つような赤い文様が刻まれていた。
「なにこれ……?」
「……魔法陣だな。」
ルークが魔法陣に目を凝らした。
炎のように波打つ紋様は中心に向かって渦を巻いており、まるで何かを呼び起こす儀式の痕跡のようだった。
「でも、なんか変じゃない?」フィーナが魔法陣の外側を指差した。
「……崩れてる。」
魔法陣の外縁には、所々岩が欠け、模様が繋がっていない部分があった。
「これって……壊れかけてるの?」
「いや、逆だ。」
ルークの目が険しくなる。
「これは“修復中”だ。魔法陣は、完成すればとてつもない力を解き放つ。途中だからこそ、不安定で危険なんだ。」
「……どうしよう?」
「どのみち避けて通るわけにはいかない。試練のためには、ここを越えないと。」
「ルーク……でも、もし何か出てきたら……」
「そのときは……俺が守る。」
ルークは剣を構え、慎重に魔法陣の近くへと歩を進めた。
「……よし、俺が調べる。お前たちは後ろに下がってろ。」
「わかった……」
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「……触れるぞ。」
ルークは剣の先をそっと魔法陣にかざした。
「——!!」
次の瞬間——
ゴゴゴゴゴゴ……!!!
魔法陣の紋様が突然光を帯び、赤い炎が弾けるように吹き上がった。
「わぁぁっ!?」
「後ろに下がれ!!」
轟音とともに、壁の隙間から火花が飛び散り、岩が崩れてくる。
「うわっ、危ない!!」
フィーナがとっさにルークの腕を引っ張り、二人は魔法陣から距離を取った。
それと同時に、魔法陣の中心が赤く燃え上がり、熱気が身体に突き刺さるほどに強くなった。
「これって……何が起きてるの!?」
「……召喚だ。」
「召喚?」
「何かが……“番人”が、呼び出される!」
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◆◇ 3. 火炎の番人・フレイムホーン登場
「ギャアアァァァァァ!!!!」
炎の壁が突然膨れ上がり、巨大な魔物が姿を現した。
地面に燃え盛る爪痕を残し、咆哮が洞窟全体に響き渡る。
「な、なにあれ……!!?」
その姿は、真っ赤な鬣と燃え上がる角を持つ巨大な獣——火炎の番人・フレイムホーンだった。
真紅に燃え上がる毛並みから立ち上る炎が、周囲の空気すら歪ませる。
「ゴォォォォォ!!!」
その咆哮と同時に、洞窟の岩壁が崩れ、マグマの筋が一層激しく流れ始めた。
「……こいつが“火炎の番人”か。」
ルークは剣を構え、フィーナとカゼハを見た。
「フィーナ、カゼハ……お前たちは俺の指示に従え。」
「わかった!」
「任せろ!」
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◆◇次回『燃え上がる決意! フィーナの覚悟と共闘!』




