静かで寂しい帰宅をどうぞ
お城に着きました、ではお気おつけて馬車からお降りください。
ロゼリアの言葉通りに私達は恐る恐る馬車から地上の地に久しぶりに足を踏み入れる。
雲ひとつない青い空を背景にそびえ立つ大きな見覚えのあるお城。
周りの景色も何も変わらない、見慣れた場所、実家のような安心感。
でもそれを上回る違和感が現実となって私達の視覚に訴えかける。
私的には受け入れたくないんだけどここまではっきりと見えちゃったら受け入れるわけにはいかないよね。
「静かだねぇ…。」
「そうですね、まるで時が時間が止まっている見たいです。」
「それはないよナー、ほら雲はちゃんと動いているよ。」
そういいバースは静かに漂っている小さな雲を指さす。
「しかしナース様がおっしゃってることもあらがち間違いではないのかもしれません。
何故からここには…、いや、この国にはもう私達にかいなさそうですし。」
私達が王都に入ってからすぐ感じた違和感、それは静かすぎること。
何度も言ってるように防犯対策の為に私達が乗ってる馬車は庶民が使っていてどこにいても違和感を感じないようにしてある。
だから余程のことがない限り私がこれに乗ってることは気づかれない、つまり騒がれない。そのはずだった。
けど王都のさらに中央にあるお城に向かってるんだから進むにつれて当然人々の声が生活する音が聞こえてくるはず。
でもここにくるまでそれが全くなかった、聞こえるのは馬の足音と私達の声だけ。
会話が途切れると誰かの呼吸音がイヤホンで音楽を聴いてるように大きく感じた。
だから見なくても誰もいないことはなんとなく分かってはいたけどいざその現実は突きつけられると流石にくるなぁ…。
城を守っている憲兵さんも、花や木の手入れをしている植人さんも、馬車や護衛隊を乗せる馬も世話人もだーれもいない。
私達がこの世界に取り残されてるみたいに。
「で、これからどうします?」
ロゼリアが私に聴いた。みんな忘れていると思うけど彼女は私の専属の使用人であると同時に護衛隊隊長、言ってみれば私の部下なのである。
重要な案件が起こった時部下が上司に指示を仰ぐことはごく普通のこと、社会の仕組みなのである。
「どうするって…。」
周りを見渡しても私達以外誰もいない、鳥も飛んでない空は真っ青だ。
「うーん、ここに居ても何も変わらないしとりあえずお城に入って見ようかな。もしかしたら誰かいるかも知れないし。」
「多分、誰もいませんよ。」
「そんな、まだ分からないじゃん!希望を持とうよ希望を!」
「希望は持っているから裏切れた時の心の痛みが強いです。だったら最初から持ってないほうが痛くありません。」
今の彼女は私を使用人としてではなく護衛隊隊長として動いてる。
だから双子ーずが目の前にいてもそんな非情な事を迷いもせずに口に出せる。
つまり今はそれほどの緊急事態ってこと。
「そういうことなのでお城に入りますかアリス様、十分お気おつけてお帰宅を。」





