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第2話『えっ、擬人化!? 逃げる薬草少女の大混乱!』

 ◆◇1. ザブンッ!! 水の中でピンチ!?


「ぎゃああああああ!!!!」


 転生して以来、初めての自由(?)を手にしたわたしは、崖の下の川へと真っ逆さまに突っ込む。風を切る感覚、そして急速に近づいてくる水面。草である自分にとって、これほど恐ろしい状況はなかった。


 水しぶきを上げて湖面に落ちた瞬間、冷たい水が全身を包み込む。地面から引き抜かれた根っこが水中でふわふわと揺れる奇妙な感覚。


(え!? ちょっと!? ま、まずい!! 水の中でどうするんだ!?)


 必死でどうにかしようとするけど、草の体では水中で思うように動けない。鳥のように羽があるわけでもなく、魚のようにヒレがあるわけでもない。ただの植物が水中で自在に動けるはずがないのだ。


(ちょ、待って!? 根っこで泳げるわけない!!)


 水の抵抗と闘いながら、わたしは必死に葉っぱをバタつかせる。しかし、それはまるで赤ちゃんが水中でもがくような、効果のない抵抗でしかなかった。深い湖底へとゆっくりと沈んでいく自分を止められない。


 光が届かなくなれば光合成もできない。そうなると、草である自分は、ゆっくりとエネルギーを失っていくことになる。


(うぅ……このまま沈むの!? そんなのいやぁぁぁぁ!!!)


 絶望が胸を締め付ける。せっかく転生して新しい命を得たのに、こんな形で終わってしまうの?わたしはただ生きていきたいだけなのに…。


 水中の光がだんだん弱まっていく。湖底に沈むにつれて、冷たさが増していく。そして、わたしの意識も徐々に薄れていきはじめた。


 ◆◇2. まさかの擬人化発動!?


 その時――


 ピカッ……!!


 突如として、厳しい光が水中に広がる。まるでわたしの体の内部から何かが爆発するような、強烈なエネルギーの放出。その光は湖全体を照らし、水面にまで届くほどの輝きだった。


(え……なに、この光!?)


 恐怖と共に驚きが込み上げる。これは普通の現象ではない。光の中心はわたし自身。まるで体内から変化していくような奇妙な感覚が全身を包み込む。


 根っこがどんどん縮んでいく。葉っぱは広がりながら、別の形に変形していく。そして、今まで存在しなかった新たな感覚が次々と生まれてくる。柔らかい何かの肌。指先の感覚。足の裏の感触。


 変化が進むにつれて、水中でのわたしの位置が変わっていく。沈みかけていた体が、今度は水面へと浮かび上がっていく。


 そして――


「足!?」


 初めて発した声が、水中で泡となって上昇する。その声に自分でも驚いた。草に声帯なんてないはずなのに、はっきりとした言葉が喉から発せられたのだ。


(う……うそでしょ!? これ、どう見ても人間の体じゃない!?!? )


 水中でも見える自分の手と足。肌の色は淡い緑色で、どこか植物的な質感を残しているようだけど、明らかに人間の体の構造をしている。


 バシャッ!!


 意識が戻ると同時に、本能的に水面に向かって手足をバタつかせた。すると、自然と体が浮き上がり、水面に顔が出る。初めて肺で空気を吸い込む感覚。それは苦しくもあり、新鮮でもあった。


 水面に浮かび上がると、初めて気づいた奇妙な感覚。


(……わたし、水中にいるのに、なんでこんなに体が重いの!?)


 草だった時には感じなかった重力の存在を、今はっきりと感じる。人間の体は水の中でも沈みやすく、浮いていられるには意識的に動作が必要なのだ。


 湖の浅瀬に向かって必死に泳ぎ、ようやく岸にたどり着いた。泥だらけになりながらも、何とか水から上がると、自分の姿を初めてじっくりと確認する。


 浅い緑色のふわふわした髪が肩まで伸び、水滴を含んでいる。手足は細く、しなやかで、肌は人間よりも若干緑がかっている。体を覆っているのは、まるで葉で編まれたような森っぽいワンピース。さらによく見ると、髪の間から小さな若葉のような飾りが生えていて、それが風に揺れている。


(……わたし、人間になっちゃったぁぁぁぁぁ!?!?!?)


 信じられない現実に、頭が混乱する。どうしてこんなことが起きたのか。伝説の薬草「エルリーフ」の未知の能力なのか、それとも転生の際の何らかの特殊な条件があったのか?


 ◆◇3. 初めての二足歩行、大苦戦!


(とにかく立ち上がらないとーー)


 考えている場合ではない。追手がいつ追いついてくるかわからない。この新しい体を使って、早く森の奥深くに逃げ込まなければ。


 そう思って足を動かそうとした瞬間――


「わわっ!? え、なにこれ!? 立つってどうやるの!?!?」


 足を伸ばそうとするものの、力の入れ具合がわからず、足がガクガクと震える。両足でバランスを取ろうとするけど、草だった自分には二足歩行の経験なんてゼロ。重心の取り方もわからない。


 ガクッ!!


 見事に転んだ。膝から崩れ落ち、手のひらが地面に強く打ちつけられる。痛みという新しい感覚が、手のひらから伝わってくる。


(うぅ……まさか、人間になるとバランス取るのがこんなに難しいなんて……!)


 草だった頃は、重力に逆らって直立するなんてことを考えたこともなかった。地面に根を張り、風に揺られる——それが自然だった。でも今は違う。自分の意思で体を支え、動かさなければならない。


 立ち上がろうと頑張るけど、転ぶ。四つん這いになって、ゆっくりと体を起こそうとする。一度は膝立ちになれたものの、体を伸ばそうとした瞬間にバランスを崩す。


 また立とうとするけど、また転ぶ。今度は岸辺の小石につまずき、低い茂みに頭から突っ込んでしまった。


 ドンガラガッシャーーン!!!


(もぉぉ!! なんでこんなにポンコツなのよーー!!)


 何度も何度も挑戦するうちに、少しずつコツがつかめてきた。重心を低く保ち、両足を適度に開き、膝を少し曲げておく。そうすれば、なんとかバランスを取れることがわかった。


「よ、よし…これでなんとか…」


 つかまるものを探しながら、ようやく不安定ながらも立つことができた。膝はまだガクガク震えているけれど、倒れずに立っているだけでも大きな進歩だ。


 ◆◇4. 追手が迫る…!?


 その時、崖の上から声が聞こえてきた。


「なぁ、あの薬草どこにいった?」

「崖の下に落ちたはずだが、姿が見えないな……」


(や、やばい……!! ここで見つかったら……!?)


 わたしは慌てて身を隠そうとするも、新しい体をうまく操れず、ただその場で固まってしまった。木々の影になっている場所にいたのが、唯一の救いだった。


 崖の上から三人の男たちが、湖を見下ろしている。白衣の薬師、冒険者風の男、それに学者らしき老人。彼らの視線はわたしではなく、水面をじっと見ていた。


「まさか、水の中で泳いでいったのか?」

「……そんなことがあるのか?」


 老人が不思議そうに首をかしげる。


「エルリーフは陸生植物だ。水中では長く生きられないはずだが…」


「でも確かにあの光…普通じゃなかったな」と冒険者が言う。


「あの植物には、何か特別な能力があるのかもしれない」


 薬師の青年が何か考え込むように言った。


(……え、なにこれ、ラッキー!? )


 擬人化したことで、まさかの「別の何かになった」と勘違いされる奇跡。彼らはまだ、草が人間になるなんて考えもしていないようだ。この偶然を利用しない手はない。


(ようし、今のうちに逃げ──)


 一歩踏み出そうとした瞬間、足がもつれた。


 バタバタッ!!!


「うわぁぁぁぁ!??」


 ……思いっきり転んだ。しかも、近くの低木を巻き込んで、大きな音を立ててしまった。


(くっ……人間の体、操作むずかしすぎる……!)


 ◆◇5. 絶体絶命!? 目の前に…!


 崖の上から、驚いた声が聞こえる。


「おい、誰かいるぞ……?」


 (やばっっ!!)


 急いで立ち上がろうとするが、体を動かそうとするほど、思うように動かない!泥だらけになった手でなんとか周囲の木につかまり、体を引き起こそうとする。


 けど、ここで捕まるわけにはいかない!エルリーフの正体がバレてしまったら、またあの苦しみを味わうことになる。根っこを引き抜かれる痛み。葉を切り取られる恐怖。


 よし、気合いで立つ!!


 膝に力を入れ、両手で地面を押し、ゆっくりと体を起こしていく。


 ぐらっ……


 足の裏に地面の感触を感じながら、少しずつ体を伸ばしていく。


(よし、よし……立てた!!)


 崖の上から聞こえる足音。彼らが下りてくる音。時間がない。何とか逃げなければ。


 パッと顔を上げた瞬間――


 目の前に、薬師の青年がいた。


(え?????????)


 彼がどうやってこんなに早く崖を下りてきたのか理解できなかった。おそらく冒険者たちが使う何らかの装備か魔法があるのだろう。


 どうしよう。このままだと確実に捕まる。かといって、まだ走れるほど体を操れるようになっていない。


 しかも、その手には……


「採取用のナイフ」が光っていた。細く鋭い刃先が、陽の光に照らされて冷たい輝きを放っている。まさに薬草を丁寧に採取するための専用道具。


(ちょ、待って!? え、まさか、切るつもり!? わたしの葉っぱ、切るつもり!?)


 恐怖で全身が震える。いくら人間の姿になったとはいえ、この青年が持つ鋭い直感で、わたしの正体を見抜かれてしまったのか?


 かつて薬草だった自分の体のどの部分が「薬効のある部位」として切り取られるのか。想像するだけで恐ろしい。


 彼はじっと、こちらを見下ろして、静かに言った。


「……君は、一体何者だ?」


 その声には敵意よりも、強い好奇心が含まれていた。青い瞳がわたしをじっと見つめ、その中には驚きと興味が混じり合っていた。


(やばいやばいやばいやばい!!!!)


 頭の中は真っ白になり、とっさに思いついた言葉が、震える唇から漏れ出た。


「わ、わたしは…ただの…森の…住人…です…」


 ◆◇次回「捕まる!? 逃げる!? 薬草少女、大ピンチ!」


 薬師の鋭い洞察力は、エルリーフの正体を見抜いてしまうのか?新たな体を手に入れたエルリーフの運命は?そして、未知の能力の秘密とは?逃げ惑う薬草少女の冒険は続く!

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