気まずい席はビジネスクラス
「と言うわけさ!」
「うん、それは分かってるよ…、でもねアイドルさん…。」
「凄い楽しみだねナース!」
「私あたくしは毎日エンジョイエブリバディわっしょいですよお姉ちゃん。」
「なんでここに貴族達がいるのかな…!」
マリアは揺れる馬車の中で揺れる心を必死に抑えるように声を振り絞りながら言った。
はっきりいうと今ここの空気は非常に重い。息を吸うたびにネットリとした液体が身体の中にドロドロと入っていくようだ。
「お姉ちゃんと私あたくしは左はバース、右はナースという立派に培った名前がありますありまくります。なので貴族なんて一区切りにしないでください。」
「それにー!アリスちゃんが出かけるって聞いたから私達もついてっていいー?ってお父さんに聞いたらいいよだって!
だからついてきたんだよ?マリアちゃん。」
「勝手に名前を呼んでもらうの辞めてもらえませんか?貴族様。」
「だから私達は貴族じゃな…貴族だけど私はバース!」
「私あたくしはナース、以後お見知り置きを。」
「貴族さんはやっぱり上から目線なんですね。」
「上なら目線?ああ…ナースの喋り方ね!大丈夫気にしなくてもいいよ!昔は普通だったんだけど2年くらい前から今の喋り方に変わって…、でもとくに問題ないしマリアちゃんみたいな庶民だからってわけじゃなくてお父さんやお母さんにもこんな喋り方だから大丈夫だよ!」
「思春期特有の心情信条の変化です。変わるもの変わらないのも失わずに生きていきたいのです。」
「マリアちゃんももう全然平気だよね!」
「うっ…うん…。」
私達の気持ちは知らずに双子ーずはひたすらマイペースに我が道を行っていた。
「ロゼリア、ねえロゼリア…。」
「はい。」
私はマリアと双子ーずに聞こえないように彼女に向かって耳打ちをする。
「この雰囲気どうにかならないの?」
ロゼリアも合わせて私に向かって耳打ちをして返す。
「無理ですね。」
あまりにも秒速な速答だった。
「どうしてよ。」
「ここは彼女達の問題であって私達が口を挟むのはよくありません。」
「でもこの空気の重さはちょっと耐えられない。」
「耐えてください。私達にできることはそれしかありません。」
「そんなぁ…。」
私はたどり着く街に思いを馳せなからこの空気の中をそれから小一時間ほど耐えることになった。





