湯冷めに気をつけようという話
控室につくと憲兵が言っていた通り温かいお風呂が私達を待っていた。
移動含めまる2日間水浴びすら許されなかった私たとマリアはすぐさま浴槽にダッシュする。
裸の付き合いは無礼講、一時の休息にロゼリアも含め疲れを洗い流す。
で、ここからが本番。私達は仲良くお風呂に入りに汗だくになりながら来たわけじゃない。ちゃんとした目的がある。
入浴が終わるや否やドレスの着付けが始まった。本当は時間に余裕があるように調整していて、さらにロゼリアの華麗な馬車捌きによって予定よりかなり早くここにたどり着いたらしいんだけどなんせお風呂が気持ち良かった。
大きな浴槽に温かいお湯、疲れに疲れまくった私達の身体にこれほど染み渡るものはない。
気づけばかなりの時間極楽に浸っておりその代償に積み上げていた時間が全てチャラ、いやむしろマイナスに傾いた。
なので浴槽から出るとその後は一気に時間との戦いだ。呑気に牛乳を肩に手を当てながら飲んだり浴衣でキャッキャウフフしなから卓球なんてする余裕なんでまんざらないのだ。
一足先に浴槽を出たマリアはタオル1枚のままドレスを持って私を待ち構えていた。
「マリア!服!服着て!!」
「そんな余裕も時間もないよアリスちゃん。商売はどんな時も時間を守らなきゃ始まらないからね。」
さっぱりとした身体にマリアが用意した純白なドレスがマリアによって包まれていく。
やっぱり苦しいけど初めて時よりは少しは…少しは余裕を感じる。
これは私がこの道中で痩せたのか、マリアが直したのは今最後の調整をしている彼女だけが知っている。
「ねえアリスちゃん。」
「ん、なに?」
「この最後の姫を締め終わったら全部私は仕事としての、王族貴族が嫌いなマリアに戻るね、やっぱりこの場所は私には合わないみたい。」
なんでマリアが王族貴族が嫌いなのかわからないし聞こうと思わないけどきっと彼女はここに着いてからはずっと無理してると思う、そしてこれからその嫌いな王族貴族が沢山いるであろう場所に行くんだからその気苦労は更に彼女に伸し掛かるだろう。
だから私はなんも否定しない、マリアの意向を飲むだけだ。
「了解。」
マリアが背中の紐を思いきし引っ張ると私のウエストがぐっと引き締まる。
この瞬間やっぱり苦しかったけど今回は声を出すのを我慢した。
「お疲れ様でした、これでドレスの着付けは終了です、アイドルさん。」
マリアは深々の一礼すると私にあの時の冷たくて痛い視線を向ける。
これはマリアもロゼリアも、そして私のお仕事の時間が始まる合図。
「では私とマリアの着付けが終わり次第会場に向かいます。
…クシュン!」
ねえ、マリア?
なんですか、アイドルさん。
ごめんだけど、ドレスの着付け先にロゼリアからにしてくれない?なんかずっと裸だから…。
はい…。





