石、拾いに行こっか
自分の趣味がどう思われるかという話です。
昔から石とか昆虫とか虫が好きだった。でも、それは段々と周りの人や自分が成長していくにつれてほとんどの人が興味を失っていった。だけれども、自分だけが未だにそのことに興味を持っていた。
自分も高校生になって周りの人がスターバックスの新作や好きなテレビドラマの話をする中でそれに適当に相槌を打ちながら、この話早く終わらないかなって思ってた。
友達がいないと寂しいし、学校の授業を休んだ時のノートとか体育の授業でペアを組む時とかいろいろと困るからでこの人たちといて楽しいなんて思ったこと別に無かった。
今日も私は自分の趣味をひた隠しにして生きていた。それは多分窮屈で苦しいことだなって思った。でも、きっとそれは仕方ないことである程度割り切ってここまで生きてきた。
そう、今日までは。
下校途中で周りに人がいないかどうか確認してから石を拾ったはずなのに、何故か
「あーあ、その石私もいいなぁって思ってたのになぁ」
そう言った子が出てきて驚いて体がビクッってなった。話を聞いてみるといつも私がここら辺で石を拾っているのを見ていたんだとか。うわ、普通にバレてたんだ。恥ずかしいって思った。
「私も石、見てるの好きなんだよね」
「ほんとに!?」
その後にものすごく早口でこの石はねってすごい長い間語ってしまったけど、引かずに聞いてくれた。
「また明日、会おうね」
ってその子が言ってくれてそんな風に言ってその日は別れた。他校の制服を着ていたから違う高校の子なんだろうなって思った。
後日、好きな石を持って行ってこの色が形がとか話したらその子は黙って話を聞いてくれてうんうんって頷いてくれた。
放課後、私がクラスメイトの人たちと遊びに行かなくなって付き合いが悪くなってから、時々仲間外れにされたり、いじめられたりすることがあった。こんな単純なことで人っていじめるんだって思った。でも、そのことを気にせずに過ごしてた。私にはあの子がいてくれたから。
でも、後日その子が来ない日が続いてもう飽きちゃったのかなって思った。他に友達がいて遊びに行っているのかもしれないし、習い事があるのかもしれないし、何か用事があるのかもしれないしって思った。それでも諦めずに何日か通ってまた会うことが出来た。
「久しぶり」
そう言ってよっ!って感じでその子は手を上げた。
「最近何してたの……?」
「仕事してた」
「バイト……?」
「うーん……実は私…………学生じゃないんだよね。私、社会人なの。コスプレが好き……っていうのとはちょっと違うかな。制服を着るのが好きなの。最近働き始めたから、頻繁に来られなくなって……だからそんな感じだったの」
急な話に少し戸惑って、
「あ、えっと……今までごめんなさい。童顔なんですね」
年上だったんだと思って丁寧語に直した。
「こんな服装して気持ち悪いって思わない……?」
「思わないかなって思います」
「なんで?」
「うーん……そういうファッションなのかなって思うからです」
身だしなみに気を遣っているせいか不快感は無かった。
「君、石好きなんだよね」
「好きです」
「変わった趣味だって言われない?」
「周りに言ってないです」
「ふーん、そうなんだ。私、残念ながら別に石が好きってわけじゃないんだよね」
そう言われてショックだった。
「君と話したかったら話を合わせようって思って……君を見てなんていうんだろう親近感……? を感じて……石が好きって変な趣味だなって思って」
そう言われたけれども、先程と同じく不思議と不快感は無かった。
「段々年齢が上がると制服、似合わなくなってきちゃうんだよね」
そう言ってスカートを摘んで少しヒラヒラさせるお姉さん。それはそうだろうと思う。だけど、
「私、おばさんになってもおばあちゃんになってもずっと石拾うと思います。だから……あなたもずっと制服着ててください……自分がずっと好きな格好しててください」
それは変なのかもしれない。そうなのかもしれないけど、私はこう言った。
「私たちは変じゃないって学校にいるやつらに、家族に、職場の人にいつか知らしめてやるんです」
「……あはは、何それ。やっぱり面白いね、君」
笑われた。やっぱりこういう考え方って変なんだろうなって思う。
「石、拾いに行こっか」
そう言ってくれたから、私はお姉さんについて行った。
*
仕事を辞めてから暇になって夕方出かけた公園で君を見かけた。遠目で見て毎日、同じような場所で一体何を拾っているんだろうって思ってたら、一生懸命石を拾ってた。
明日は話しかけてみようって思った。
自分は女ですが、自分の趣味が女性寄りでは無く、男性寄りだったところから来ていたりする話です。