とある田舎の夜
「はぁ…。」
明かりすらまともについてない夜の街の片隅で私は1人空を眺めていた。
片隅と言ってもマリアの店の外に出ただけだけど。
都会がうるさいのもこっちの世界でも同じ、夜になっても街には綺羅びやかな灯りがあちこちに輝き人々の賑やかな声がするのがお城にいても聞こえてくる。
だけどここは私のため息と虫の鳴き声しか聞こえない。
同じ夜空なのにお城から見るよりも星が綺麗に感じる。
手を伸ばせば掴めそうだ、お城よりもよっぽど低い位置にいるのになぁ〜。
「な〜にやってるの?アイドルさん!」
「うわぁ!!」
油断しかなかった背後から聞こえたその声に私は思わず声を上げた。
「ハハハッ、やっぱり面白い反応するよねアイドルさんは!!」
「なんだマリアかぁ…、驚かせないでよ…。」
「だって面白いんだもん!」
はいはい、そうですか。
「そんなとこで一人でボケッと立ってるとこんな田舎でも流石に危ないよ、ほらほらそこに座って!」
「ちょちょちょ…!」
マリアは私を背中を押し店の前に設置してあるベンチに誘導する。
言われるがまま座ると息をするようにマリアは私の隣を確保した。
その時の彼女は凄いニコニコしていた。
「今さっき言ったけど女の子が一人で夜の街に出るなんて危ないよ。確かこの前誘拐されたんでしょ?」
「はい、ごめんなさい。でもねたまには一人に静かになりたい時だってあるんだよ。」
「アイドルさんにもそういうこと思うんだ、意外だなぁ。いつもキラキラな世界にいるのに。」
「だから普段は静かにしたいのだよ田舎娘よ。騒がしい世界から抜け出して静かな空間に憩いを求めるのだよ。」
「アイドルさんが急におばあちゃんにみたいなこと言ってる。」
「実は私はおばあちゃんだったりして〜」
「えっ…!」
あまりにもその言葉がショックだったのかマリアはまるで凍ったように固まってしまった。
私が「お〜い」と目の前で手を振っても身体を揺らしてもなんも反応しない、ピクリもしない。
人間こんなに固まるのかとむしろ関心してしまうな。
いやいや…!!そういうことじゃなくて!!
「マリアちゃんしっかりして〜!!!」





