第38話『炎に備えて! 煙幕とカゼハのいたずら!?』
◆◇ 1. 炎の地に向けての準備
「……さて、次の旅の準備を始めるか。」
風の遺跡から戻り、フィーナとルークは街の宿に部屋を借りていた。
「次の場所は“炎の地”だもんね……あそこ、かなり危険なんだよね?」
「そうだ。灼熱の空気で呼吸すら苦しいらしい。普通の薬や道具じゃ対応できないだろうな。」
「ルーク、今回はどんな薬を作るの?」
「火傷の治療薬が一番重要だな。あとは煙幕も補充しておく。」
「煙幕って……あの、ドカーンって煙が出るやつ?」
「……そんな乱暴な道具じゃない。」
「でも、よく逃げるのに使ってるし、ドカーンってなってるじゃん?」
「……おい。」
「ふふっ、ごめんごめん!」
---
◆◇ 2. ルークの薬作りと材料集め
「さて、材料を出してくれ。」
「えっと、これと、これと……あ、こっちも?」
フィーナはルークに頼まれた材料を次々とテーブルの上に並べていった。
「……意外とちゃんとできるんだな。」
「なにそれ! 私だってちゃんとできるもん!」
「じゃあ、この薬草、細かく刻んでくれ。厚さは1ミリ以下だ。」
「えぇっ!? 細かすぎない!?」
「大事な作業だからな。頼んだぞ。」
「む、むぅ……」
---
◆◇ 3. 火傷の治療薬の調合
「よし……まずは、**《火蓮草》**だな。」
ルークは薄い赤色の乾燥した葉を取り出し、細かく刻み始めた。
「これ、なんの薬草?」
「火蓮草は、炎の熱に耐える成分がある。肌に塗ることで、炎の刺激から守ってくれるんだ。」
「へぇぇ……」
「次は**《水晶花の露》**。」
ルークは小瓶から透明な液体を慎重に垂らした。
「この花の露は、冷却効果が高い。火傷の炎症を抑えて、皮膚の回復を早める。」
「えっ、それってすごく便利なんじゃ……?」
「……ただし、花の露は温度に弱くて、すぐに蒸発する。だから、最後に**《霧苔》**で仕上げる。」
ルークが取り出したのは、しっとりした深緑色の苔だった。
「この苔は、潤い成分が豊富なんだ。炎の地の乾燥から肌を守るのに最適だ。」
「へぇ……!」
「火傷の薬はこれで完成だな。」
「すごいね、ルーク……!」
「……まぁな。」
照れ臭そうにルークが視線をそらすと、フィーナはくすっと笑った。
---
◆◇ 4. 煙幕の準備
「次は煙幕だな。」
「これって、どんな材料で作るの?」
「基本は**《白煙草》**。乾燥させると、一気に煙が広がる性質があるんだ。」
「へぇ〜、あのもくもくの正体ってこれなんだ!」
「ただし、白煙草だけだと広がりが不十分だから、**《火の粉石》**を混ぜて拡散力を上げる。」
「それって、ちょっと危なくない?」
「使い方を間違えなければ問題ない。」
「……ルーク、いつもすごいの作ってるんだね……。」
---
◆◇ 5. カゼハの“いたずら”発動!?
「なぁなぁ、ルーク。」
「ん?」
カゼハがルークの横にちょこんと座り、じーっと調合の様子を眺めていた。
「それ、ボクもやってみたい。」
「……お前に薬が作れるわけがないだろ。」
「そんなのやってみなきゃわからないだろ!」
「お前が触ったら爆発する。」
「しねぇよ!!」
ムッとしたカゼハは、ルークが背を向けた隙に、テーブルの上にあった火の粉石をちょいっと前足で転がした。
ボンッ!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
部屋中が真っ白な煙に包まれた。
「カゼハァァァァァ!!!」
「な、なんだよ!! ボクは何もしてない!!」
「嘘つけ!!」
---
◆◇ 6. カゼハの“謝罪”と仲直り
「ごめんな……ルーク。」
「……ったく。次から絶対触るな。」
「わかったよ……。」
カゼハが耳をしょんぼりと垂らしたのを見て、ルークは小さくため息をついた。
「……けど、お前が混ぜた分、意外と煙の広がりが良くなってるな。」
「へっ? マジで?」
「まぁ、偶然だろうけどな。」
「えへへ、すごいかも!」
「……次は触るなよ。」
「はーい。」
---
◆◇ 7. 旅立ちの夜
「これで準備は整ったな。」
「うん、これで炎の地に行っても大丈夫だよね!」
「……油断するなよ。」
「わかってる。でも、ルークとカゼハが一緒なら……大丈夫な気がする。」
「……お前が無事なら、まぁ……その、悪くないしな。」
「カゼハ、素直に“心配してる”って言えばいいのに。」
「なっ!? 言うわけねぇだろ!!」
「ふふっ……」
窓の外には、明るく輝く星が瞬いていた。
「行こう、ルーク、カゼハ。次は“炎の地”へ!」
「……あぁ。」
「ついてってやるよ、まったく……」
---
◆◇ 次回:『灼熱の地! 火の精霊王が待つ場所へ』




