第3話『捕まる!? 逃げる!? 薬草少女、大ピンチ!』
◆◇1. 目の前の薬師、手にはナイフ…!?
(やばいやばいやばいやばい!!!!)
わたしの目の前に立っているのは——さっきまでわたしを引っこ抜こうとしていた、あの薬師!!彼の表情は冷静そのものだが、その眼差しには強い好奇心が宿っている。
光が彼の手元を照らす。そこには、キラリと光るナイフ……!!刃先は細く鋭く、まさに薬草を丁寧に採取するための専用道具だ。
(ちょ、待って!? え、これって わたしの葉っぱ切る気!!??)
(いや、もう擬人化したんですけど!? これは人間の体なんですけど!?)
ゾクッと、わたしの首元を冷たい汗が伝う。風が吹き抜け、濡れた肌に触れると、今まで感じたことのない寒気がする。まだ人間の体に慣れていないというのに、これ以上の危機はない。
薬師の青年はわたしをじっと見つめ、ゆっくりとナイフを持ち上げた。太陽の光を反射して、その刃がさらに鋭く輝く。まるで儀式の道具のような佇まいだ。
そのまま薬師の青年は静かに言った。
「……君は、一体何者だ?」
静かに発せられた言葉が、森の奥に響く。鳥のさえずりも止み、風の音だけが微かに聞こえる緊張の瞬間。
(どうしよう……下手に答えたらやばい!?)
頭の中で様々な可能性が駆け巡る。正体を明かす?嘘をつく?黙ったまま?どの選択肢も良い結果をもたらしそうにない。
薬師の青い瞳がわたしを見つめる。まるで魂の奥まで見透かされているような気がした。
◆◇2. 逃げるか、答えるか!?
「……無言か」
薬師の青年が、すっとわたしに近づく。彼の足音は驚くほど静かで、まるで森の一部のようだ。専門家として野生の植物を傷つけないように身につけた歩き方なのだろう。
(待って待って待って!! やばくない!? 逃げる!? いやでも、まだ足がうまく動かない……!!)
必死に脳に命令を送るが、新しい人間の体はまだうまく反応してくれない。足はガクガクと震え、膝が笑ってしまいそうだ。地面を掴むように手を伸ばしても、バランスを取るのが精一杯。
「ふむ」
さらに近づく薬師。彼の白いローブが風に揺れ、その背後から他の二人も近づいてくるのが見える。老学者は興味深そうに首を傾げ、冒険者の男は警戒するように手を武器の柄に置いている。
「……まさかとは思うが、君はエルリーフではないだろうな?」
(ギクッ!!!!)
その言葉に、全身の血が凍るような衝撃が走る。
(ま、まじで!? なんで分かるの!? わたし、もう人間の姿してるよね!? なんで分かるの!!??)
内心で大混乱しているが、冷静を装う……が、出てこない!!顔が引きつり、体が微かに震え始める。それは恐怖なのか、新しい体の不調なのか、自分でもわからない。
薬師はじっとわたしを見つめ、その瞳に閃くものがある。まるで謎解きをしている科学者のような鋭い観察眼だ。
「まぁいい、まずは、ちょっと調べさせてもらおうか」
——ナイフを持ったまま、さらに一歩近づいてきた。その刃が太陽の光を反射して、わたしの目を一瞬くらませる。
(やばばばばばばばば!!!!!!!!)
後ろに下がろうとするも、背中が木に当たって逃げ場がない。薬師の視線から逃れられず、全身が緊張で硬直してしまう。
◆◇3. とにかく逃げる!! 逃げろ薬草少女!
(ダメだ!! これは!! 絶対にやばい!!!)
頭の中の警報が、最大音量で鳴り響く。足はまだうまく動かないが、このまま捕まるわけにはいかない!!!今捕まれば、ナイフでどこかを切り取られるかもしれない。それとも全身を研究材料にされるか?どちらにしても、想像するだけで恐ろしい。
そのとき、体内から何かが湧き上がる感覚。まるで根っこがグングン伸びるときのような、エネルギーの奔流。
「ぎゃあああああ!! 近づかないでええええ!!!」
わたしは勢いよく後ろに飛び退いた。木の幹を乗り越え、驚くべき反射神経で着地する。
(って、え!? 立てた!? ちゃんとバランス取れてる!?)
驚きながらも、体が自然と動くのを感じる。人間の体ながらも、どこか植物的な柔軟性と、地面を捉える安定感がある。恐怖のあまり、潜在的な能力が引き出されたのかもしれない。
何かが背中の中で「走れ!」と叫んでいる気がする。なら、やることは一つ——!!
「ひゃあああああ!!!」
わたしは全力で森の奥へと走り出した。足がもつれそうになりながらも、何とかバランスを保ちながら走る。後ろからは薬師たちの驚きの声と、追いかけてくる足音が聞こえる。
「待て!話を聞かせてくれ!」
「おい、あの子を追え!普通の森の住人じゃない!」
「あの髪の色、あの動き……通常ではあり得ない……」
木々の間を縫うように走り、時には低い枝の下をくぐり抜け、時には倒木を飛び越える。草だった頃の記憶が、森での移動に役立っているようだ。地面の起伏や、木の根の位置を直感的に把握できる。
◆◇4. 逃げた先で……?
何も考えずに走り続けた。もう、絶対に捕まりたくない。恐怖と生存本能だけが、わたしの足を動かしている。
息が切れ、汗が全身を伝い落ちる。これも人間の体になって初めて経験する感覚だ。草だった頃は汗をかくなんてことはなかった。
(でも、どこまで逃げればいいの!? どこまで行けば安全なの!?)
この森の地理もわからないまま、ただがむしゃらに逃げ続ける。木々が少し開けた場所に出たとき——
「うわぁぁぁぁ!!!!」
ドンッ!!!
何かにぶつかって、思いっきり転んだ。硬いものに胸から激突し、息が一瞬止まる。地面に倒れ込み、頭がくらくらする。
痛みに顔をしかめながら、ゆっくりと顔を上げる。見上げると、そこには見知らぬ誰かがいた。
「おや? こんな森の中に女の子とは珍しい。」
静かにわたしを見下ろす、美しい白衣を着た人物。長い銀髪が風に揺れ、神秘的な雰囲気を醸し出している。その白衣は薬師のものとは少し違い、より洗練されていて、端には不思議な紋様が刺繍されている。
その人物は穏やかな微笑みを浮かべながら、わたしを興味深そうに観察している。
「……ふむ、面白い匂いがするねぇ。」
その声は優しいのに、どこか鋭い知性を感じさせる。
(え……!? この人、誰!?)
追手から逃げたと思ったら、また別の危険な相手に出くわしてしまったのか?それとも、この人は味方になってくれるのか?判断がつかない。
◆◇5. 新たな危機……!?
立ち上がろうとするけど、足がまだふらついている。長時間走った疲労と、衝突の衝撃で、体が思うように動かない。
(まずい!! まだ逃げられない!?)
白衣の人物が、興味深そうに覗き込んでくる。その瞳は琥珀色で、まるで森の奥深くを見通すような鋭さがある。
「さて……君は何者かな?」
またもや同じ質問。しかし、この人物の口調には薬師の青年とは違う、何か不思議な魅力がある。まるで全てを受け入れてくれるような安心感。
(うぅぅぅぅぅぅ!! また聞かれた!!!!)
正直に答えるべきか、嘘をつくべきか。背後からは追手の気配も感じる。逃げ場はない。
そして——
「ん? なんだか……君の髪の色、妙にエルリーフの色に似てるね。」
その言葉に、わたしの全身に電流が走る。
(いやぁぁぁぁぁ!! またバレるぅぅぅぅ!!!!???)
しかし、白衣の人物の表情には敵意は見えない。むしろ、純粋な好奇心と優しさが混ざったような、不思議な表情だ。
「それに、その走り方……普通の人間とは少し違うようだね。」
白衣の人物が静かに微笑む。
「私はリリア。この森の奥に住む植物研究家よ。もしよかったら……」
そこまで言ったとき、森の向こうから声が聞こえてきた。
「あっちだ!あの白い服の子を見なかったか?」
薬師たちの声だ。逃げるか、この人物を信じるか——選択の時が来た。
◆◇次回「薬草少女、どっちを信じる!? 逃亡劇に新たな展開!」
薬師たちから逃れたエルリーフは、謎の植物研究家リリアと出会う。果たして彼女は味方なのか、それとも新たな危機なのか?そして、人間の姿を得たエルリーフの秘められた能力とは?変化し続ける運命の物語は次回へ続く!




