第26話『追跡者との接触!? 王都の陰謀が動き出す!』
◆◇ 1. 逃げ切った……?
「はぁ……はぁ……」
「……大丈夫か?」
暗い路地の隅に身を潜め、ルークとフィーナは息を整えていた。白い煙が漂っていたおかげで、追手たちの姿は見えない。
「も、もう無理……もう走れない……」
「お前……本当に体力ないな。」
「ルークが速すぎるんだよぉ……」
フィーナはぐったりと地面に座り込む。ルークは警戒しながらも、そっと辺りの様子をうかがった。
「……煙が晴れたら、やつらはまた動き出すだろう。もう少し距離を取るぞ。」
「えぇぇぇ……」
「立て。」
「うぅ……」
半ば強引に立ち上がらせられたフィーナは、ルークに引かれながら再び路地を進む。先ほどよりもさらに狭く暗い通りを抜け、ようやく安全そうな場所に出た。
「……ここなら、しばらくは大丈夫だろう。」
「も、もう動きたくないぃぃ……」
フィーナはへなへなと膝をつき、顔を伏せる。
「……少しだけ休め。」
「うぅ……ルーク、意外と優しい……」
「……」
ルークは答えず、じっと辺りを見回した。
(妙だ……。あの追手、俺たちの動きにやけに詳しかった……)
ルークは考え込む。
(もしかして、俺たちの中に“内通者”がいるのか……?)
「……ルーク?」
フィーナが心配そうに覗き込んだ。ルークは軽く首を振り、口を開いた。
「何でもない。」
「ほんとに? ねぇ……今日はもう大人しく宿に戻らない?」
「……いや。」
「えぇぇぇぇ……」
「“影の手”の奴らは、俺たちの宿の場所も把握している可能性が高い。夜の間に急襲される危険がある。」
「じゃあ、どうするの?」
「……安全な場所を探して泊まる。それまでに、少し情報を集める。」
「えぇぇぇ……また歩くの……?」
「……歩け。」
「むぅぅぅ……」
ルークはフィーナを立ち上がらせ、再び歩き出した。
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◆◇ 2. 接触する“追跡者”
しばらく進んだ先——
「……ルーク!」
「静かにしろ。」
ルークはフィーナの腕を引き、急いで壁際に身を隠す。すぐ近くの通りには、数人のフードを被った男たちが立ち話をしていた。
「間違いない。やつらだ。」
「……どうするの?」
「……奴らの動きを確認する。お前はここで待っていろ。」
「えぇぇぇ!? いやだよ! ルークだけ行くなんて危ないし!」
「黙れ。お前がいると目立つ。」
「そ、そんな……」
フィーナが抗議しようとしたそのとき——
「……ん?」
追手の一人が、まっすぐ彼らの隠れている場所を見た。
「……やばっ!!」
「走れ!」
ルークは即座にフィーナの腕を掴み、再び路地を駆け出した。
「おい! いたぞ!」
「捕まえろ!」
黒いフードの男たちが、一斉に駆け出した。
「ルークぅぅぅ!!! また全力疾走ぉぉぉ!?!?」
「黙って走れ!」
「ひぃぃぃ!!!」
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◆◇ 3. 迫る影の手——接触
どれだけ走っただろうか。ルークとフィーナはようやく人気のない路地に逃げ込んだ。
「はぁ……はぁ……ま、また全力で走ったよぉ……」
「静かにしろ。」
「……!」
ルークは息を整えつつ、背後を睨んだ。すると——
「隠れても無駄だぞ。」
暗闇の中から、低い声が響いた。
ルークが警戒し、剣に手をかける。その前に、黒いフードの男が音もなく姿を現した。
「へぇ……随分としつこいな。」
「そりゃ、逃がすわけにはいかないからな。」
「……俺たちに何の用だ?」
「それは俺が聞きたい。」
「……?」
「なぜ、“例のもの”を持っている?」
「……例のもの?」
「とぼけるな。お前が持っているはずだ。手渡してもらおうか。」
「……」
(“例のもの”? 俺たちが何かを持っている……?)
「持っていない。」
「……本当に?」
「嘘をつく暇があったら、さっさと姿を消したほうがいいぞ。」
「フッ……ならば、力ずくでいただくとしよう。」
フードの男が短剣を抜き、にじり寄ってくる。
「……フィーナ、後ろに下がれ。」
「う、うん……」
「まぁ、逃がす気はないがな。」
その言葉を合図に——
「来い。」
ルークは剣を構え、静かに息を整えた。
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◆◇ 4. ルークの反撃!
「はっ!」
フードの男が短剣を突き出した瞬間、ルークは素早く身をかわし、逆に剣の柄で男の腕を打った。
「ぐっ……!」
「逃げるぞ、フィーナ!」
「う、うん!!」
二人は隙をついて走り出すが——
「逃がすかぁ!!」
フードの男が指を鳴らした瞬間、二人の行く手が塞がれた。さらに、背後からも黒い影が迫ってくる。
「……囲まれた。」
「ど、どうしよう……?」
「大丈夫だ。」
「えっ?」
ルークは小さく笑みを浮かべ、懐から何かを取り出した。
「これは……?」
「俺が作った、煙幕の“改良版”だ。」
「えぇぇ!? そんなの持ってたなら、もっと早く使ってよぉ!」
「……今が最適なタイミングだ。」
次の瞬間——
バンッ!!!
視界が一気に真っ白に包まれた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
「こっちだ、フィーナ!」
「わ、わかったぁぁぁ!!」
二人は煙の中を駆け抜け、王都の闇に消えていった——。
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◆◇(次回『追い詰められた逃亡者! 明かされる“例のもの”の正体!』)




