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この世界で歌えるのは私だけ  作者: 天神
遠くの土地での小さな出来事
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初めてのご当地グルメ

そこはとても広かった、キラびらかで豪華会場、ところ狭しにテーブルが置いてありその上にシャメーラヌの食材を使った郷土料理を中心に豪華な食事が博物館の展示物のように飾ってある。

そこにいるのは男女とは綺麗な衣服に身を包んだ王族貴族の皆さん。

そんなところに私達はやってきた。


「で、私は時間まで何をすればいいの?」


「なにもしなくていいですよ。せいぜいこのエンショバでも飲んでいてください。ここに住んでいる人達が日常的に飲んでいるものです。」


そういうと私に透明で透き通った液体の入ったコップを渡す。

私はそれをなにも疑問ももたず疑いもせず薦めるがままにそれの液体を喉に流し込んだ。


「うっ、しょっぱ!!」


ゲホゲホとむせる私にロゼリアは白いハンカチで私の唇を吹く。


「やはりこうなりましたか。初めて飲む人はだいたいむせるのでやはり。」


やはりじゃないよ、やはりじゃ。

なにその初見殺しの飲み物?

ここの人達はこんな物を日常的に飲んでるの?

文化の違いは身体の違いということなのかな。


「公然の目の前でやるのは失礼に当たるのでこれからは気をつけてくださいね。」


…。


「分かったよ…。それで…、どういうことなの?なにもするなって…?」



「アリス様は今までこういう場所にほとんど出たことがありませんので逆に言うと今この場所にいること自体が貴重な光景になりそれだけで絶大な影響力になります。

そしてそんなアリス様にあわよくば話かけさえすれ…。」


あーーーーー、アリス様だー!!!


その声とともに銀色の髪をなびかせながら私より小柄な二人の少女が駆け寄ってくる。

その姿を見たマリアは顔を曇らせた。


「私、準備がありますので先に裏に回っていますねアイドルさん。」


「う、うん…、よろしく。」


そういい残すとマリアは足速くその場を去っていく。

マリアと入れ代わりにやってきた二人のうち長い髪の少女は私の手を掴むとぶんぶんと揺らした。


「私、アリス様のファンなんです!ライブも行ったこともあるんですよ!」


あれ、これなんか見覚えが…?


「う…うん。ありがとうね。」


「ほらほらお姉ちゃん、アリス様が困っていますよ。大変ですよ外交問題ほら淡々に。」


そう短髪のほうの少女が促すと長髪の少女は「やっちゃった~」と苦笑いをしながら私の手を離した。


「申し訳ありませんもうしませんアリス様、お姉ちゃんは貴方のファン、ファンファーレなので少し興奮しちゃいまして。」


「はぁ…。」


なんか凄い子が来たなぁ…、いや、貴族はああ見えて自分達の土地を守るために責任のある仕事をしてるからこのくらいぶっ飛んでないとやっていけないのかも知れない。

うん、そうだ、そういうことにしとこう。


「ごめんなさいアリス様…。」


長髪の少女はしょんぼりしながら言った。


「いいよいいよ気にしないで、それよりあなた達は?」


「あっ、自己紹介が遅れました!私はバーズ、そして〜!」


「わたしあたくしナーズと申します、いつでもウェルカムどんどんきなさいです。」


「ちょっ、ナー!どこに行かせる気なの!ごめんなさいアリス様、ナーはちょっと変わってて!!」


うん、知ってる。



「そんなナーですけど私達見ての通り双子なんです!」


「そう双子、分かれても別れてもくっつき合う切っても斬れない双子マンホール。」


だから顔も髪の色も似ていたのか、きっと髪の長さが違うのは迷わないようにするための親御さん達の気遣いなんだな。


「私達本当は来るつもりはなかったんですけどアリス様が来るって噂を聞いて居ても立っても居られなくなってお父さんと一緒にゴランダから来ちゃいました!」


「ゴランダ…、どっかできいたことが…。」


「ゴランダはここから真逆の場所にある寒冷地に存在する土地ですよ、私教えましたよね?アリス様。」


「う…うん、勿論知ってるよ…!当たり前じゃん!」


ごめん嘘、全然覚えてない。


「でもそこまでして私に会いに来てくれるなんて嬉しいなぁ。」


「わたしあたくしは特にファンではありませんがお姉ちゃんが行くと言うので心配心拍数バクバクなのでついてきました。」


「そ…そうなんだ、ハハハ…。」



「そんなわけでどんなわけでお姉ちゃんの憧れどの彼の存在でいてあげてくださいアリス様。」


「うん、そうするようになるべく頑張るよ。」





おや、珍しいこともあるもんだ。





後ろからとても聞き覚えがある声が突如として聞こえた。

このまま振り返りたくないけど今さっき憧れの存在になるって言ったばっかだから無視することは許されず…。

ロゼリアは私早く振り向くとそいつに深々と一礼をする。

私は静かにため息をつくと渋々振り返りなるべくこの気持ちを表情にださないよう最新の注意を払いながら口を開いた。


「お久しぶりです、シュバルツ様」


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