旅の終わりは別れの始まり
いろいろあったけどバースが戻ってきたことによって私達がこの街にいる必要も理由もなくなった。
そんなわけでこことは名残惜しいけどお別れだ。
お見送りにはこの街の人達が沢山集まってくれた。
私達は別に今から帰るなんて誰もが1言も言っていないのにこんなこんなことになったのは流石田舎、噂話はそれこそ流行り病のように伝わるのが早い。
というかここにこんなに人が居たなんてビックリだよビックリ!
「アリス様、なにからなにまでお世話になりました。」
この街を代表して町長さん夫妻たちが私達に別れの挨拶をする。
奥さんは大きな花束を私に渡すとそれをそくさロゼリアに手渡す。
この瞬間僅か3秒。
「こちらこそお世話になりました。泊まる場所やら身の世話までこっちがお礼を言いたいくらいです。
なのでお礼と言うには心細いですがこの街の援助について城に帰ってからお父…国王様に進言したいと思っています。」
その言葉にここにいた誰もが動揺した、勿論隣にいたロゼリアも。
彼女は私の肩を叩くとみんなに聞こえないように静かに口を開く。
「アリス様、そんな身勝手なこと言ってもいいんですか?どうせ口だけですよね?」
私もそれに答えるようにロゼリアに静かに回答した。
「口だけとか何を失礼な、私だって恩を感じてるんだからこれくらいのことはしないと気がすまないよ。」
「しかし国王様が簡単に首を振ってくれるかどうか…。」
「それは大丈夫だよ。」
そう言うと私は自分の鞄か何枚かの封筒を取り出し彼女に見せた。
「これは…?」
「施設に行った時施設長さんに隔離されてる子供達にお父様…国王に向けて手紙を書いてもらうように頼んだんだ。
流行り病のこと、それにかかって施設で隔離されてること。そこでの暮らしのことを。
私が言うよりも経験者のほうが情に訴えられるからね。
で、手紙を書くとき1つお願いしたんだ。」
「お願い…ですか…?」
「(嘘は書いては駄目だけど少し大げさに書いてくれ、施設の生活は苦しいけどそれはこの街や人のせいじゃなくてお金がないからそうせざる負えないって)ってふうにね。
そうやって書けばお父様は首を振らなきゃいけないよね。
だって遠回りに自分達が支援しないせいで国民が苦しんでるのと同じだから…。」
「アリス様はきっと将来いい国王になれますよ…。」
ロゼリアは呆れながら呟く。
「心からの気遣い大変ありがとうございます。私達この街の住民皆アリス様のますますのご活躍をお祈り申し上げます。」
「心からの気遣いではなく頭を使った戦略ですけどね。」
「ははっ…。」
町長さんは手を差し出すと私も応えるように手を差し伸ばし握手を交わす。
周りからは鳴り止まぬ拍手が起こりそれは私達が馬車で街を出るまで鳴り止まぬことはなかった。
これにてこの街の熱くてしょっぱいプチ旅行はおしまい。
やっと城に帰れる!





