第36話『最後の試練! 風の迷宮に挑め!』
◆◇ 1. 風の迷宮、目に見えぬ罠
「……あと少し!」
フィーナが風の流れを感じ取り、慎重に足を踏み出したその時——
ゴォォォォッ!!
「きゃあっ!? 何これ!?」
突如として、濃い霧が辺り一面に広がった。霧はまるで壁のように立ちはだかり、目の前の風の流れが完全に消え去ってしまった。
「……これは、“風の迷宮”か。」
「ルーク、どうしよう……? 風の流れが……わからないよ……」
「……ここが正念場だな。」
ルークは険しい顔で霧の向こうを見つめた。
「でも……本当に何も見えないんだよ……」
「落ち着け。お前は“風の声”が聞こえたはずだ。」
「……でも、それが消えちゃったの。」
「大丈夫だ、フィーナ。風が完全に消えたわけじゃない。」
「え……?」
「この霧……確かに風の流れは隠されてるが、わずかな風の動きは残っている。」
「そんなの……感じ取れるの?」
「お前なら、できるさ。」
ルークはそう言いながら、そっとフィーナの肩に手を置いた。
「今まで何度も“見えないもの”を見つけただろ? きっと大丈夫だ。」
「……うん。」
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◆◇ 2. 風の声を感じろ
フィーナは目を閉じ、深く息を吸った。
(……風の声……風の声……)
しかし、霧の中には風の流れは感じられない。
「……ダメだよ。全然わからない……」
「なら……目で探すのはやめて、体で感じろ。」
「え?」
「頬に触れる風、耳に響く音、髪に絡む空気——お前なら気づけるはずだ。」
「……体で……?」
フィーナはもう一度目を閉じ、指先をゆっくりと広げた。
──頬に、ふわりと触れる、かすかな風。
──髪の先を揺らす、細く弱い空気の流れ。
──指先に感じる、冷たく鋭い風の痺れ。
「……ある……!」
フィーナが目を見開いた。
「感じた……風の流れが!」
「やったな。」
「でも……まだ微かにしかわからないの。これじゃあ……」
「……なら、俺が後ろから風の動きを教える。フィーナは、自分の感覚を信じて進め。」
「ルーク……うん、わかった!」
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◆◇ 3. 刃の風、そしてルークの支え
「こっち……!」
「よし、進め!」
フィーナが風の流れを感じ取り、慎重に足を踏み出す。
シュバァァァァッ!!
「きゃっ!?」
突如、霧の中から風の刃が襲いかかる。
「フィーナ、伏せろ!!」
「えっ!? わわっ!?」
ルークがフィーナの腕を引き、寸前で風の刃を避ける。
「くっ……こんなのが続くのか……?」
「……どうするの、ルーク?」
「……お前は風の流れを探せ。俺は……その間、罠をかわしてみせる。」
「……!」
ルークは霧の向こうから吹き付ける音に耳をすませた。
「右からくるぞ!」
「う、うん!」
「次は左だ!」
「はい!」
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◆◇ 4. 試練の突破
「あと少し……この先に出口が……!」
「気をつけろ、フィーナ。最後の突風が来るぞ!」
「……わかってる!」
フィーナは目を閉じ、風の流れを全身で感じる。
──右から吹く風が、次第に強くなる。
──左から吹く風が、細く絡むように流れていく。
──正面の風が一瞬止まり、突風が吹き抜ける——
「……今だ!!」
フィーナは駆け出した。
ゴォォォォッ!!
突風が吹き荒れる中、フィーナは無意識に体を捻り、ギリギリで風の渦をかわした。
「やった……!?」
「やったぞ、フィーナ!!」
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◆◇ 5. 風の羽衣、授かる
「……見事だ。」
霧が晴れ、再びエアリエルが姿を現した。
「これが、“風の羽衣”だ。」
エアリエルが掲げた手のひらから、淡い青緑色の布がふわりと宙を舞った。
「……わぁ、すごく軽い!」
「その羽衣は、“風の流れを読む力”を持つ。身に纏えば、風の声を聞き、動きを察することができる。」
「さらに、寒さから身を守る効果もある。次の旅の道中、きっと役立つだろう。」
「本当に……ありがとう、エアリエル!」
「感謝するのはまだ早い。」
エアリエルがフィーナとルークを見つめる。
「お前たちの旅は、まだ始まったばかり。風はいつもお前たちを見守っている——それを忘れるな。」
「うん……絶対に忘れない!」
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◆◇ 次回:『風狐カゼハの登場! さらなる旅の仲間』




