第37話『風狐カゼハの登場! さらなる旅の仲間』
◆◇ 1. 精霊王からの贈り物
「さて、最後にもう一つ。」
風の羽衣を受け取った直後、エアリエルが再びフィーナたちを見つめた。
「お前たちの次の旅は、さらなる困難が待ち受けている。」
「えっ……?」
「これから行く“炎の地”は、容赦のない熱と灼熱の嵐が吹き荒れる場所。強力な力で守らねば、いずれ命を落とすことになる。」
「そ、そんなに危険なの……?」
「……だが、それを助ける存在がいる。」
エアリエルが手をかざすと、祭壇の隣にある石の円環が音を立てて回転し始めた。
ゴゴゴゴ……ッ!!
「な、なに……!?」
フィーナが思わず身を引くと、緑がかった風の光が円環の中心から吹き出し、その中に一匹の狐が現れた。
狐は薄い白の毛並みを持ち、耳の先や尻尾の毛がうっすらと青く染まっていた。
「……お?」
「き、狐!? しかも喋った!?」
「ふむ……。こいつの名はカゼハ。」
「カゼハ……?」
「こやつは、風の精霊たちの加護を受け、長い間この地を守ってきた。フィーナ、ルーク。お前たちの旅には、カゼハが必要になるだろう。」
「必要って……どうして?」
「“炎の地”では、普通の者は風を感じ取ることはできない。だが、カゼハならば……灼熱の風の流れすら見抜くことができる。」
「す、すごい……!」
「ただし——」
エアリエルがカゼハに視線を向ける。
「カゼハは気まぐれな性格だ。お前たちが頼るに値する者かどうか……彼自身が判断するだろう。」
「判断って……?」
「まぁ……とりあえずついてってやるけどさ。」
カゼハは前足で耳を掻き、少し気だるそうな目でフィーナを見上げた。
「ボクが気に入らなかったら、どっか行くかもな。」
「えぇぇ!? そんなの困るよ!!」
「……ふん、だからって頼り切るなよ?」
「えぇぇぇぇぇ!? 」
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◆◇ 2. カゼハの“契約”
「カゼハ。行くぞ。」
「……はいはい。」
エアリエルがカゼハの頭に手をかざすと、カゼハの額に風の紋様が浮かび上がった。
「この印は、シルヴィスの腕輪の力を通じて、お前たちの呼びかけに応じるための契約だ。」
「……へぇ。これでボクは、フィーナが“助けて”って言ったら来なきゃいけないの?」
「……そ、そうみたいだね。」
「まぁいいさ。面白そうだしな。」
そう言って、カゼハはフィーナの肩に飛び乗った。
「わわっ!? 肩に乗るの!?」
「ここが落ち着くんだよ。邪魔なら降りてやるから言えよ。」
「う、ううん……大丈夫。」
少しぎこちなく微笑むフィーナに、カゼハは小さく「……ふん。」と鼻を鳴らした。
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◆◇ 3. 次なる旅へ
「では、フィーナ、ルーク。次の旅に備えてしっかりと休むといい。」
「うん、ありがとう、エアリエル。」
「お前たちの旅が、風と共にあらんことを。」
エアリエルが静かに手を掲げると、再び風が吹き、光の粒がフィーナたちの周囲に舞い上がった。
「行こう、フィーナ。」
「うん!」
フィーナとルークは再び旅支度を整え、次の目的地へと歩き出した。
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◆◇ 4. 旅の途中で……カゼハの本音?
「ねぇねぇ、ルーク。」
「なんだ?」
「カゼハって、普段はこのまま肩にいるの?」
「ん。小さいままなら目立たないし、移動も楽だからな。」
「ふぅん……じゃあ、これからはカゼハも仲間だね!」
「ま、まぁ……そんなんじゃねぇけどな。面白そうだから一緒にいるだけだ。」
「……ふふっ。」
「な、何笑ってんだよ!」
「なんか、カゼハって……ちょっと可愛いなぁって思って。」
「は、はぁ!? 何言ってんだよ!?ボクは可愛くなんか……!」
カゼハはあわててフィーナの肩から飛び降りると、耳をピクピクさせながらそっぽを向いた。
「……でも、ま、まぁ……その、困ったら頼ってもいいけどさ。」
「……うん、ありがとね、カゼハ。」
「……ふんっ。」
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◆◇ 次回:『炎に備えて! 煙幕とカゼハのいたずら!?』




