商売人の受難
流石に夕方にもなると灼熱の暑さは歩いてもじんわり汗が出る程度には納まった。
私達はこの街を見渡せる高台に是非にと施設長さんに案内され断りきれずにここいる。
見渡せるといっても小さな建物がちらほら建ってるだけで別に格段特別なものではなかったなんて口に言えるわけはなく…。
「にしても本当にアレでよかったんですか?」
「アレって?」
「アリス様が病が治るって言ったものですよ、アレは今朝私がかき集めたただのモンフワですよ。
私は今もアレが病に聞くとは信用できません。」
「私あたくしは信用してますよ、だってこれはとてもとても美味しゅうございますですし。」
ナースがそのモンフワを両手に抱え食べながら言った。
よっぽど気に入ったんだね…。
「いいんだよそれで、なにも変哲もないモンフワで、むしろ変わってたら意味ないからね。」
「本当にそれで治るんですか?病…、熱中症というものが…?」
「治るっていうかならないように予防、なったらこれ以上重くならないように防ぐというか。」
私は初めてこの病の症状を聞いた時から薄々熱中症だと気づいていた。この地方は日々暑いし症状もだいたい合致してる。
でも医者じゃないので確証は持てなかった。
それでここにきた時の比べ物にならない暑さ、寒い地域からきて暑さに慣れてないバースちゃんがその病にかかる。
そして極めつけはこの街に飲まれてるエンショバが甘いこと、その代わりにしょっぱいモンフワは大人しか食べてないこと。
これで私の中で全て繋がった、子供達は大人に比べて体温調節をするのが下手なこと、そして塩分不足による影響で熱中症になったのだと。
だから私はロゼリアに頼みモンフワをかき集めてもらい、それを施設長に説明し子供達に食べさせるように渡すようにお願いした。
施設長は最初、熱中症なにこれ?と疑問に思っていたがアイドルとしてのアリスではなく王族としてのアリスとして丁寧にお願いしたため断ることはしなかった。
「その熱中症…というのは水分と塩分が失わることが原因なんですよね。」
「そうだよ、ここは暑いから日常的に汗をかく。そこで失われた水分と塩分をここの地方の人達はしょっぱいエンショバを飲むことで補給し知らずしらずのうちに熱中症対策をしてたんだ。
だけどここのエンショバは甘いし、塩分たっぷりのモンフワは大人しか食べてないから子供達は全然対策できてなかった。
そして突然のこの暑さ、熱中症になるのは時間の問題だったんだ。」
「だからあたしにわざわざ地方の中心に戻ってエンショバを手配してこいって言ったんだね…。」
そう汗だくになり息を切らしながらマリアがやってきた。
「あっ、お疲れ〜!」
「お疲れじゃないでしょ…、エンショバを必死な思いで施設に届けて町長さんの家に行ったらここにいるって…、なんでこんなところに…。
てかなんで私がこんなことしなきゃならなかったの…。」
「マリアは日々お店の仕事で仕入れなどをしているので適任かと。」
「そんな簡単な理由で…?」
「物事は思ったよりも簡単に決まるもんですよ。」
「まあまあ、こんなに汗かいてたら熱中症になりますよ、ほらこのしょっぱいエンショバを飲んで対策しましょういたしましょう。」
ナースはこういうといつの間にか用意してあったコップに入っていたエンショバを彼女に渡した。
マリア「ありがとう」と言うととそれを無我夢中にいっきに飲み干すとハッと我に気づき言った。
これ私が持ってきたやつじゃん!!!





