終わりの修復
別に気にしているわけじゃない。この世界が異世界じゃなくてゲームだって分かった時、ゲームだって気づいた時から頭の片隅にずっとあったから。
ここがゲームの世界だったらこの世界に住んでいるロゼリア達は何だったんだって。
その答えがはっきりしただけのこと、寧ろすっきりしたよ。
マシューは私達に制限をかけたのはこの世界の人達を守る為にって言った。でも話を聞いたら私は全く反対の答えだと思う。私の制限はこの世界の真実を忘れること、マシューの制限は感情を無くしてなにも感じないようにすること。
私達の制限に共通すること、ロゼリア達この世界の人達をNPCだと認識させないこと。
それが少しでも頭にあれば私達は彼女達の普通に接しることができなくなる。死を待ち生き返りを待つ途中のこの場所ですら不安を心配を持たせないようにする為の製作者達の心遣い、私達を守る為の処置だと私は思った。
でも知ってしまった、真実をこの世界のことを。
もし、世界が元に戻りロゼリアと再会したら私は…。
「戻れるよ。」
マシューが嬉しくと悲しくともないなんとも言えない表情でそう言った。
「戻れるって?」
「そりゃシングソングプリンセス、私達がさっきいた世界にさ。」
そう言い彼女は天に指を示す。その先を見ると真っ黒な空が池に張った氷のが割れるように崩れていきそこから澄みきった青い空が顔を出していく。
「どうやら担当の人達がバグを直したみたいだね。これでこの事件は元通りめでたしめでたし。」
「とてもめでたいって顔してないみたいだけど。」
「そりゃそうさ、バクが直ったら私はまた何も思わない何も感じないただのシュバルツの使用人に戻ることになる。こんな顔ももうできなくなる。」
そうだ、マシューは世界が戻ったらシュバルツの使用人、ただの人形に戻るんだ。嬉しいはずはない。
でもそれはシュバルツのせいじゃない、彼は知らないだけ、知ってはいけないだけなんだから。
でも次会った時はもっとマシューの待遇をよくしろって言っておこう。
「でもさ、今はそれでいいんだ。」
「えっ」
「私はさ、元々死ぬ予定だったんだしそれがどんな形であれ今もこうやって生きている。もしかしたら生き返るかもしれないボーナスステージなんだよ。
それだけでも儲けもんだよ。」
「そんなもんかな。」
「そんなもんだよ、人生なんて。それよりも君は大丈夫なの?」
「なにが?」
「さっきも言ったろ、君がこの世界の事を知らない事が制限だった。その制限を破って全てを知ったらどうなるか分からない。尚更世界が戻った後じゃ。」
あー、そうだった。そういえば言ってたなー。
私はだんだんと出てきた光に照らされる身体をじっと見ると両拳をグッと握りしめる。
「大丈夫だよ。」
「?」
「もしこの事を覚えてても忘れても何かあっても私はどうにかなると思う。」
「凄い曖昧な答えだねぇ。」
「でしょ?でも少なくとも何かはないと思うなー?」
「その根拠は?」
私はマシューに向かい指を指した。
「マシュー言ったよね、もしこの世界のこと喋ったら世界や自分の身にも何が起きるか分からないって。でもマシューには何も起こってない。だから何も起こらない。多分!!」
プッ、ハハハハ!!!
マシューは吹き出すように大笑いした。こんな彼女を見るのも勿論始めてだ。
「なにその無理矢理や理論!滅茶苦茶だよ!!でも私は好きだよそれ!」
「このくらいの図太い神経がないと生きていけないのですよ一国の姫の娘は。」
「流石王族とアイドルの二足のわらじをやってるだけある!いや〜最後に大笑いできて良かったよ。
それじゃあさ、また使用人として会った時は優しくしてねアリス様。」
そういうとマシューは瞬きする間もなく私の前から消えた。
世界が元の形に戻っていく。また始まる新たなゲームが。誰かが押したか分からないスタートボタンから始まったゲームが、いつ終わるか分からない長い長いニューゲームがこの真っ青な青い空のように綺麗にまっさらに。





